妊活を始めようと思った時、何から始めますか? 基礎体温を測り、排卵日を調べ、評判の良いレディースクリニックを探して……と、まず女性からアクションを起こすのが一般的で、男性の行動は後回しになっているケースが多いのではないでしょうか。都内で先日、妊活に関するセミナーが開かれ、産婦人科医の宋美玄さんが、最初からカップルで妊活に取り組むことの重要性を訴えました。
生殖年齢には限りがある
セミナーは、精子のセルフチェックサービス「Seem」を運営するリクルートライフスタイルの主催。宋さんは、女性の就業率が上昇し、平均初婚年齢が上がっていることに触れ、「キャリアを積んだり、お金に余裕がなかったりする時期と、生殖に適した時期が重なるのが、現代の妊活世代が抱える問題。社会構造は変わっても、生殖年齢には限りがあるのは変わらない」と指摘。
その上で、「女性の年齢が上がると、卵子の数が減り、質も低下することは知られているが、男性も加齢とともに、精子の量が減って運動率も下がる」と話しました。

50歳以上の男性は、30代と比べると、精液量が3~22%低下し、精子の運動率も3~37%悪くなるといい、宋さんは「男性は何歳になっても妊娠させることができると思っている人を見かけるが、加齢で精子の状態は悪くなる。男女ともにタイムリミットがある」と説明しました。
妊活の初めは女性から?
また、精子の問題だけが原因ではありませんが、不妊の原因の約半分は男性にもあると言われています。
ところが、排卵日予測検査薬で排卵をチェックしたり、婦人科に行って検査を受けたりと、妊活の初めは女性側のアクションによるものがほとんど。排卵予測日に性行為を持つ「タイミング法」などを経ても授からず、次のステップである「人工授精」へと進んだ時に、初めて精子の状態が良くないことがわかるというケースもあるそうです。
時間も短縮、妊娠の確率も上がる
女性の加齢とともに妊娠の成功率が下がるため、「妊活の最初の段階から男性が精子の状態をセルフチェックしたり、泌尿器科で検査したりすることで、時間も短縮され、妊娠の確率も上がる」と宋さん。
「妊活はいいことばかりじゃない。生理がきてがっかりする妻の姿をプレッシャーに感じるかもしれませんが、2人で取り組むことで乗り越えられる。それに、めでたく子供を授かったら、その後の育児は2人でするもの。片側に当事者意識が薄れていたら、ハッピーな育児につながりにくい。そういうことも見据えた上で、二人で一緒に妊活に取り組んでもらえたら」と話していました。
福利厚生で精子チェック

セミナーでは、会計ソフト会社「freee」が、福利厚生の一環として、専用の顕微鏡レンズとスマートフォンのアプリを使って、自分で精子の濃度や運動量をチェックできるキット「Seem」を割引購入できるようにした事例が紹介されました。
同社が妊活についての勉強会を開いたところ、社員から「妊活でいかに男性の知識が必要であるかがわかった」「精子の状態が生活習慣でかなり変わることは発見だった」などと、妊活に好意的な意見が寄せられたそうです。
「ふたりの妊活」機運高まる

「テレビで妊活が取り上げられたり、芸能人が妊活休暇を取得したりと、妊活への関心は年々高まっています」と言うのは、リクルートライフスタイルで「Seem」を新規事業として始めた入澤諒さん。2016年に始まったSeem事業による売り上げも、18年には9倍に伸びました。
「妊活関連商品は女性向けのものがメーンでしたが、熱に弱い精子を守る『陰のう冷却シート』など男性向け商品も増えており、『ふたりの妊活』の機運が高まっています」と話していました。
(メディア局編集部・山口千尋)