「役割の棚卸し」は自分自身を見つめ直すきっかけ

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 女性をはじめ多様な人々が活躍できる社会について考えるカンファレンス「MASHING UP」が、東京都内で開かれました。働き方や家族のあり方などに関するトークセッションのうち、「キャリアアップは『役割の棚卸し』から」と題するトークセッションでは、「会社員」「妻」「母」など様々な役割を担う女性の生き方について、子育てをしながら働く女性2人が語り合いました。(コーディネーター・読売新聞メディア局編集部次長 笹原明代)

悩みの元になっている役割を見つける

荻野みどりさん

 登壇者のひとり、荻野みどりさんはオーガニックのココナツオイルなどを販売する食品会社、ブラウンシュガーファーストの代表取締役社長です。

 「いろんな役割が、気づいたら絡んだコンセントのような状態になっていました。絡み合った役割は、不満やモヤモヤの原因になります。自分が頑張るべき役割はどれか、悩みはどの役割にひもづいているのか、そう考えると、自分にとってやるべきこととやらなくていいことが明確になります」

 自身の経験を振り返り、「悩みの元となっている役割を見つけ出すことが、自分にとって何が大切なのかを知るきっかけになる」と語りました。

役割の優先順位は変わる

金高恩さん

 もうひとりは、Japan Taxi取締役常務執行役員CMO(当時)の金高恩さんです。金さんはかつてIT業界で働いていましたが、午前3時に帰宅し、午前5時に出勤するという猛烈な働き方だったそうです。

 「35歳で出産して、考え方がガラリと変わりました。会社は私がいなくても大丈夫だけど、この子は私がいないと死んでしまう。役割の優先順位が変わって、今は母親の役割をとても大切にしています」

笹原明代

 トークセッションのタイトルにある「棚卸し」の意味は、「手持ちの商品、原材料の種類、数量などを調査し、価格を評価すること」です。「子どもの成長とともに、母や妻の役割よりも、自分のために使う時間が増えました。自分自身をどう評価するか、ということが『役割』の優先順位のつけ方に反映されるのだと思います」(笹原)。

 3人が、自分の役割の中で優先順位をつけてみました。

   荻野さん=1母親 2経営者 3女性
   金さん =1母親 2経営者 3妻
   笹原  =1社会人 2母親 3女性

母親の視点が仕事につながる

 小学生のお子さんを持つ荻野さんと金さんの役割の1位は「母親」です。荻野さんは、完全母乳で育てていたお子さんに湿疹が出たり便秘になったりしたことで食と体のつながりの大切さを実感。子どもがおいしく安心して食べられるお菓子の販売を思いつきました。その食材探しの中でオーガニックのココナツオイルに出合い、「見据えているのは30年後の未来。私の娘がお母さんになる世の中に豊かな食を届けたい」と考えたそうです。

 タクシー会社でスマホ決済など次々と新しい取り組みを進めている金さんは、「人が移動という手段で幸せになれる社会インフラを作りたい」と語りました。子どもたちが大人になった時に暮らしやすい社会を実現したい、という思いが2人の仕事のやりがいにもつながっているようでした。

役割が多くても「自分」を忘れずに

 トークの後は、登壇者も交えてワークショップが行われました。自分が優先する役割の上位三つを書き出して、テーブルごとにその理由を話し合いました。ほとんどが初めて会った人同士にもかかわらず、どのテーブルでも積極的に意見を交わす姿が見られました。

 参加者のひとりは、「子どもが小さく、仕事と家事と子育てで1日があっという間。『やらないことを決める』という発想の転換が必要だと思った」と話していました。

 多くの役割を抱えていても「自分を手放さない」ことが成長にもつながると感じられたトークセッションでした。