PTA役員、押し付け合い…「仕事」「介護」理由でも拒否できず

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 新年度が始まって1か月がたちました。学校では、PTAの本部役員や各委員会のメンバーが決まる時期。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、PTAの役員選出にまつわるさまざまなエピソードが寄せられています。働く女性らにとっては、PTA活動は大きな負担となり、役員や委員の押し付け合いとなるケースも珍しくありません。改善策はないのでしょうか。

バリキャリママはどうする?

 発言小町で「悩みのタネは、子供達のPTA役員」と打ち明けたのは、3児の母親の「yuri」さん。大企業で月に残業40時間をこなしながら、キャリアを積んでいますが、PTA役員が回ってきそうだと心配しています。

 「過去に子供会役員を強制的にやらされたことがあり、その頃も(仕事が)激務で、役員を満足にこなす時間が取れず、他の役員(パートや専業主婦の方)から罵声を浴びせられるなど散々な目にあいました」と振り返ります。そして、「バリキャリ以外の立場の主婦の方と分かりあえるとはとても思えない」として、「バリキャリママはPTA役員をどのようにこなされているのでしょうか?」とアドバイスを求めました。

 

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  これに対し、子供を持つ働く女性から多くのアドバイスが寄せられました。同じく大企業で働いているという「梅太郎」さんは「役員の仕事に関しては、深夜まで家で作業するなど楽ではありませんでしたが、その年は避けて通れないお務めをしていると割りきれば、自然と仕事もPTAもできるだけ効率よく……と考えます。いかに逃げるか考えたり、かたくなに固辞して冷ややかな目で見られたりするよりは、慣れない仕事にじたばたしながらも義務を果たした方が気分的にもましだと思います」と助言します。

 「にゃんこ」さんは、「本来のPTAは任意の団体なので会員になるか否かは選べるはず」と指摘します。「私個人としてはPTAに賛同できず非加入を貫いています。ただ、学校からのお手伝いの依頼は、できる範囲でしています。ご自身の都合でPTAに参加が困難であれば、PTAに属さずともその学校への協力は出来るのです」と自身の対応を紹介しています。

任期の短縮を提案

 「PTA、役員の任期を短期にしてほしい」と訴えるトピを立てたのは「nukumori」さん。子供が通う学校のPTAは現在、「児童1人につき一役が義務」となっていますが、働く母親が多くなり、PTAの役員を1年間務めるのは大変なため、「任期を1年ではなく学期単位にしてはどうか」と考え、発言小町に意見を求めました。

 ところが、保護者の負担軽減が図れるはずのこのアイデアについては、否定的な意見が目立ちました。「学校関係は1年の流れがあるから難しい。それよりそれぞれの負担をすくなくするよう考えた方が現実的です」(「はる」さん)、「気持ちはわかりますが、学期ごとに役員が替わるなんて事になったら、あっという間に『児童1人につき1役』のノルマを全員がこなしてしまい、逆に何度もやる事になるのではないでしょうか?」(「テーブル」さん)。

役員選びに一苦労

 中学校のPTAで副会長をしている「バロン」さんは、次の役員選びに頭を抱えています。「様々な方にお願いしていますが、なかなか引き受けてくれる方がいません。結構、切実で、悩んでいます。いままでは、前任の副会長が次の人を探して、直接もしくは電話でお願いしていました。今回も同様にお願いしているのですが、皆様にお断りされています」。くじ引きで決めようとも考えましたが、PTA担当の教師が認めなかったそうです。そのため、発言小町で「皆様の学校での本部役員の選出方法はどうされていますか。もしくは、こうしたらどうだろうかというお知恵を拝借したいです」とアドバイスを求めました。

 PTA会員全員にアンケートを配布している例を紹介したのは、「にじのはは」さん。記名式のアンケートには「来年度役員を引き受けてもよい(立候補)」「推薦があれば引き受けてもよい」「役員経験済み」「理由があって引き受けられない」という四つの選択肢があり、どれかを選んで、その理由を明記することになっています。また、役員に推薦したい人の名前を記入する欄もあり、このアンケートの結果を参考に、役員を決めているそうです。

「役員選考委員会」という組織も

 「特命子」さんの子どもが通う小・中学校は、一般のPTA会員から選ばれた10人程度の保護者と教頭で作る「PTA役員選考委員会」という組織があり、次のような手順で役員を決めるそうです。

