どこの家にもあった? フランス人形の謎

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 白い肌にくりっとした大きな目、ピンク色のドレスを着たかわいらしいフランス人形。子供の頃、自宅や友達の家でガラスケースに入ったフランス人形を見かけませんでしたか? 読売新聞の掲示板サイト「発言小町」に、子供の頃、自宅や友達の家にガラスケースに入ったフランス人形が置いてあったと、昔を懐かしむ投稿が寄せられました。なぜ、日本の一般家庭にフランス人形が飾られていたのでしょうか。

 トピ主の「ボンジュール」さんは、昭和46年生まれ。千葉県にある団地に住んでいたそう。自宅の茶の間のサイドボードに、ガラスケースに入ったフランス人形が置かれていました。自分が母親になってからは見かけなくなり、「あの時代に流行はやったのでしょうか?うちにもあったと覚えている人はいませんか?」と呼びかけました。

この投稿に、多くの人から「うちにもありました」というレスが寄せられました。

タンスの上に

 昭和61年生まれの「ぽい」さんの自宅には、姉と自分が生まれた時にお祝いとして頂いた日本人形とフランス人形がありました。「投稿を見て、人形が家にあった頃を思い出して懐かしい気持ちになりました」とコメントしていました。「ありました」という報告は、トピ主さんと同じ昭和40年代生まれの人からのものが多く見られました。フランス人形はガラスケースに入っていて、タンスやサイドボード、ピアノの上に飾られ、隣には木彫りの熊、こけし、博多人形が飾られるケースが多かったそうです。

 「人それぞれ」さんは、「コケティッシュな笑み、裾を引いたロングドレス、パールの付いたパーティーバッグ、羽根飾りの付いた帽子、イヤリング、長手袋…と夜会に出かける貴婦人のような装いの人形がガラスケースに入っていました」といいます。「ちくわ」さんは、「人形のケースの中に乾燥を防ぐための水が入っていて、時々交換するのですが、水が減っているのを見ては人形が飲んだのではないかと怖くなっていた」と思い出をつづりました。

 なぜ、一般家庭にフランス人形が広まっていたのでしょうか。「麗しのポーズ人形」(河出書房新社)の著者でもある人形・マスコット作家の宇山あゆみさんに聞きました。

豊かな暮らしのシンボル

 大正時代から日本でもフランス人形が作られていましたが、数はまだ少ないものでした。1960年代になると、様相が一変します。国内で大量生産されるようになり、女の子が生まれたときの出産祝いや新築祝いの贈り物として購入する人が増えたそうです。

 あくまで子供が遊ぶおもちゃではなく、観賞用のインテリアとして、その人形が飾ってあると「お金持ちに見える」という“豊かな暮らし”のシンボルでした。多くは応接間のサイドボードやピアノの上、玄関や床の間に飾ってあることもありました。その時代には、インテリアや食器なども、貴族趣味的な白×金や花柄などが流行りました。
 ひな人形や五月人形を作っているメーカーからも発売され、房付きのガラスケースに入ったものもありました。

豪華な中にも親しみやすさ

 この時代のフランス人形の顔(マスク)は、厚手の不織布と薄いジョーゼット(薄い縮緬ちりめんの織物)を重ねて金型に入れ、熱でプレスすることで凹凸を出す、お面のような作りになっています。宇山さんが、本の執筆のために人形のマスクを作る製作所を訪れたときに、「全盛期には、月に3万個のマスクを出荷していた」と聞いたそうです。

 豪華な中にも親しみやすさを感じるのは、マスクの原型を作っていた人が、キューピー人形も手がけたことがあったからだそう。おでこが広く、ふっくらとした頬で童顔、大きな頭にボディーは小さく、すらりと長い足で、少女漫画の登場人物のようなフォルムをしています。

宇山さんのコレクションの一部(写真提供・宇山あゆみ)

“憧れ”が詰まっている

 宇山さんは、「おそらく作り手のほとんどがフランスに行ったことがなく、ベルサイユ宮殿などを思い浮かべながら作ったのではないでしょうか。あの時代にしか作れない“憧れ”が詰まっているところに魅力を感じます」といいます。

 「持っていた」のたくさんの報告に、「全国規模で流行っていたとは知らなかった。昭和あるあるですね」とトピ主さん。そう言われてみると、子供の頃、うちにもあったかも……という人もいるのではないでしょうか。優しくほほ笑んでいたフランス人形が“豊かさの象徴”だったなんて興味深いですよね。

(メディア局編集部・山口千尋)

【紹介したトピ】
 (駄)フランス人形、ありましたか?

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