南三陸のNPO代表「女性の生きにくさ」被災地以外にも

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 甚大な被害をもたらした東日本大震災から8年。震災発生から間もなくボランティアとして宮城県に入り、女性を支援するNPO法人「ウィメンズアイ」を設立したのが、代表を務める石本めぐみさん(48)です。石本さんは、被災地の女性支援に携わりながら、地域の女性リーダーの育成に関わっています。被災地の女性が感じている生きにくさは、被災地以外の場所で暮らす女性にも通じるところがあるという石本さんに、活動内容や、生きにくさを解決するために必要なことを聞きました。

「小さなグループ」から「ほどよいコミュニティー」に

――「ウィメンズアイ」は、被災地に駆けつけた災害ボランティアの有志の活動から始まった女性支援の団体です。最初はどんな活動に取り組んでいましたか?

 活動の中心は宮城県南三陸町でした。ボランティアが宿泊する場所はなかったので、同県登米市内から通いながら、避難所で女性のニーズを調査したり、仮設住宅でコミュニケーションづくりの場を提供したりしていました。

 最初は編み物教室から始めました。メンバー数人の本当に小さなグループです。最初の場づくりは私たちが仕掛けましたが、途中から運営は参加メンバーに任せていったんです。やがて、避難所や仮設住宅で暮らす女性同士のつながりができていきました。

 メンバーは、人数が少ないから、みんなが何らかの役割を担わないといけません。「誰かがやってくれる」「教室があるから行く」というのとはちょっと違います。やがて、小さいグループがいくつも生まれて、ほどよいコミュニティーができていきました。この取り組みを国連に報告したところ、国連防災局が出版しているリポートに、「Women’s Leadership in Risk-Resilient Development: Good Practices and Lessons Learned(リスク耐性の開発における女性のリーダーシップ)」の事例の一つとして紹介されました。

――震災から8年になります。活動はどのように変わってきていますか?

 その時々のニーズや参加するメンバーによって、内容は変わっています。子育て世代のママたちが中心になった子育てフェスやシングルマザー向けの資格講座などのほか、地域の人が共同で使えるパンやお菓子の加工場を作ってパン作り教室を開いたり、青空市場「ひころマルシェ」(南三陸町)を開催したり。いまは、こうした講座やイベントのほかに、仕事の悩みを抱えている人や、なかなか一歩を踏み出せない人のためのカウンセラー事業をやっています。

ママ達が出店・運営側にまわってイベントを盛り上げてくれました(ウィメンズアイ提供)

女性の声、すくい取られず

――被災地支援をする中で、どんな課題が見えてきたのでしょうか?

 ボランティアを始めてから3年目に、活動を継続していくかどうかについて話し合いました。復興の状況は人それぞれですが、多くの人が生活再建を考え始めている時期でした。メンバーで話し合い、それまで感じていた被災地の女性が抱える社会問題や生きにくさに向き合っていきたいと思い、活動を継続することを決めました。

――どんなところに、問題や生きにくさを感じたのでしょうか。

 震災から2か月後、避難所をまわった時、女性が自分に必要な下着のサイズを言えない、ということがわかりました。避難所でリーダーシップをとっているのは男性がほとんど。なかなか言い出せなかったんだと思います。

 被災地で感じたのは、女性の意見が取り入れられる機会が少ない、ということ。子育て中のお母さんが、「子どもを遊ばせる公園がなくて困っている」と言っても、「復興期なんだから我慢しろ」と言われてしまうんです。子どもの成長は早い。震災時、3歳だった子どもはもう11歳になっています。子どもが成長していく間にも、女性の声がすくい取られていない現状がありました。

女性のリーダーを育てる

――ウィメンズアイでは、被災3県(岩手・宮城・福島)で草の根活動をする若手女性リーダーの育成事業として、2015年に被災地女性のリーダーシップ研修「グラスルーツ・アカデミー東北」を始めました。

 参加しているのは、地域をよりよく変えていこうとしている女性たち。大学で災害に強い町づくりを学んでいる大学生や、地元でNPO法人を設立してコミュニティリーダーをしている人など様々です。それぞれバラバラに活動していますが、研修で集まることで、学ぶだけでなく、ネットワークを作ってもらえたらと思っています。

――どこで、どんなことを学んでいるのでしょうか?

