頬こけ、たるみ…… アラサー歯列矯正の注意点

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 子供がするイメージの歯列矯正ですが、最近では、大人になってから始める人も少なくありません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、歯列矯正をしたところ、「頬がこけてしまった」「ほうれい線が目立ちはじめた」など大人からの悩みが寄せられています。歯並びを治して美しくなりたかったのに、なぜ、そんなことが起きてしまうのでしょうか。歯列矯正をする上での注意点などを、専門家に聞きました。

後悔と不安で毎日がつらい

 アラサーになって、お金と時間に余裕ができたこともあって、気になっていた歯並びをよくしたい、と歯列矯正をする人は少なくありません。
 トピ主の「ケイ」さんは、20代後半から、出っ歯とすきっ歯を矯正するため、上下2本ずつ、計4本の抜歯をしました。矯正を始めて4年。「出っ歯は治り、口呼吸をしなくて済むようになったなどのメリットはあるものの、奥歯の噛み合わせが合わず、1年半ほど調整し続けている状態です。頬がこけてほうれい線ができ、口元がさみしくなりました。後悔と不安で毎日がつらいです」と「発言小町」に投稿しました。

骸骨のような顔に

 こうした相談はほかにも寄せられています。30代前半の「なまず」さんも、前歯がやや斜めだったので、歯を2本抜いて「念願の矯正」を始めましたが、急激にほおがたるみ、鼻下とほおの分かれ目がわかるように変化、「こんな顔になってもうやめたい」とコメントしていました。「矯正2年」さんも、「矯正を始めてからほおがこけ始め、1年たちますが、骸骨のような顔が戻らない」と悩みを打ち明けていました。

一時的にかむ力が落ちる

 矯正歯科専門の開業医で作る団体「日本臨床矯正歯科医会」で会長を務める稲毛滋自さん(「いなげ矯正歯科医院」=横浜市青葉区)にこうした悩みについて聞きました。

「日本臨床矯正歯科医会」で会長を務める稲毛滋自さん

 稲毛さんは「実際に診察をしたわけではないのであくまで一般論ですが」と前置きした上で、「矯正歯科治療をすると、食べづらく、口の中が痛みます。装置も壊れやすいので『そっとかんでください』と指導を受ける。そのため、食欲も落ちるし、硬いものも食べられなくなるので、必然的に食べる量が減り、かむ筋肉も衰えていきます。そのため、ほおがこけたように見えてしまうことがあります。でも、これは一時的なものと考えてよいと思います」と話します。

 気になるほうれい線ですが、「矯正歯科治療には数年かかります。年齢的にも気になる年頃の方が多いので、よりほうれい線が気になってしまうのではないでしょうか」と稲毛さん。また、前歯を下げすぎてしまい、口元がさみしく感じることもあるそうです。「最終的にどんな形にしたいのか、かかりつけの矯正歯科医と具体的に相談しながらすすめてください」と強調します。

あごが小さく歯が大きい現代人 「抜歯」が必要な場合も

 抜歯をしたために頬がこけたり、ほうれい線が目立ってしまったりしたと思われがちですが、そうとは限らないそうです。「抜歯は治療の手段の一つです。歯の大きさと歯が並ぶ入れ物である歯槽骨の大きさのアンバランスが、歯並びが悪い大きな原因の一つになっているので、歯並びを根本から治すには、抜歯が必要な場合もあります」と稲毛さん。

 特に、「現代人は昔の人に比べあごの幅が狭くなっている上、富栄養によって歯が大きくなっている」(「日本人の歯とそのルーツ」金澤英作・著)という研究結果もあるそうです。

 抜かない矯正歯科治療をすすめる歯科医師もいますが、「抜歯をせずに矯正歯科治療を続け、歯の髄(いわゆる歯の神経)が死滅してしまったり、歯根が露出してしまったりと、ひどくなるケースもあります。きちんと検査をして、矯正歯科医と相談しながら抜歯するのかしないのか、どのように治療をしていくのか決めることが大切です」と稲毛さんは話します。

矯正歯科を選ぶポイント

 さまざまなトラブルを防ぐためには、最初の矯正歯科医選びが大切です。稲毛さんは、

・精密検査による分析と診断をしていること
・治療計画や費用の事前説明がきちんとしていること
・常勤の矯正歯科医がいること
・専門知識のある歯科衛生士やスタッフがいること

 などを、矯正歯科クリニックを選ぶ際の基準にしてほしいといいます。

 歯科医師の場合、その専門分野の教育や研修の経歴、治療経験の有無に関係なく、歯科、小児歯科、口腔こうくう外科、矯正歯科の看板を掲げることができるため、見極めが大切です。

 矯正歯科治療は終了まで何年もかかります。稲毛さんが会長を務める日本臨床矯正歯科医会では、全国約400人の会員全員が矯正歯科専門の開業医をしており、患者が引っ越しなどをしても、会員同士で治療を引き継ぐなどの体制を整えています。

 稲毛さんは、「大人の場合、審美的な問題から矯正歯科治療を希望する人が多くいますが、歯並びと咬み合わせを改善して歯の健康を保つことが第一。結果として、美しい歯並びや口元につながります」と話します。

 誰もが憧れるキレイな歯並び。せっかくお金と時間をかけて矯正歯科治療するのですから、トラブルなく終えたいものです。

(読売新聞メディア局編集部・山口千尋)

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