脱ハイヒール、スニーカーがミラノのトレンド

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ミラノ市内に期間限定でオープンした「フルラ」では、スズランのモチーフをあしらったスニーカーが並んだ

 高級ブランドが新作を発表するミラノコレクションで、スニーカーが存在感を増しています。ファッションショーの来場者もヒールの靴をはかない女性が増え、セルジオ・ロッシやフルラといった高級ブランドもスニーカーを相次いで発表しています。ヒール靴の強制は女性差別との声も高まり、苦痛からの解放を呼びかける「#KuToo」が日本で広がってきました。靴を巡る動きを紹介します。(イタリア・ミラノで、読売新聞生活部・野倉早奈恵)

プラダやフルラの新作スニーカー 

 イタリアで25日まで開催されていた2019~20年秋冬ミラノコレクションでは、スニーカー姿の女性が目立ちました。グッチのショーを見に来たオーストラリアのファッション雑誌の編集者、アリソン・ベネスさんは「今の気分はハイヒールではなくスニーカー」と話します。プラダのコレクションでもネオカラーの厚底スニーカーが登場していました。

セルジオ・ロッシの2019~20年秋冬の新作。取り外しができるフリルがついたエレガントなスニーカーも並ぶ(イタリア・ミラノ市内で)

 ミラノ市内で開催されている展示会をのぞくと、エレガントな靴で知られるセルジオ・ロッシの新作は、エナメルのフリルがインパクト大の厚底のスニーカー。フルラも期間限定のポップアップショップで、初めて女性向けのスニーカーコレクションを発表しました。同社の最高経営責任者(CEO)アルベルト・カメルレンゴ氏は「トレンドを代表するアイテムはスニーカー」と話し、足下の主役はスニーカーに変わりつつあるようです。

グッチのブランドスタッフ(左)、オーストラリアのファッション誌の編集者(中央)、ショーの来場者(右)

ヒールの苦痛から解放「#KuToo」

 一方日本でも今、ハイヒールの「苦痛」から女性を解放しようという運動が始まっています。きっかけは、女優、ライターの石川優実さん(32)のツイッターでのつぶやきでした。
 1月下旬に「女性が仕事でヒールやパンプスをはかなきゃいけない風習をなくしたい」と書き込んだのです。

 石川さんは、専門学校に在学中に、研修の一環でホテルでアルバイトをしました。その時に、パンプスをはくように言われ、靴擦れや指の変形などで苦しんだそうです。現在のアルバイト先でもパンプス着用を推奨されていることに「体に負担をかけてまで必要なマナーなんだろうか」と疑問を持ったといいます。

 そんな石川さんの声に賛同する動きがSNSで広がり、アメリカ発のセクハラ告発運動「#MeToo(私も)運動」に倣い、靴と苦痛を掛け合わせた「#KuToo」というハッシュタグを考案。2月初旬からは石川さんが発起人となって、インターネットで署名活動も始めています。石川さんは「女性に選択肢がほしい。当たり前と思われてきたマナーが性差別につながることもある」と訴えていました。

ヒール強制に抗議したセレブたち

 欧米で脱ハイヒールの動きを加速させたのは、セレブリティー(著名人)たちです。2015年のカンヌ映画祭で、底が平らな靴をはいた女性がドレスコードにそぐわないと履き替えを命じられた事件がありました。

 それに抗議した女優たちが、ハイヒールの強制はできない、とレッドカーペット上でハイヒールを脱いだり、平らな靴で来場したりする姿がニュースになりました。

 服飾史家の中野香織さんは「第2次世界大戦中のピンナップガールや戦後の男性誌の影響でハイヒールが女性性の象徴としてみられるようになりました」と話します。「ここ数年、女性が抑圧に対して我慢をせずに声を上げるようになっています。ハイヒールもその一つ。脱ハイヒールの動きは肉体的な苦痛から解放されたいという女性の思いと、流行がかみ合った結果」と分析します。 

 イギリスでは職場でヒール靴を強制されることを巡って、訴訟も起きているそうです。スニーカーも含めて、好きな靴を好きにはいても、マナー違反にならない、そんな時代が来るといいなと思います。