日本の夫婦はなぜセックスレスなのに子供が欲しいのか

サンドラがみる女の生き方

写真はイメージです

 日本では「セックスレス」が話題になります。書籍やインターネットでもセックスレスをテーマとしたものを見かけますし、実際にセックスレスの夫婦の話も聞くのです。そうであっても仲良しのカップルであれば問題はないはずですが、「子供が欲しいのにセックスレス」というような「悩める夫婦」がいるのもまた事実です。今回は海外とも比べながら、そんな日本のセックスレス事情にスポットを当ててみたいと思います。

「セックスレスだけど子供が欲しい」と悩む女性たち

 「子供が欲しいのにセックスレス」と悩む女性の声は切実です。これは深刻な悩みとなりうることもある一方で、日本では「セックスレスであること」が女性同士の会話のネタになっていたりもします。日本の女性と話していると、「実はウチはセックスレスなの」と打ち明けられることも多いのです。

 先日、欧米人の知人が開いたホームパーティーに行った時、パーティーの最後のほうで、ある日本人女性が、酔いも手伝って「ウチはセックスレスだから、人工授精をしようと思う」と話し出し、その場にいた日本人女性数人が同調して「いいね~! ウチも同じだから、私も人工授精にしようかしら」と盛り上がっていました。

 面白かったのは、その場にいたヨーロッパ人の女性が「え……セックスがないのに、子供が欲しいのですか」と何度も確認していたこと。彼女は当初、日本人女性が数人で「セックスレス」について語りながら盛り上がっているのを見て、自分の日本語に理解力がないために間違った解釈をしてしまったのではないかと気にしているようでした。しかし、何度か確認した後に、本当にその日本人女性が「セックスレスだから、人工授精をしたい」と考えていることが分かり、驚いている様子でした。

 筆者は、帰り道がそのヨーロッパ人女性と一緒だったのですが、「なぜセックスしない相手との子供が欲しいのか分からない」と混乱気味に言っていたのが印象的でした。決して責めるということではなく、単純に「どうして、そこまでして子供が欲しいのか分からない」と疑問に思っているようでした。

 たしかに一般的なヨーロッパの感覚では、「まずパートナーがいて、セックスも含めた愛情確認をしていく上で、あくまでも結果として愛の結晶である子供が生まれてくる」という「流れ」を大切にする人が多い気がします。逆にいうと、その流れで子供を授かることができなければ、それでよいと考える女性も多いのです。もちろん、ヨーロッパにも子供を作るために現代医療の手を借りる人がいないわけではありませんが、子供がいないからといって女性が思い詰めてしまうことは、日本より少ないかもしれません。

排卵日にしかセックスしない夫婦

 これは極端な例かもしれませんが、日本には「子供が欲しいから、夫とは排卵日にしかセックスをしない」と語る女性もいます。排卵日のセックスのほうが妊娠する可能性が高いと計算してのことだと思いますが、この発言からは「旦那とのセックスがそもそもあまり好きではないから普段はしないけれど、子供は欲しいので、効率よくピンポイントで妊娠の確率の高い日だけにコトに及ぶ」という女性側の心理もまた読んでとれるのでした。

 ところが、「この排卵日のセックス」は日本・海外を問わず、男性側からの評判はあまりよくありません。日本の男性と以前、このテーマについて話したことがあるのですが、「忙しいのに、そんなのを指定してもらっても困る」と遠回しに不満を漏らしていました。妻から指定された日に仕事で帰りが遅くなってしまい、ケンカになったことがあるとも語っていました。

 ヨーロッパ人の男性に至っては、もっとストレートに不満をあらわにします。ドイツ人男性いわく「仕事じゃあるまいし、スケジュールを組むなんて最悪だ」とのことです。複数のドイツ人男性は口をそろえて「日にちがあらかじめ決まっているなんて、ロマンチックではない」と言っていました。「子供を作るためには、ロマンチックさになんかこだわっていられない」という女性側の声が聞こえてきそうですが、そこに明らかな温度差があるのは間違いなさそうです。

 どこに「正解」があるという話ではありませんが、一般的なヨーロッパ人の感覚だと、「子供はロマンチックなムードから生まれる、または生まれるべき」という「理想」が強いので、セックス関連のことについて「スケジュール通りに」というのは受けつけない人が少なくありません(過去の連載「性愛と避妊について話さないのはなぜ?」で触れていますが、避妊については別の考え方です)。

 ヨーロッパ人は、条件的なことよりも本能のままで恋愛をして家族を持つことにこだわるため、「セックスこそ本能のままであるべき」との考え方が強く、スケジュールを管理して「何曜日に……」といったことはあまり受け入れられないようなのです。

「家のためのセックス」からの卒業

 ヨーロッパの女性よりも日本人女性のほうが「妊娠」を目的に頑張ったり悩んだりするのは、「家」の存在と無関係ではありません。

 というのも、ヨーロッパの人にとってセックスはパートナーとの良い関係のために不可欠なものですが、日本の場合は、それ以外に「家」がついてくるケースが少なくないからです。

 日本人は無意識のうちに、自分やパートナーのためだけではなく、「家」のために子供がいないとダメと考える傾向があります。つまりは「両親が孫を欲しがっている」とか「きょうだいに子供がいないから、自分が産まないと家が途絶えてしまう」などと考え、プレッシャーに悩まされるケースです。これを「家というものを大事にしている」というふうにとらえることもできる反面、「家に縛られている」ともいえます。自分の人生なので、ある意味、「家を背負った」セックスはやめてもいいのではないかと、筆者は思います。

 日本には、双方の「家」のことを見た上で「恋愛と結婚は別」と考える人もいます。「結婚」や「子を持つこと」は必ずしも自分やパートナーのことだけではなく、「両親を喜ばせるため」という要素もあるところを見ると、日本では「家」が一つのキーワードになっているといえるのではないでしょうか。

 子供を持つという夢を追求することは素晴らしいことです。しかし、それがうまくいかず、つらい時は、自分が無意識のうちに「女に生まれたからには子供は産まないといけない」という呪縛にとらわれていないか、一度立ち止まって内観してみてはどうでしょうか。そうすることで、ラクに生きるための糸口が見えてくるかもしれません。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/