休日の寝だめはNG? スッキリ目覚める体内リズムに

News&Column

写真はイメージです

 平日にたまった疲れを解消しようと、休日に“寝だめ”することはありませんか。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも、そんな投稿がありました。同居人からは「いつも昼までダラダラ寝ていて、だらしがない」と言われているのだそう。最近は、休日の寝だめによって引き起こされる「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」という言葉もあります。専門家に問題点を聞いてみました。

 トピ主の「ゆう」さんは、小さいころから夜型で、朝が苦手。平日は何とか頑張って早起きし、職場に向かっているものの、休日には昼近くまで眠ってしまうそうです。「私は人より多くの睡眠時間を必要としているタイプ。いったい何が悪いのでしょうか」とつづっています。

休日の寝だめは肥満や生活習慣病につながる

 明治薬科大学リベラルアーツ准教授の駒田陽子さんに話を聞きました。駒田さんの専門分野は心理学。2018年8月に専門家が集まって始めた「目覚め方改革プロジェクト」のメンバーの一人として、睡眠科学に関する研究を一般向けにわかりやすく解説しています。

 「ゆう」さんについて、駒田さんは「疲れを何とか解消しようとする気持ちはわかりますが、休日の寝だめは肥満や生活習慣病につながるという研究もあります」と話します。

「体内時計を狂わせないことが大切です」と話す駒田さん(東京・清瀬の明治薬科大学の研究室で)

 休日と平日で就寝時間や起床時間に差がありすぎると、睡眠のリズムなどの体内リズムが崩れ、体に悪影響を与えると考えられているそうです。

 駒田さんによると、人間の体はおよそ1日24時間のリズムで変化しています。体温や血圧、尿、ホルモン分泌などの生理活動も約24時間の周期で変動しているのです。ストレスに立ち向かう「コルチゾール」というホルモンは早朝に分泌が増大し、眠りを促す「メラトニン」は夜になると分泌が始まります。

 こうした周期は、「体内リズム」「概日リズム(circadian rhythm、サーカディアンリズム)」「体内時計」と呼ばれています。平日と休日の就寝時間や起床時間の差が大きいほど、体内時計が乱れてしまうのだそうです。

体内時計の乱れを 自分でリセット

 「なぜ人間に体内時計があるのか? 24時間ぴったりの周期でないのか? はわかりません。でも、そのおかげで、私たちは夜の仕事などシフトワークに対応することもできますし、海外旅行で現地の時間に適応することもできます。人間は体内のリズムを調整する能力も併せ持っているということなんですね」と駒田さん。

 平日と休日の睡眠のタイミングのズレによって時差ボケのような症状が起きることを「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」といいます。平日と休日の就寝・起床の「時差」が体内時計を狂わせ、昼間の眠気と疲労の原因となるというものです。休日明けに眠気や疲労を感じやすいのも、こういう仕組みだそうです。

GWの10連休後も気をつけないと時差ボケ状態に

 「例えば、4月1日から働き始めた新社会人が、ゴールデンウィークの10連休で時差ボケ状態になってしまう可能性があります。『ソーシャル・ジェットラグ』については基本的な知識として知っておいてほしいですね」と駒田さんは話します。

 同プロジェクトのホームページでは、睡眠習慣を自分で把握するために「3DSS(3次元型睡眠尺度)チェックシート」を公開しています。15項目の簡単な質問に答えるだけで、自分の睡眠習慣の傾向を位相(リズム)、質、量の3要素から知ることができます。

 駒田さんは「年齢によっても、睡眠習慣は変化していきます。深夜に眠って朝遅く起きる夜型が多いのは20歳代前半。こういう人たちに、上司が朝型の生活の良さを説き、『新入社員なんだから早めに出社しなさい』と強要するのは意味がありません。質が悪いのか、量が足りないのか、リズムが乱れがちなのか、それぞれに自分で眠りの問題点を知れば、対処もしやすくなると思います」と話します。

睡眠不足は蓄積させず 2~3日で解消を

 ソーシャル・ジェットラグを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。

窓辺に立って、朝の光を浴びることで体内時計はリセットされます(写真はイメージ)

 駒田さんが挙げるのは、(1)休日も平日も起床時間を変えない(2)毎日6時間から8時間寝る。難しければ、3日単位で睡眠不足を補うように調整する――などです。「(日々の睡眠不足を借金に例えた)睡眠負債という言葉も出てきたぐらい、睡眠は心と体の健康にとって不可欠な要素。負債が増えて返済不能にならないよう、日々睡眠時間を確保するということが大切です」と強調します。

 具体的には、朝起きたらなるべく窓辺の自然光を浴びて、体内時計をリセットすること。バランスのよい食事を心がけ、朝食をきちんと食べること。そうすれば、自然に体内時計がリセットされ、夜、いつもの時間に眠くなるそうです。逆に、眠りに入る際には部屋を暗くして、パソコンやスマートフォンなどの光はつけないようにすることも必要だそうです。「光が私たちの交感神経を刺激して、興奮状態にします。光の作用について、知っておくことも大切です」と駒田さん。

スマートフォンなどの光は、夜はなるべく避けたほうがいいそうです(写真はイメージ)

 眠気が強いときには昼食後、10分から15分程度、目を閉じて何も情報を入れない時間を持つのも有効だそうです。

 「仕事のパフォーマンスを上げるためにも、睡眠について正しい知識をもつことがますます重要になります。ほとんどの国では、女性のほうが男性よりも長い睡眠時間を取っていますが、日本や韓国では、女性の睡眠時間は男性に比べて短い実態があります。家事や介護など、家庭生活の負担が女性のほうが大きいのでしょう。体や心の健康にも直結する問題なので、みんなで対策を考えていけるといいですね」と駒田さんは話します。

 週末まで疲れを持ち越さずに、睡眠不足は数日のうちに解消しておく。そう心がけ、明るく元気に仕事を続けたいものですね。

(読売新聞メディア局編集部・永原香代子)

【紹介したトピ】朝まで寝てるのは悪いこと?

【関連したトピ】こんな目覚まし時計が欲しい寝坊癖朝起きられません遅刻したくない 治したい目覚めが良くない。熟睡したい。

【あわせて読みたい】

睡眠時間の男女格差、日本の女は眠れない(上)

睡眠は足りていますか?「睡眠負債」に陥らないために(下)