女性の「お稽古事」はニッポン特有? 海外では

サンドラがみる女の生き方

 日本とヨーロッパの女性のライフスタイルを比較してみると、仕事や恋愛、余暇の過ごし方などに様々な違いがあります。日本では女性誌で「お稽古事」の特集が組まれているように、自由時間に習い事をする女性が多く見られます。では、海外ではどうなのでしょうか。

「女性のお稽古事」が市民権を得ているニッポン

 伝統ある茶道、着付け、生け花といったものから、現代風のアロマセラピーやアイシングクッキー作りまで、多岐にわたるニッポンのお稽古事。面白いのは、「女性」と関連付けられているものが多いことです。実際に、女性の口から「お稽古事」という言葉を聞くことはありますが、男性の口から「僕は今晩、お稽古事があるんです」とは聞いたことがありません。

 これはライフスタイルと関係しているとも言えるでしょう。先日、ある食事会で20代の女性が「毎日、お稽古事をするような生活に憧れています」と話していました。働いている女性なのですが、将来は専業主婦をしながら、いろんな習い事をするような生活がしたいとのことでした。

 確かに仕事をしていなくても、習い事に本気で取り組めば、1週間のスケジュールなどあっという間に埋まってしまいそうです。とはいっても、筆者はこういった生活をしたことがないので、あくまでも想像ですが。

 何はともあれ、日本では「毎日お稽古事ができるような生活」は、経済的なゆとりとも結び付けて考えられているためか、ある種の憧れの対象だったりします。最近はリーズナブルなお稽古事も増えてきてはいるものの、お月謝が決して安くないところもありますし、習い事の内容によっては自分で用意するものも数多くあるので、何かと物入りなのは確かです。

写真はイメージです

 繰り返しになりますが、「お稽古事そのもの」に加えて、「それを可能にする生活」というものに対して憧れを抱く女性がいるのは日本特有かもしれません。ただ、これも人それぞれで「趣味程度に気分転換ができればよい」というようなスタンスの人もいれば、「いつかはプロとなり、自分のサロン(教室)を開きたい」という夢を持つ人もいます。実際に、趣味が高じて「習う立場」から「教える立場」になり、サロンを開く人もいます。

ドイツに「サロネーゼ」はいない!?

 ドイツではワーク・ライフ・バランスが重視されており、余暇は十分にあるので、お稽古事をしている人が多いと思いきや、それがそうでもないのです。

 夢がないようですが、これはドイツ社会では、男女を問わず自力で食べていく収入があることが重視されていることと無関係ではありません。自宅でお菓子作りやフラワーアレンジメントなどのサロンを開いている「サロネーゼ」は、一部の成功者を除き、赤字経営になってしまうことも少なくないため、前提として、夫が一家の大黒柱である必要があります。筆者は以前、日本のあるサロンに顔を出したことがありますが、参加者の皆さんは、和やかで楽しそうでした。このように日本では「楽しみながら働くスタイル」が世間からも受け入れられていますが、ドイツの社会は、自分の生活費の全てを自分でカバーできない人に対して厳しいので、気軽に「将来はサロンを開きたい」と言えるような雰囲気ではありません。

 ちなみに、ドイツで男女を問わず人気のある「習い事」といえば柔道やテコンドーなどです。女性に関しては、いざという時に身を守りたいという気持ちから習っていたり、親が子供を心配して習わせたりすることもあります。ただ格闘技だと、いわゆる「サロン」を開くのは確かに難しいですね(笑)。

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 そんな事情もあり、ドイツではあまり見かけない「サロネーゼ」ですが、実はそもそも、ドイツには「お稽古事」という概念そのものがありません。先日、念のために日独オンライン辞書に「お稽古事」と日本語で打ち込んでみたら、ドイツ語で「Unterricht」と出ました。これは「授業」という意味ですので、日本でいうお稽古事とは微妙にニュアンスが違うのですね。

 そのようにドイツの人はいわゆる「お稽古事」とは無縁である一方で、「趣味」という言葉は会話の中によく登場します。自己紹介の場で自分の趣味を挙げる人が多いですし、「仕事以外の場で完全にリラックスできる場」というと、「家庭」や「趣味」だというのが共通認識です。

 趣味とは、具体的にはランニングだったり、ヨガだったり、料理だったりしますが、日本人が「お稽古事」に打ち込むときのような真剣さは見られません。あくまでも筆者の印象ですが。

 まあ、お稽古事が趣味だとも言えるわけですし、そこまで厳密に分けて考える必要もないのかもしれませんが、なんとなく真剣度において「お稽古事」と「趣味」は違う気がするのですが、どうでしょう。

「お稽古事」事情から見えてくるニッポンの社会

 一概には言えないものの、ヨーロッパと比べてみると、日本の人のほうが、必ずしも収入に直結しないタイプの習い事であっても「学ぶこと」に貪欲で、純粋な気持ちで取り組んでいる人が多い印象です。日本では大人だけではなく、子供も多くの習い事をしていたりします。

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 筆者は、子供時代にドイツ人と日本人の友達がいましたが、後者は複数の習い事をしており、その中には、小学生なのに社長並みに忙しい子もいました。毎日のように、ピアノ、書道、バレエなどのお稽古事がビッシリ入っているのです。ただ、これは冒頭の話ともつながるのですが、多くの習い事をしていたのは主に「女の子」でした。「男の子」は受験のためにとにかく「勉強一筋」の様子でした。

 筆者が子供時代を過ごしたのは昭和の時代ですが、考えてみれば、今の日本にも「男性はとにかく働いて一家の大黒柱にならなければいけない」という価値観は確かに残っているのでした。同時に「女性は、家庭やお稽古事など仕事以外の分野でも活動の場があるのだから、仕事で出世する必要はない」というような考え方も残っているのではないでしょうか。そう考えると、「お稽古事」というものを通して、社会における男性と女性の「立ち位置」のようなものも見えてくる気がします。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/