生活雑貨店「無印良品」の世界旗艦店となる「無印良品 銀座」と、併設ホテル「MUJI HOTEL GINZA」が4日、東京・銀座にオープンします。オープンに先立って、ホテルに試泊する機会がありました。国内外の観光客、買い物客らでにぎわう銀座に誕生した新スポット。そこには、日常を楽しくする様々な工夫がありました。(読売新聞メディア局編集部・永原香代子)
室内備品のほとんどが「無印」の商品
「無印良品 銀座」と「MUJI HOTEL GINZA」は、東京メトロ銀座駅から徒歩3分の銀座3丁目の一角にあります。
ホテルの客室は、複合ビルの7階から10階まで計79室。この日は、9タイプある部屋のうち、8タイプを見せてもらいました。
「MUJI HOTEL GINZA」のコンセプトは、「アンチゴージャス、アンチチープ」。「MUJI HOTEL」のホームページにも「高額で過剰なサービスも、質を削りすぎた殺風景な客室もありません」という言葉があります。

部屋ナンバーが明るく光る廊下を通って、各部屋へ。どれにも共通しているのは、落ち着いた雰囲気を醸し出す壁の布クロスと、床の無垢のオーク材です。左官職人が手掛けた塗り壁も多く見かけました。

机、イスなどの調度品からスリッパやタオルまで、部屋にある備品のほとんどが、無印良品を展開する良品計画(本社・東京)が開発したグッズなのだそう。室内がスッキリ見えるように、カップや皿などがきっちり収まる特注家具が設置されています。

チェックインの際、フロントの女性から「ラベンダーの香りがお好きですか、それともグレープフルーツの香りがお好きですか」と聞かれました。迷わず「グレープフルーツ」と答えると、小さなアロマオイルの小瓶が渡されました。部屋に備え付けたアロマディフューザーを使って、香りを楽しむことができるのです。
同時に、「こちらは『お守り袋』です。警笛代わりになる笛と地図などが入っていますので、ぜひお持ち帰りください」と小さな袋を渡されました。部屋で袋を開けてみると、地図の裏には、英語と中国語、日本語で「体の調子が悪いです」「飲み物がほしいです」など、困ったときの表現がイラスト付きで掲載されていました。日本語のわからない外国人客でも、イラストを指させば、言いたいことが日本人に伝えられるというわけです。こうしたところにも、宿泊客が快適な旅をするための配慮が感じられます。

記者が泊まったのは、79部屋のうちで44部屋と最も多いCタイプの部屋。広さは25平方メートルで、間口は狭いものの、奥の窓際にダブルベッドが配置され、ソファー、テレビが整然と並んでいて、とても居心地が良い空間です。部屋に入ると、木の香りがしました。床材にはところどころフシがありますが、それも木の風合いだと思うと、あまり違和感はありません。家だったら裸足で歩き回っているのになあ、と思ったら、白いふかふかのスリッパが用意されていたので、早速、靴から履き替えてみました。
部屋の空調や照明の調節、遮光カーテンの開閉、フロントへの連絡や無料Wi-Fiの利用などはすべて、部屋のタブレット端末で操作できるようになっています。デスクの上には、コーヒーメーカーの使い方を書いたメモがありました。その通りに、コーヒーメーカーに水を入れて、コーヒーのドリップ部分に専用パックを入れて待つこと少々。苦みとうまみの入り混じった本格的なコーヒーを味わうことができました。

浴室は、バスタブのないシャワーブース。ガラス張りで、トイレから丸見えになるのがちょっと気になるし、毎日、湯船につかっているのに、ホテルのシャワーだけでは味気ないと思っていました。ところが、ここに備え付けてあるのは、天井に付けられたシャワーと、手元のシャワーを切り替えられるタイプで、天井のシャワーヘッドは直径20センチはある大型のもの。

