被害者の9割が女性…DVから逃れるためにすべきこと

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

 男性歌謡グループ・純烈のメンバーの一人が、交際していた女性に暴力をふるったり、女性の預金を使い込んだりしたことが明らかになり、グループ脱退、芸能界からの引退を余儀なくされました。2007年のグループ結成以来、スーパー銭湯でのイベントなど地道な活動によって徐々に人気を拡大し、昨年末には念願のNHK紅白歌合戦初出場。注目度がさらに高まった矢先の不祥事だけに、大きな驚きと失望を抱いたファンも多かったことでしょう。

 配偶者や恋人などへの暴力行為は「ドメスティック・バイオレンス(DV)」と呼ばれ、被害状況などによっては犯罪が成立する場合があります。

 警察庁の調査(2016年)によると、配偶者間(内縁を含む)で起きた犯罪の検挙数は6849件。殺人が158件、傷害が2659件、暴行が4032件となっています。このうち、女性が被害者になった事件は全体の約92%に上っています。

配偶者のお金を使い込んでも罪にならない!?

 交際女性のお金を使い込むと、窃盗罪が成立して、懲役刑や禁錮刑など処罰の対象になる可能性があります。ところが、使い込んだ相手が配偶者の場合は、窃盗罪は成立しますが、処罰されません。窃盗罪以外にも、不動産侵奪や詐欺、恐喝、横領といった罪や、これらの未遂罪についても同様です。

 法律の世界には「法は家庭に入らず」ということわざがあります。これらの犯罪が一定の親族間で行われた場合には、国家が干渉せず、親族間の自律に委ねるべきだという理由から、刑法では「その刑を免除する」(244条1項)とされているのです。しかし、配偶者や親族の間でも、身体を侵害する暴行、傷害といった犯罪は成立しますから、暴行や脅迫などの手段でお金やモノを奪い取った場合には強盗罪が成立します。

 配偶者間(内縁を含む)であっても、財産は独立しているのが原則です。つまり、各人の財産は各人に帰属するものです。したがって、あなた自身が稼いで得たお金はたとえ配偶者であったとしてもいたずらに費消されるべきではありません。

 そんな心配があるときは、「借用書」をきちんと書いてもらうとか、相手が使ったお金を日々メモするなどして、後日の紛争に備えることをおすすめします。世知辛いアドバイスですが、心の片隅にでも置いておくべきでしょう。

警察や支援センターに相談を

 話をDVに戻しましょう。全国の自治体が設置する「配偶者暴力相談支援センター」に寄せられたDVの相談件数は、15年度に11万1172件で過去最高となりました。16年度、17年度は、これより少ないものの、10万件を超えています。また、警察に寄せられたDVに関する相談等件数も年々増え、17年には7万2455件に達しています。前述のような犯罪として検挙されるケースはほんの一握りで、それよりはるかに多くの人たちがDV被害に悩まされていることが分かります。

 DVに悩んでいる人は、「配偶者暴力防止法」に基づき、保護命令を地方裁判所に申し立てることができます。これは、被害者である配偶者などに加害者が接近することを禁止する命令などを裁判所に出してもらえる手続きです。

 申し立ての手続きは、ひな型のある書類に記入するだけで済むので、一般の人にも使いやすいと思います。配偶者のDVに悩んで離婚を希望する人の中には、自ら手続きをして保護命令を出してもらうことで、まずは相手から逃れ、その後、弁護士に離婚調停(離婚訴訟)を依頼する人もたくさんいます。ただ、DVの被害申告が多いわりには保護命令の申立件数は毎年3000件程度にとどまっています。まだまだこの手続きが必要な方々に知られていないのではないでしょうか。

 DVに遭ったら、警察や配偶者暴力相談支援センターに迷わず相談に行ってください。DVの被害者の中には「暴力を受けるのは自分が悪いから」と考えてしまう人が多いのも事実です。しかし、暴力を振るう正当性など、誰にもありません。あなたの心と体は、守られるべきものなのです。一方、加害者の側も、「心のケア」が必要なことが少なくありません。加害者に加害の認識がない場合も多く見られます。このような時、素人が加害者に「話せばわかる」と思って努力してみても、簡単に解決できるような問題ではないのです。

 DVは、被害者も加害者もケアを必要とする事案と言えます。問題を解決するには、「相手に直接立ち向かう」ことだけが方法ではありません。時には「逃げる」ことも解決につながります。「逃げる」ことも視野に入れつつ、最終的には被害者の方が平穏な暮らしを取り戻してくれたらと思います。

【あわせて読みたい】
トラブル続発…美容整形で痛い目に遭わないために
表参道に児童相談所建設計画…反対の声に思うこと
性犯罪に消えない誤解……被害女性が立ち上がるために
同性婚をした弁護士仲間に思うこと

三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。