「女性が輝く社会」実現に必要なことは? 国際女性会議リポート

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(第5回国際女性会議準備事務局提供)

 国内外の有識者らが女性活躍の推進などについて議論する「国際女性会議(WAW!)」(政府主催)がこのほど、東京都内で開かれました。5回目となる今回は、6月に大阪で開かれる主要20か国・地域(G20)首脳会議で日本が議長国を務めることから、G20の女性らが女性政策に関する提言を行う国際民間会議「W20」と合同で開催されました。会議では2日間にわたって、女子教育の大切さや女性が生きやすい社会にするための方策などについて、活発な議論が行われました。

 会場となった東京・千代田区のホテルニューオータニには、各国から多くの女性が集まり、会場外でモニターを見る人も大勢いました。

会場内に入れず、外にあるモニターで会議の様子を見る人たち

 マララさん、女子教育の大切さを訴える

 初日は、イスラム武装勢力に銃撃されながらも、女子教育の大切さを訴え続け、2014年に史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタン出身のマララ・ユスフザイさんが、基調講演を行いました。

基調講演をするマララ・ユスフザイさん(第5回国際女性会議準備事務局提供)

  今回が初来日となるマララさんは冒頭、前夜の安倍首相との夕食会で「わさびをアボカドだと思って食べて、涙が出た」とおちゃめなエピソードを紹介。宿泊したホテルの美しい庭園を見て、「東のスイス」と呼ばれた美しい故郷を思い出したといい、「私の楽しみは学校に通うことでしたが、反政府勢力によって一変しました。教育のない人生は未来がない。祖国に貢献することもできません」と強調しました。さらに、「女性に対する教育のため、G20に新しい資金提供をお願いしたい。女子に投資することで、私たちの想像を超えることが実現できる」と訴えました。

  マララさんの基調講演に先だち、安倍首相は、世界中の女子が少なくとも初等・中等教育の12年間、質の高い教育を受けられる環境づくりを、G20首脳会議の議題とする方針を表明しました。

数学・科学の分野への女性進出進まず

  会議では、「技術革新と人材育成」「地方活性化と雇用創出」「多様性を育てるメディアとコンテンツ」といったテーマごとに、女性活躍のための各国・地域での取り組みなどについて、様々な角度から報告されました。

  技術革新と人材育成に関するパネルディスカッションでは、ブルガリア司法改革担当副首相兼外務大臣のエカテリーナ・ザハリエヴァさんが、同国ではエンジニアの26.7%、エンジニア教師の52%が女性と、技術職の女性割合が高いことを報告。「元々IT基盤が強力なことや伝統もあるかもしれません。民間企業・政府が協力し、エンジニアは女性でもできるという土壌を作りました」と話しました。

  また、国連人権高等弁務官のミチェル・バチェレさんは「なかなか数学・科学の分野に女性が入ってこない。男はこう、女はこうという決めつけはやめるべき」と訴えました。さらに、「すべての省庁でジェンダーの視点が必要です。高速道路のようなインフラ整備にも欠かせません」と話していました。

会場の外で配布されていたコーヒー。日本の男女の賃金格差を指摘しています。

「女性が帰らない町」からの脱却目指す

  地方活性化をテーマにしたパネルディスカッションでは、城崎温泉などで有名な兵庫県豊岡市の取り組みが紹介されました。中貝宗治市長は「高校を卒業すると9割の若者が市を離れる。男性は5割弱戻ってくるが、女性で戻ってくるのは27%。市の存続の危機を感じた」と言います。その理由として、ジェンダーギャップが根強いことに加えて、「『地方は貧しくてつまらない』という印象がある。仕事の有無が問題ではなく、魅力的な町を作る必要がある」と指摘しました。

  中貝市長は、そのための取り組みの一つとして、舞台芸術家らが滞在しながら創作に打ち込める「城崎国際アートセンター」をつくり、海外から注目を集めている事例を紹介し、「小さな世界都市を目指している」と話しました。

  また、同市では、市職員に男性の育児休業取得を呼びかけたり、市内の企業にジェンダーギャップの解消を図るよう働きかけたりしているそうです。「ジェンダーギャップは人々の体にしみこんでいる。(ジェンダーギャップ解消に取り組む人を)つぶそうとする勢力があるから、つぶされないように守ることが大切」と、リーダーシップのあり方についても言及しました。

 プリキュアが伝えたいこと

  メディアについての分科会では、新聞やテレビ、広告が持つ力についても意見が交わされました。

  冒頭で紹介されたのは、女の子たちが戦士に変身し、悪と戦う人気アニメ「プリキュア」シリーズ。「みんなそれぞれ違う」「考え方や感じ方が違う人と出会うから楽しい」「人は自分と違うからこそ、出会うことで自分も変わっていける」。プリキュアたちが多様性を肯定するセリフを言いながら戦う場面の動画が流されました。

劇場版プリキュアの一場面が流されました

  「プリキュア」シリーズを制作する東映アニメーション第一映像企画部部長の鷲尾天さんによると、鷲尾さんが劇場版プリキュアを手がけた10年前、多様性が尊重されるべきという意識はありませんでしたが、「当時の女児向けのアニメは“女の子らしくあること”を意識していた。もっとプリキュアが自分で物事を考えて、解決していくべきと考えた」と、作品に込めた思いを話していました。

 女性大臣の服装や髪形を批判

  メディアや、情報の受け取り手のあり方を考えさせられる報告もありました。グアテマラの外務大臣サンドラ・エリカ・ホベル・ポランコさんは、現在の職についた時に、役職についてではなく、服装や髪形などへの批判を受けたそう。「マスコミが固定観念を作っているところもある。マスコミは客観的な方法で自分の姿を伝えてほしい」と話していました。

  東京芸大に通いながら、雑誌「HIGH(er) magazine」の編集長を務めるharu.さんは、ある男性に「かわいいから損をしているね」と言われたそう。芸術の分野では、容姿に恵まれた女性作家はその見た目に注目が集まり、作品には目を向けてもらえないという意味だといい、haru.さんは「私たちは本質を見てもらえないところと闘っている。ジェンダーに関係なく、生きやすい社会にしたいです」と話していました。

 女性はなんでもできる!

  パネルディスカッションで、国連人権高等弁務官のミチェル・バチェレさんは「女性はなんでもできる」と強調していました。偶然にも、今年2月まで放映されていた「プリキュア」の前シリーズ「HUGっと!プリキュア」のスローガン「なんでもできる! なんでもなれる!」と重なっていたことが印象的でした。

 (取材・文/読売新聞メディア局編集部・山口千尋)