いざ入ってみると、頭上から落ちてくる温かいシャワーの心地よさに、身も心もとろけるようでした。シャワーを浴び終わって、ふかふかのバスマットの上で、厚手のオーガニックコットンのタオルで全身を拭くと、スッキリした気分になりました。
一段高くなった無垢の床にあるベッドは、ちょうど良い硬さ。ベッドから少しはみ出しても、床までの段差がほとんどないので安心です。ふんわかした軽い掛け布団にくるまれて、気が付くとぐっすり眠りに落ちていました。
朝のビュッフェで和食を堪能
翌日、朝食はビュッフェ方式。6階フロント前のレストラン「WA」で、宿泊客を対象に1800円(税込み)で提供されます。釜で炊き上げた飛騨高山産のコシヒカリのご飯に、三元豚の角煮、鱧団子の煮物、山芋のしょうゆ漬けなどを取り分けて食べることができます。「豊かな日本の風土を、食を通してお楽しみいただければ」と料理長の太田健太郎さん。昼食や夕食で有料で提供されているお茶やコーヒー、ジュースも、朝のビュッフェで味わうことができるので、お得かもしれません。
朝食を除いた合計料金は、2万9900円(サービス料・消費税込み)。この部屋の場合は、1人で泊まっても2人で泊まっても同じ料金です。
他のタイプの部屋の場合は、追加料金で一人5000円ずつ加算していく仕組みです。一番値段の高い部屋は、5万5900円(同)。この部屋に大人3人が泊まる場合は、プラス5000円の6万900円、4人の場合は、6万5900円になります。このタイプの部屋が1部屋しかないこともあって、9月末まで予約でいっぱいだそうです。
空き室状況や料金はホテルのホームページで公開し、予約を受け付けています。宿泊する曜日やハイシーズンか否かによって料金が変動するホテルが多い中で、各部屋の料金は、年中均一です。

ホテルを運営しているUDS経営企画部コミュニケーション・デザインチームのゼネラルマネージャー、八反雅代さんは「北京にある『MUJI HOTEL BEIJING』でも、お泊まりになった方が『ベッドマットが気に入った』と言って、その日のうちに無印良品で購入して帰られることもあります。無印良品を楽しんでいただけるきっかけになれば」と話していました。
多くの人にとってホテルは「非日常」の体験のはずなのに、「MUJI HOTEL GINZA」では、「ふかふかのタオルに替えてみようかな」「コーヒーやお茶のいれ方を工夫しようかな」といったように、日常生活のヒントをたくさんもらえた気がしました。
充実の食品フロア
マスコミ関係者向けに「無印良品 銀座」の内覧会も4月2日に行われました。「無印良品 銀座」では、1階から地上6階まで、すべてのフロアに無印良品の約7000品目のアイテムをそろえているそうです。
1階は食品フロア。焼きたてパンや弁当、新鮮野菜のコーナーなどがあります。「ブレンドティー工房」では試飲もできて、「甘夏緑茶はいかがですか」と声をかけられました。試飲してみると、有機緑茶にレモンピールなどを配合していて、すっきりした味わいでした。ここでは他にも、紅茶、ルイボスティーなど様々な種類を提供しています。

埼玉県産のイチゴ「あまりん」も試食しました。「イチゴの旬は4月です。甘酸っぱい春らしい本当の旬の味を召し上がってください」という手書きの看板が掲げられていました。ただ、商品を陳列しているだけではなく、新鮮な味を食卓に届けたいという心意気を感じます。ほかにも、糠床があったり、春野菜の「のらぼう菜(菜の花の一種)」があったり。季節に合わせて、食生活を豊かにするような提案が随所に見られました。

地下1階は、食堂「MUJI Diner」です。店先で魚たちが氷の上に置かれていて、とても目を引きます。神奈川県の小田原漁港から毎朝直送しているのだそう。焼き魚定食は、ご飯・味噌汁・漬物などとセットで850円(税込み)。ほかにも、客の目の前にある調理場で作る沖縄の「ゆし豆腐」など、珍しいメニューもあります。

2階は衣類、バッグ、靴売り場。3階は靴下、文房具、旅行用品売り場。4階はキッチン用品や子供服で、5階はベッドルームや照明、収納用品などを扱っています。6階には、ホテルフロントのほかに、ギャラリーやサロン空間である「ATELIER MUJI GINZA」があり、こけら落としとして、デザインに関する展覧会「栗の木プロジェクト」が7月まで開かれます。