 東北地方やアメリカ各地で行っています。18年はロサンゼルスに行って、生活困窮者の支援をしている方や若手女性起業家など様々な方たちと交流しました。研修は成長する機会。他人と話して学び、立ち止まって考えることが必要です。

2018年にアメリカ・ロサンゼルスで行われた研修の様子(ウィメンズアイ提供)

――「女性のリーダーを育てるために研修」とすると、抵抗を感じる人も少なくないのでは?

 「私がリーダーなんて」と尻込みしてしまう人もいます。起業や勉強のために家を空けることについて、女性自身が「それをしていい」と思えるか、家族に言えるのかというハードルもあります。東京にいたら、「セミナーがあるから遅くなるね」と言って自分の母親やベビーシッターに見てもらうことに、抵抗感が少ない。でも地方だと、「あなたが子どもを見なくて誰が見るの」「お母さんなのに、子どもを預けるの?」という強いプレッシャーを受けます。周囲を説得して、自分にそれを許すのは、ものすごい労力なんです。

被災地だけではない女性のエンパワーメントの重要性

――それでも女性が学び、働く意味はどこにあるのでしょうか?

 家事をして子育てをする生活の多くは女性が担っています。仕事をしてお金を稼いだり、自信をもって学んだりする女性が増えることで、女性のリーダーが増え、意見も通りやすくなり、女性が住みやすい地域になっていく。そうすることで、女性だけでなく、みんなが暮らしやすい社会になります。女性のエンパワーメントはとても大切なんです。

 それは、被災地だけの問題ではありません。別の地域で、女性が都会に行ったきり、地元に全然戻ってこないという地域の問題解決を図るため、そこで暮らす女性に聞き取り調査をしたことがあります。やはり、被災地と同じ状況でした。女性の声が行政まで届いておらず、子育てしにくい、暮らしにくいと感じている女性が多くいたのです。

――地域を変えていこうとすると、反対する人もいるかもしれません。活動する上で苦労などはありませんか?

 私たちは、本当に小さな活動からやっていますし、地元の人とうまくやっていかないと何にもならない。地元の住民や行政と綿密なコミュニケーションを取りながら続けています。それに、いくら私たちが変えようと言っても、変わるものではありません。女性リーダーを作るためにはこうすべき、というのではなく、「一緒に変えていきませんか?」と提案し続けていけたらと思っています。

「3月末に南三陸町で三陸ワカメまつりをするので、ぜひ遊びにきてください」と石本さん

自己決定できる力を持った女性を増やす

――被災地支援をするNPOの代表として、これからしなければならないと感じていることはありますか?

 エンパワーメントで地域がすぐ大きく変わるわけではないんです。時代の大きな変わり目が来るから、その時までに女性が自己決定できる力を持ち、力を持った人が増えていくことが大切だと思っています。女性一人ひとりが物事を決めて社会参加できる土壌づくりを続けていきたいですね。

(取材・メディア局編集部 山口千尋)

石本 めぐみ(いしもと・めぐみ)
ウィメンズアイ代表

  1970年生まれ。派遣社員として外資系金融会社で秘書として働く。34歳で早稲田大学の夜学に通い、児童養護施設の高校生とのボランティアを通じてNGOに興味を持ち、東大大学院でNGOについて研究。会社を辞めて国際NGOで働こうとしていた矢先に、東日本大震災が発生。震災から1か月後には寝袋を持って石巻市へ入り、ボランティア活動を始める。2013年に「ウィメンズアイ」を設立、被災地の女性支援に携わっている。現在は、神奈川県茅ヶ崎市に在住。女性に関する政策提言をG20に向けて行う組織「W20」の委員を務める。