欧米で大人気「こんまり」の片づけ術のどこがウケたか

サンドラがみる女の生き方

ロイター

 アメリカで大人気の片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵さん。ドイツを含むヨーロッパでも、こんまりさんの本はもちろん、動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」の番組「Tidying Up with Marie Kondo(人生がときめく片付けの魔法)」を通じて、彼女の名前は広く知られています。今回は、なぜ「こんまりメソッド」が欧米で人気が出たのかについて考えたいと思います。

こんまりメソッドは一種の「哲学」!?

 筆者の母国ドイツでは「家事」というと、昔から「料理」よりも「掃除」「整理整頓」の優先順位が高いこともあって、その手のことには厳しい人が多く、家の中をスッキリときれいにしている人がたくさんいます。もちろん、中には片付けが苦手な人もおり、散らかった家を「掃除のプロ」として知られるスーパー主婦のイヴォンヌ・ヴィリックス(Yvonne Willicks)さんが片づける、なんていうテレビ番組もあったりします。

 しかし、そうは言っても、大半のドイツ人はスッキリ片付いた家に住んでいます。そう考えると、なんだかこんまりさんの需要などなさそうですが、彼女が出演する番組にハマっているというドイツ人女性にその理由を聞いたところ、「違う視点からの片づけが面白い」とのことでした。

 ドイツを含むヨーロッパ型の片づけ術は、今までどこか妙に現実的というか、合理性を重視した実用的なものにしかスポットが当たっていませんでした。「部屋や空間をどのように効率よくスッキリさせるか」という、あくまでも「技術」や「方法」にスポットを当てたものが多かったのです。

 それに対し、こんまりさんが革新的なのは、そこにある種の「哲学」が入っていることではないでしょうか。つまりは「部屋の空間」だけではなく「自分の内面」と向き合う、ということが加わったのです。

「自分の内面と向き合う」発想が新鮮

 部屋をスッキリさせることが最終目標ではありながらも、こんまりさんは、その「過程」を大事にしていて、そこではまさに「自分の価値観」や「ライフスタイル」が問われています。部屋の一か所にモノを集め、その一個一個を手に取って「ときめくか、ときめかないか」を基準に「捨てるか、捨てないか」を決めるのです。それは、モノと向き合っているようで「自分自身」とも向き合っているわけなので、欧米人にとっては新鮮でした。

 そして、日本語の「ときめくか?」がそのまま「Does it spark joy?」と訳され、それがこんまりさんのキャッチフレーズになっているのも面白いです。自分のハートがその都度「ときめくか、ときめかないか」にスポットを当てながら、片づけていくというのは楽しいですし、このやり方は、アメリカはもちろん、ヨーロッパにも今までなかった発想でした。

写真はイメージです

 現在、世界の先進国はどこもモノであふれ返っています。ドイツでも「モノを持たないミニマリスト的な生き方」にスポットが当たっており、こんまりさんの「KonMari Method」はそういった生き方を志向する人々の共感を呼んでいるようです。

「本は処分してはいけない」感覚の欧米人。日本人は……?

 ところで、欧米のアカデミックな人々は、書斎はもちろん、リビングにも本棚を置くなどして、多くの本を家に所蔵している人が少なくありません。こんまりさんが、本も彼女のメソッドで片づけようとしたときに、一部では「心の財産である本まで片づけるのはいかがなものか」という論争に発展しました。

 カナダ人作家が投げかけた疑問でしたが、これも言ってみれば、こんまりさんがいかに注目されているかということですし、なかなか有意義な議論でもあると思います。

 日本人も「本好き」ではあるのですが、何せ欧米と比べると、日本の住宅のスペースは何百冊もの本を置くのが難しかったりもします。「本を捨てて良いかどうか」という感覚に関しては、筆者は「住宅環境」も大きく関係しているのではないか、なんて思いました。物書きとしては、本は捨ててほしくはないけれど、多くの日本人の住宅環境だと、そうも言っていられない――そういったところでしょうか。

日本語で堂々としたスタイル

 ところで筆者は、「片づけ術」と全く別の点でもこんまりさんに注目していました。それは「言葉」です。

米アカデミー賞の授賞式でレッドカーペットを歩くこんまりさん(ロイター)

 多くの日本人が「英語圏で公の場に出るからには、英語で話さなきゃ」と焦る中で、こんまりさんは通訳を付けて、あくまでも日本語で自然体に話を進めているのです。自分の国の言葉で話すことで「ブレない」という強みがありますし、なんといっても一番のメリットは「堂々とした立ち振る舞いでいられること」だと思います。

 なぜ筆者がそんなところに目がいくのかというと、筆者は英語圏出身の人と英語で話すと、考え過ぎだと笑われるかもしれませんが、なんだか生きた心地がしないのです。当然、英語圏の人よりも、こちらの英語はヘタなわけですから、「なんだか相手に評価されているようで嫌だな」などと考えてしまい……やはり自意識過剰なのでしょうか。なにはともあれ、こんまりさんは、そんな小心者の筆者を「片付け」以外の部分でもスッキリさせてくれました(笑)。

 最後に話を戻すと、ドイツ語に「Frühjahrsputz(春の掃除)」という言葉があるように、ドイツでは「掃除の季節」といえば、年末ではなく春なのです。というわけで……春ですし、いろいろ片づけることとします。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/