「共働き」と「育児」をインターンで体験

働く女子未来形(4)

「インターンを通して学生のコミュニケーション力も伸ばせたら」と堀江さん(東京都港区で)=奥西義和撮影

学生に当事者意識

堀江敦子さん(33) スリール社長

 企業や学生の研修などを手掛けるコンサルティング会社「スリール」社長の堀江敦子さん(33)は、大学生と話をする機会が多い。「『仕事と子育てを両立できるのか不安だ』という声をよく聞くんです」。その度に意欲をかきたてられる。「まだやることがある」

 2010年に同社を起業して始めた「ワーク&ライフ・インターン」は、大学生向けの研修プログラムだ。学生はインターンとして共働き家庭を定期的に訪ね、子どもを保育園へ迎えに行き、一緒に食事をしたり遊んだりと育児を体験する。「子育てをする前から、仕事との両立に男性も女性も当事者意識を持てば、社会が変わる。意識を変えるには体験するのが一番」と考えたからだ。

出産後も能力を発揮できる社会に

 自身はママではないが、中学生のころから、子ども好きが高じて、ベビーシッターをしていたため、子育て経験は豊富だ。「近所で生まれた赤ちゃんを預かってお世話をしたり、認可外保育園などでボランティア活動をしたりしていました」。大学時代には、知人の女性起業家に頼まれ、生後間もない赤ちゃんの世話をしながら仕事に同行したこともある。

 大学を卒業し、07年に大手IT企業へ就職した。営業成績はずば抜けていたのに、出産後は異動させられる先輩女性社員らの姿を目の当たりにした。「子育てしながら能力を発揮して、働き続けられる環境がない。声を上げなければ」。50人いた同期に呼びかけて賛同は得られたものの、一緒に行動しようという人はいなかった。「出産、育児はいずれ自分も関わるのに、当事者意識が薄いことに危機感を持ちました」

 そこで考えたのが、子育て世帯で学生がインターンをする事業。起業して、大学に働きかけたところ、授業にも採用され、これまでに1000人を超える学生が参加。いまはインターンの枠を若手社員や管理職向けにも広げ、企業の両立支援をサポートする事業も展開している。

社会起業家を目指す女性たち

 企業活動を通して社会の課題を解決しようとする起業家は社会起業家と呼ばれる。堀江さんは「身の回りの課題に気づき、社会起業家を目指す女性が増えてきた」と話す。

 総務省の17年の「就業構造基本調査」によると、起業者数は477万1000人と12年と比べて36万7000人減ったのに、女性に限ると5000人増えて92万2000人になった。起業者全体に占める割合も19・3%と1・4ポイント上昇している。

 16年に女性活躍推進法が施行され、出産後も働ける環境は徐々に整いつつある。

 しかし、「制度を充実させるだけでは十分とは言えない」と堀江さんは考える。研修で企業を回ると、いまだ「ひとごと」の管理職が目立つからだ。子どもが病気の時に休めるか、復職面談の言葉のかけ方でどんな気持ちになるか。スリールの研修では立場を変えて「女性社員がどんなモヤモヤを抱えているか」を管理職に疑似体験してもらう。「相手の気持ちを知るには、体験しないとわかりません」

 ひとごとの壁を壊して、社会に共感が広がるまで堀江さんは挑戦し続けるつもりだ。

(読売新聞生活部 大郷秀爾)

(おわり)