ヨーロッパにはいない!?セックスレスの夫婦

サンドラがみる女の生き方

写真はイメージです

 日本ではしばしば耳にする「セックスレス」という言葉。ところがドイツを含むヨーロッパでは、セックスレスの夫婦があまり話題に挙がることはありません。セックスレスがヨーロッパに「ない」と言い切るのは尚早かもしれませんが、日本より「少ない」のは確かです。

 今回は「セックスレスが良いか・悪いか」という観点ではなく、単純にニッポンと欧米の「違い」にスポットを当てながら、セックスレスについて考えたいと思います。

 さて、いきなりですが、なぜヨーロッパでは日本よりも「セックスレスの夫婦」が少ないのでしょうか。

【理由その1】ヨーロッパではセックスは生活の「基本」

 ヨーロッパにセックスレスのカップルが少ない背景には、そもそもヨーロッパ人にとって、セックスは「基本」であるからです。日本の「食べ物」のような位置付けだと考えてもらえれば分かりやすいかもしれません。ヨーロッパの人にとってセックスのない生活というのは、日本人にとって「毎日の食事がレトルト食品」というのと同じぐらいに不満をもたらすものなのです。

 「カップルや夫婦の愛情確認」としてセックスは不可欠というヨーロッパ人の共通認識もありますし、それ以前に、前述通り「パートナーとのセックスのない生活は考えられない」という感覚もヨーロッパでは強いのです。逆にいうと、もしもセックスレスになった場合、そのカップルが別れる確率は日本よりも高いといえるでしょう。

 さきほど、「ヨーロッパ人にとってのセックスは日本人にとっての食べ物と似たような感覚」だと書きましたが、その証拠にドイツ語のヤフーのトップ画面を開くと、やたらと「セックス絡み」の記事が多いです。決してアダルト的なものではなく、いたって真面目にセックスについて考える内容の記事なのです。

 「カップルがこのように工夫すれば、何年たっても飽きないセックスができる」だとか「パートナーと裸のヨガでリラックス」というような記事が一部写真付きで紹介されたりします。トップ画面にこのような記事が並ぶぐらいですから、ヨーロッパ人が裸の写真やセックスをテーマにした記事に目を背けるはずもなく、まさに日本人がご当地グルメを見るような感覚で、それらの記事を読んでいたりするわけです。

 注目すべきは、それらのドイツの記事では「セックス」のみというよりは、「パートナーとのセックス」が強調されている点です。そんな背景もあり、そもそもセックスレスになることが日本と違ってあまり市民権を得ていない、という土俵もあるのでした。

【理由その2】ヨーロッパ女性は「女性であり続ける」が当たり前

 日本ではよく「あの女性は母親でいることよりも、女でいることを選んだ」という言い方をします。そしてそれは、決まってネガティブな文脈で使われています。ところが、ドイツにはそのような言い方はありません。

 子供がいようといまいと、若かろうが年を取っていようが、女性は性的なことも含めて、いつまでも女性であり続けるのが当たり前という感覚があります。子育てのためには、性的な部分を封印して当たり前という考え方はあまりありません。

 また女性に限らないことですが、「仕事が忙しくて寝る時間を確保するのがやっと」というカップルに対して、日本社会では「仕事のためなら仕方ない」と半ばあきらめモードが漂っていますが、ドイツの場合は冒頭の通り、セックスの優先順位は高いので、こういった状態が長期にわたって続く場合、早い段階で仕事内容の見直しが行われるでしょう。

 日本では何かと「仕事」が優先されがちですが、ドイツでは、人生はいつ、何が起こるのか分からないからこそ、仕事以外の人生を楽しもう、という考え方が強いです。

【理由その3】ヨーロッパでは親子が別室で寝る

 よく、子育ての仕方が国によって違うと話題になりますが、その子育てにも、このテーマにまつわるヒントが隠れていたりします(笑)。

 たとえば、ドイツの昔の育児書には「夫婦の寝る場所が同室であるのに対し、赤ちゃんに関しては両親とは別室にするのが子供の自立を考える上で望ましい」と書かれています。筆者は、これは子供の自立のほかに、「親側のそういった事情」も考えての上での見解だったのでは、と勘繰っています(笑)。

 現在のドイツでは昔ほどこういった考えはなく、「赤ちゃんと一緒に寝るのは赤ちゃんに安心感を与える」とされていますが、そうはいっても、子供がある程度の年齢になると、今の時代もやはり親子は別室で寝る傾向があり、ニッポンでいう「親子3人、川の字で寝る」ということはあまりありません。

 余談ですが、筆者は母が日本人ですので、子供の頃はよく両親と川の字になって寝ていました。子供時代の良い思い出ですし、ニッポン流の「川の字」は、ほのぼのしていて好きです。

【理由その4】子供をベビーシッターに預け「男女の時間」楽しむ

 このように、ドイツを含むヨーロッパの子育てには、今の時代も無意識的にではあるのでしょうが、「夫婦が二人きりになる時間」が多く組み込まれているのでした。

 子供をベビーシッターに預けて夫婦やカップル二人でおでかけするなど、ヨーロッパでは子供ができた後も「カップルとしての男と女」の時間が大事にされています。

 日本ではベビーシッターを利用する人はヨーロッパと比べて少なめですが、その一因には、子供を預けて親だけが楽しむのは、なんだか後ろめたい気持ちになるという理由も一部にあるのではないでしょうか。

 もちろん、各家庭の考え方もありますから、「この国ではこう」と言い切れるものではないのですが、日本のほうが母親に対する「子供ができたら、いつでも子供を中心にするべき」という社会の目が厳しいのかもしれません。夫も妻を女性としてというより母親として見る向きが日本では強く、そのこともまた、セックスレスに拍車をかけている気がしてなりません。

 欧米の一般的な「寝室事情」を書かせていただきましたが、筆者は、男女のあり方はその二人が納得していればそれで良いと思いますので、当たり前ですが、「これが正しい」というようなハッキリとした「答え」はないと思っています。

 「セックスレスはおかしい」という声もあったりしますが、極論をいえば、「あれだけセックスをしていて情熱的だったカップルが、何かの拍子にもめて別れる」なんて話はゴマンとありますし、逆に「仲良しなセックスレスカップル」だっています。

 次回は、「日本の夫婦はなぜセックスレスに悩むのか」を海外の事情と比べながら、その背景に迫ります。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/