ジュエリーの芸術、匠の技を体験的に学ぶ

News&Column

 フランスの高級宝飾ブランド「ヴァン クリーフ&アーペル」による、宝飾芸術の日本特別講座「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」が、3月8日まで東京都内で開かれています。パリを拠点に世界各地を巡っており、東京では2013年以来の開催。読売新聞の記者2人が二つの講座を受講しました。奥深い宝飾品の世界の一端を紹介します。

ジュエリーの「学校」に参加

 今回の講座では、「サヴォアフェール(匠の技)」「ジュエリーの芸術史」「原石の世界」という三つのテーマで15の講義が設けられています。講師は全員、パリから来日しているそう。記者が参加したのは、宝石の基本を学ぶ「原石を知る」と、ジュエリー制作の最初のステップを学ぶ「デザインから模型制作まで」。4時間にわたって、少人数でじっくり学びました。

 「原石を知る」と題した講座では、ジュエリーの歴史に詳しいマリー先生と宝石学者で地質学者、宝石ディーラーでもあるドミニク先生の2人が、講師を務めました。

 机には、冬の日中、北側から入る日の光と同じ色の照明が置かれていました。ディーラーがダイヤモンドの色を観察するために用いるのと同じものだそうです。

両方とも同じペリドットだが、左は内包物が多く輝きが失われている

 ペリドットを二つ、指と指の間に並べて見ます。成分は同じなのに、インクルージョン(内包物)やカットの仕方によって見た目に差が出ます。光にすかしてみると、確かに内包物が多すぎるものは輝きがなく、濁って見えます。計12種類の石を見てみました。

 次に、赤い宝石が渡され、マリー先生から「何か分かりますか?」と尋ねられました。「ルビー」と答えましたが、正解はレッドスピネル。マリー先生は、「専門家なら簡単に見分けられますが、謙虚な心を持って見ています。慎重を期して、検査機器を使って確かめます」と話していました。

倍率が10倍のルーペ。専門家も使用している

 続いて、倍率10倍のルーペを使って観察です。うまく見るコツは、ルーペを目にできるだけ近づけ、両目を開けて見ること。ピントが合うと、内包物が確認できます。内包物の形によって産地や、天然の宝石か合成かを判断できるそうです。マリー先生は「ディーラーにとっては、内包物はないほうがいいけれど、研究者には多くの情報をもたらしてくれます。自然が残した足跡です」と説明していました。

模型作りに挑戦 

 「デザインから模型制作まで」の講座は、デザインと模型制作を2時間ずつ体験しました。まずは、チョウのデザイン画を写すところから。チョウの羽の模様となる円を描くときは、専用の定規を用いて、サイズが異ならないよう注意します。指定された色合いに絵の具を調整し、塗っていきます。

ダイヤモンドの描き方の手本を見せる講師

 透明なダイヤモンドを白やグレーで描写する方法も学びました。小さな円の中を白とグレーで色をつけ、細くて短い白い線をいくつも引いていきます。自分の描いたものは、円に色が塗ってあるだけなのですが、先生の描いたものはちゃんとダイヤモンドに見えるから不思議です。

チョウの形にくりぬいて、ラインストーンを置くくぼみをつける作業を体験

 模型制作では、デザイン画で描いたチョウの模型を作りました。軟らかい板状のすずにチョウが描かれており、糸鋸いとのこを使ってくりぬいていきます。ラインストーンを置く場所に丸いくぼみをつけたり、細くなっている部分を補強するためにハンダ付けをしたり。細かな作業の連続で神経を使い、終わる頃にはぐったりしました。いじけた形の模型が完成。プロのものとはほど遠いですが、世界に一つだけ、自分だけのものだと思うとうれしくなりました。

マリー・ヴァラネ=デロム校長

 レコールのマリー・ヴァラネ=デロム校長は「人類の歴史を見てもジュエリーがない時代はないし、性別も年齢も国籍も関係なく人々の想像をかき立てる特別な存在です。講座を通して、ジュエリーの芸術性を感じてほしい」と話していました。

展示されているルネ・ラリックのブローチ

 会場となっている京都造形芸術大学外苑キャンパス(東京都港区北青山1―7-15)では、無料で見学できる展示(午前11時~午後6時)も行っています。高い芸術性を誇る宝飾品の世界をのぞいてみてはいかがでしょう。

(読売新聞 福島憲佑、小坂佳子)