<1>会員全員に、来年度のPTA役員の自薦・他薦を出してもらう

<2>本年度に役員をした人に、来年度もお願いできないか確認をする

<3>来年度に空席になりそうなPTA役員について、推薦で名前が上がっていた人に連絡をしてお願いする

<4>それでも決まらない場合は、来年度の入学生の保護者で、過去にPTA活動などの経験がある人にお願いする

 多くの学校がPTA役員選びに苦慮している現状に、「みみこ先生」は「次の役員を誰かに押し付けるというのがそもそもおかしな話だと思いますが。そりゃ誰もが断りますよ、やりたい人以外は。断り切れない気の弱い人や専業主婦がターゲットにされたりね。だからクジ引きなどで決める地域が多いと思います」とした上で、「誰も引き受けない、クジ引きもしない、だったら今年はナシになりました、でいいと思います」ときっぱり。

役員抽選「拒否権はありません」

 

PTAについて説明する加藤教授(文化学園大で)

 PTAの本部役員、各委員会のメンバーを決めるに当たって、保護者同士でいさかいが生じたり、禍根が残ったりするケースもあるようです。PTAの問題に詳しい文化学園大学現代文化学部の加藤薫教授に聞きました。

 加藤教授は「PTAは任意団体なので、加入・非加入の自由がある」と強調します。ただ、子どもを学校に通わせているために、保護者がPTAに協力することを当然のように求められたり、周囲との同調圧力を受けたりする傾向が見られると指摘します。

   そして、「働く女性が増えている現実を踏まえれば、PTA活動に参加したくても難しいという母親も珍しくありません。くじ引きや輪番制などで役員や委員を選ぶケースもありますが、活動を強制されること自体に違和感があります」と言います。

   最近でも、福岡市の中学校で、PTA会長名と学校長名で保護者に配られた「クラス委員の選出について」という通知が話題になったそうです。そこにはこんな文言がありました。

 「当日欠席の場合で委員未経験の方も抽選の対象となります」

 「委員ができない事情のある方は出席して事情をご説明ください」(働いている、小さなお子さんがいる、介護等は認められない場合があります)

 「くじ引きになった場合、当選者に拒否権はありません」

“免除裁判”は人権侵害

 

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   加藤教授は「一部の学校では、役員や委員を免れるために、みんなの前で家庭の事情や自身の病気を打ち明けなければならない“免除裁判”が行われています。がんで通院治療をしていることを理由に免除を求めた人が認められなかったケースもありました。これはもう、人権侵害に近いひどい状況です」と指摘します。

 解決策として加藤教授は、本部役員の3~5人以外の委員会の廃止を提案します。委員会は、学校によって「広報」「環境美化」「学習」など五つ程度あり、それぞれの委員会に各学級から2~3人が配置され、合計で十数人の委員が選ばれます。加藤教授によると、それほど必要性がなくても存続している委員会も多いとのことです。

 1年間の常設委員会ではなく、運動会、文化祭、卒業式などの行事やイベントごとに、必要に応じてボランティアで募るほうが、「短期なら手伝える」「文化祭を盛り上げたい」といった父親の参加も見込め、PTA活動の活性化にもつながるといいます。

 PTA活動に男性が加わることの意義は大きく、メンバーに同調を強いる傾向がある女性たちよりも、「こんな無駄なことをなぜやるの?」「無理強いされてまでやる必要がある?」「もっと効率よくできるのでは」といったような疑問を抱いて、組織改革に着手する例が各地で見られるそうです。

 加藤教授は、こうした改革について、「外から文句や愚痴をこぼしている人よりは、実際にやってみて、改善が必要という声をあげたほうが説得力があります。女性活躍や働き方改革が求められている現実を考えれば、PTAだけが現状のまま続けるなんて無理なんだと思います」と話します。

 加藤教授自身、娘を持つ父親で、娘の中学でPTA役員を経験しました。反抗期の難しい時期だったそうですが、ある日、PTA業務で学校を訪ねたとき、学校の玄関を掃除する娘と目が合うと、うれしそうな笑顔を見せてくれたとのこと。家でむっつりとしていた娘の意外な一面を見られたことはPTA活動の収穫だったといいます。

 子供のため、学校のため、地域のため……。PTA活動が本来の目的に合ったものとなり、保護者が参加したいと思う組織になるよう見直す必要がありそうです。

(読売新聞メディア局編集部・鈴木幸大)

【紹介したトピ】
バリキャリのPTA役員ってどうしてるの?

PTA,役員の任期を短期にしてほしい

PTAの本部役員選出方法について教えてください