蜷川実花さんが福島で写真展「桜を撮るのは修業のようなもの」

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 写真家・映画監督の蜷川実花さんの写真展「蜷川実花展―虚構と現実の間に-」が、いわき市立美術館(福島県いわき市)で開かれています。瑞々みずみずしく色彩豊かな花々、独創的な著名人のポートレートなど、蜷川さんの世界に浸れます。蜷川さんに、展示の見所や最近の仕事などについて聞きました。

透明感のある桜の部屋

――巡回展なので会場ごとに展示方法が少しずつ異なるそうですが、いわきの会場の特徴は、どんなところですか。 

  入ってすぐの部屋は「桜」がテーマなのですが、いわきの会場だけ、透過光で鑑賞するようになっていて、透明感があってすごくキレイ。いい部屋になりました。

 この桜の写真は、2011年、東日本大震災のあった春に撮影したものです。あのときは誰しも、桜を見るような気分じゃなかった。誰も見なかった桜を収めよう、その年の桜を記録しておこうとして撮ったものです。それが、この地で、桜が満開のこの時期に、こうして展示できたことは、意味があることだと思い、感慨深いです。

――桜の名所として知られる東京・目黒川の写真も展示されています。よく行かれるのですか。

 目黒川の桜は毎年、撮っています。桜を撮るのが好きすぎて、桜の時期は忙しいですね(笑)。何千枚もとって、その中で残るのは3~4枚。毎年なので、その時々の自分の体調や状態がわかります。

――会場は、「永遠の花」「Portraits of the Time」と続き、廊下の窓にも大きな写真が貼られています。その先に、病床にあった父、蜷川幸雄さんとの時間を記録した写真が展示されています。日常の何げない景色が、静かに心に迫ります。

 前室と区切られた構成になっているので、生と死が浮き彫りになりました。父にまつわる写真、テーマが心に入りやすく、特別な会場になった気がします。

写真は感情と直結

――作品を撮るうえで大切にしていることは何ですか。

 いい作品を撮ろうとは思わないことです。感情と直結している方がいい。見る人のことを考えたりせず、シンプルにシャッターを押すだけ。それが一番面白いものが撮れる。仕事では新しいものを撮らなくちゃ、となるけれど、そういう気持ちを排除できているか。そういう意味で、桜はリトマス試験紙ですね。修業みたいです。

――ネットフリックスで2020年に放送予定のドラマの監督を務め、現在撮影中だそうですが、映像と写真で、仕事の仕方は違いますか。

 写真は個人戦ですが、映像は違います。自分の考えを固めて、言葉にしてチームに伝えなくてはいけません。それと、今回のドラマ撮影では、約3か月も物語の中にいるので、感情のもっていき方が難しいです。ずっと物語の中にいたいけれど、そうもいきませんし。

――仕事がハードで、子育てとの両立は大変そうですね。

 子供は、3歳と11歳です。映画やドラマの撮影中は一緒に過ごす時間をとるのが難しいですが、それでも、子供が朝5時半に起きて、ご飯を食べて出かけるまでは、毎朝必ず一緒に過ごすようにしています。下の子は、アンパンマンのキャラクターの中でもバイキンマンの仲間たちが大好きで、子供って本当に面白いですよね。

子供たちの記憶に残る大会に

――東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事を務めています。大会に向けては、どんな役割を果たしたいですか。

 子供たちの記憶に残る大会にしたいです。「怒られないように」と考えがちですが、そうではなくて、誰かの記憶に残るものにしたいですね。

――最後に、写真展についてメッセージをお願いします。

 写真集を見るのと見え方が違いますから、ぜひ会場に足を運んでみてください。この写真展によって、「美術館に行くのは楽しい」と思ってもらえたらうれしいです。

(聞き手・読売新聞メディア局 小坂佳子)

 蜷川 実花(にながわ・みか)

  写真家・映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007年)、『ヘルタースケルター』(12年)、『Diner ダイナー』(19 年7月5日公開)、『人間失格』(19年9月13日公開)監督。映像作品も多く手がける。08 年、「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回。10 年、Rizzoli N.Y. から写真集を出版、世界各国で話題に。16 年、台北の現代美術館(MOCA Taipei)にて大規模な個展を開催し、同館の動員記録を大きく更新。17 ~18年、上海で個展「蜷川実花展」を開催し、好評を博した。2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事就任。

【「蜷川実花展―虚構と現実の間に-」開催概要】
■会期:5月26日(日)まで
※休館日:4月22日、5月7日、13日、20日
■場所:いわき市立美術館(福島県いわき市平字堂根町4-4)
■開館時間:午前9時30分~午後5時(入場は閉館30分前まで)
■観覧料金:一般1,100円、高校・高専・大学生500円、小・中学生300円、未就学児無料
■主催:いわき市立美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会、福島民友新聞社、福島中央テレビ
■協賛:株式会社日本HP、ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜
■協力:富士フイルムイメージングシステムズ、東京リスマチック、フレームマン、東京スタデオ 
■企画協力:ラッキースター、小山登美夫ギャラリー
■企画プロデュース:後藤繁雄+G/P gallery