酪農経営 もっと女性参加を

働く女子未来形(2)

「寒さに弱い子牛には上着を着せています。体調をよく見てあげることも大事な仕事」(北海道広尾町で)

「サミット」実行委員長

砂子田円佳さん(36)酪農家

 北海道広尾町の牧場で、子牛が牧場主の砂子田円佳すなこだまどかさん(36)を見つけて小屋から飛び出してきた。乳牛約100頭を飼育して朝夕に搾乳している。つぶさに顔付きなどを観察して、人工授精のタイミングを探り、繁殖もさせる。「酪農は女性に向く仕事。乳牛も雌ですし、女同士、変化に敏感になれる」と笑った。

 2017年から北海道で開催している「酪農女性サミット」の実行委員長を2回連続で務めた。昨年は約240人が沖縄や九州からも集って、悩みを話し合い、2日間にわたって盛り上がった。

 農林水産省によると、2015年の酪農従事者4万1282人のうち、女性の割合は42%の1万7291人。女性経営者に限ると2・5%にすぎない。農業全体でも女性経営者は6・7%。農業経営はいまだ男性中心社会だ。

 そんな中で、仲間と酪農サミットを開催したのは、自身が女性のネットワークに助けられた経験があるからだ。

町第1号の女性経営者、孤軍奮闘

 酪農一家の次女で「牛の一生に寄り添うのもいいな」と、帯広畜産大別科へ。卒業後にカナダの牧場で2年半研修生として学んだ。そこでは、女性が経営者として地域の男性経営者と肩を並べていた。

 「おしゃれを忘れないかっこいいボス。日本では、お父さんの言うことを聞くだけの奥さんやお嫁さんが多かったので、こんなふうに働けるんだって驚いた」と振り返る。

 帰国して24歳で、実家が設けた第2牧場を任され、町第1号の女性経営者となった。父親から金を借り、牛30頭を購入。高校時代のあだ名「マドリン」を社名にした。

 しかし、周囲からは「小娘に何が出来る」「すぐ逃げるに違いない」と陰口をたたかれた。寝る間も惜しんで孤軍奮闘したが、経験不足から子牛を死なせるなど、悔し涙を流した日は数え切れない。支えてくれたのは、近所の牧場主の妻たちだった。「よくやってるよ」「ご飯行こう」。互いに愚痴を言い合ううちに気が晴れ、力が湧いた。

 そんな経験から29歳の時、農業関係で働く女性の会「SAKURA会」を発足。「職場や仲間に恵まれず、一人で苦しむ女性は少なくない。一緒におしゃべりするうちに、もう一踏ん張りしてみようと思ってもらえたら」。年1度の1泊旅行が活動の柱で、昨年は59人が参加。町の酪農女性のグループにも所属する。そのつながりからサミットの実行委員長を任された。

女性の経営参画で利益増

 日本政策金融公庫の16年調査によると、女性が経営に関わる農家と、関わらない農家では、関わる農家の方が経常利益の増加率が70ポイント以上高かった。前例にとらわれない発想力やきめ細かさが、収益性の向上につながったようだ。

 砂子田さんは、経営に携わる女性がもっと増えればと願う。「勉強する必要もあるし、責任も重いけれど、仕事がより面白くなって自信がつく。楽しそうに働く女性が増えれば酪農の魅力も高まるはず」

 3年前に結婚し、今は夫と年間678トンの牛乳を隣町のチーズ工場に出荷する。「自分の町でとれた牛乳を子どもたちに飲んでほしくて」と、いつか町の牛乳をブランド化するのが夢だ。「地域や男性たちに理解を求めつつ、酪農女性を元気にする活動を続けたい」と力を込めた。

(読売新聞生活部 板東玲子)