活動休止へ…嵐が平成の時代にもたらしたもの

News&Column

記者会見で活動休止を表明した「嵐」の(左から)相葉雅紀さん、松本潤さん、大野智さん、櫻井翔さん、二宮和也さん

 人気アイドルグループ・嵐が、2020年12月末で活動を休止することを明らかにしました。読売新聞の掲示板「発言小町」にも、「芸能人の記者会見なのに感動しました」(さばかん干しさん)という投稿や、50代男性からファンクラブ入会に関して「躊躇している場合ではない!」といった書き込みがありました。熱烈なジャニーズファンであり、読売新聞で長年、ジャニーズのアイドルの取材に当たってきた山村翠記者が、嵐への思いをつづりました。

衝撃的ニュースも「想定内」

 1月27日、衝撃的なニュースが駆けめぐりました。ジャニーズファン歴20年以上の私は、大みそかに開催されたコンサート「ジャニーズカウントダウン2018-2019」でタッキー&翼の旅立ちを見送ったばかり。それからまだ1か月もたっていないのに、こんなに大きなニュースが……。

 「受け止められない」「嵐は永遠だと思っていたのに」「ショックすぎて、明日仕事に行きたくない」。LINEやツイッターでは、ファン仲間のそんなやり取りが大変な勢いで行き交いました。「ジャニヲタあるある」などの著者で、ジャニーズ応援歴20年以上のみきーるさんは、「毎年コンサートを開き、コンスタントにCDをリリースするなど精力的に活動を続けてきた嵐。当たり前のようにそこにいた存在がなくなることの衝撃は大きい」と打ち明けました。

 その一方、「やっぱりか」と思う自分もいました。

 昨年12月、東京、札幌、名古屋、大阪、福岡の5大ドーム全50公演、総動員数237万5000人という、国内史上最大規模のツアーを行うことが発表されました。ファンと嵐が会える機会をこんなに設けてくれた太っ腹な5人に感謝しつつ、この壮大なツアーを終えた後、グループが大きな転換期を迎えてしまうのではないかと、胸がざわつきました。その嫌な予感が、当たってしまったわけです。

 想定内とは言っても、いざ現実として突きつけられ、喪失感が大きく、心は荒れ模様です。シャッフルにしている車のオーディオから流れたのは、名曲「Still」。

 「これは別れではない 出逢いたちとのまた新たな始まり

 嵐のコンサートのために上海まで遠征したり、嵐を通じて友人ができたり、嵐が出演するスペシャルイベントに当選するため対象商品を食べまくったり……。いろいろな思い出が走馬灯のように浮かび、涙が止まらなくなりました。

「嵐流民主主義」

 「ねえねえ、嵐って仲悪くなったの?」。周囲からは興味本位の質問を浴びせられました。もちろん、悪意はありません。ただ、心の整理がついていない時点で、普段あまり嵐に熱量のない人から活動休止のことについて聞かれるのは、ファンとしては正直つらい。こうした行為は、ツイッターなどでは「ジャニーズハラスメント(略してジャニハラ)」と呼ばれているようですが。

 「嵐は民主主義」。27日夜の活動休止を説明する5人の会見を見て、二宮和也さんが以前テレビ番組で発言した、この言葉が思い浮かびました。全員が納得するまで丁寧に話し合いを重ねた彼らのプロセスは、「嵐流民主主義」そのものではないでしょうか。

 会見では、一つ一つの質問に真摯しんしに向き合う5人の誠実さに誇らしくなりました。特に、「無責任では?」という質問に対して、すかさず櫻井翔さんが「2年間近くの期間をかけて、感謝の思いを伝えていく期間を設定した、これが我々の誠意。たくさんのパフォーマンスを見てもらい、その姿勢と行動をもって、果たして無責任かどうか、判断を委ねたい」と回答。二宮さんは「もしリーダーが悪者に見えるのであれば、我々の力不足」と続け、嵐の絆を見せつけました。

 会見では冗談を交えつつ笑顔を見せる場面もあり、仲が良く、ほっこりするいつもの嵐がそこにいました。「嵐のこと、ますます好きになった」。活動休止という残念な知らせにもかかわらず、会見後は多幸感に包まれました。

ファンに青春捧げる

 記者として今回の発表をどう見るか。しっかりと話し合いを重ね、改めて仲の良さを印象づけことに加え、ファンクラブ会員向けサイトで活動休止を発表してから速やかに会見を開いた点、謝罪や不祥事を連想させるダークなスーツではなく、ベージュやピンクといった堅苦しくないジャケット姿で会見に臨んだ点なども、賢明だったと思います。

 会見での説明によると、活動休止は17年6月から話し合っていたとのこと。それまで、そんなことはファンに微塵みじんも感じさせず、素晴らしいパフォーマンスを提供し続けた5人のプロ意識の高さにも「天晴あっぱれ」という言葉しか思い浮かびません。今回公表したことで、5人は少し肩の荷が下りたのではないでしょうか。

 会見で見せた笑顔の下で、5人は満身創痍そういかもしれないとも思いました。バラエティー番組やドラマに絶え間なく出演し、最新技術を駆使した華やかなコンサートを毎年実施するなど、あの手この手でファンを楽しませ、トップを走り続けることの労力は並大抵のことではありません。絶対的な人気を得た一方、彼らが犠牲にした時間、自由、プライバシーを想像すると、大野智さんが「一回、自由になりたい」と感じたのもうなずけます。ファンを幸せにするため、20年間、彼らは青春をささげていたのです。もしかしたら解散という選択肢もあり得たかもしれませんが、活動休止という着地点に落ち着きました。そこにも、ファンを思ったゆえの、最大級の優しさが表れています。

 嵐の活動をいったん閉じることを切り出したという大野さんは、昨年11月に38歳になりました。昨年、関ジャニ∞を脱退した渋谷すばるさん、裏方の仕事に専念することになった滝沢秀明さんも30代後半。それぞれ事情は違えども、これまでの人生を振り返り、これからどう生きていきたいかを考える年齢なのかもしれません。

 アイドルである以前に、一人の人間。確かにそうですが、レギュラー番組やCM契約といった多方面への影響力の大きさを考えると、活動休止まで2年という時間を設けたのは現実的な判断だったと思います。

時代が味方し、「国民的グループ」に

 そもそも、嵐がこれだけ国民的グループに成長した背景として、5人が魅力的だったことはもちろん、「時代が味方した」という点もあると考えます。嵐の人気が上昇した07年頃は、ちょうど「草食男子」という言葉がもてはやされ始めた時期。けんかをしたことがない、「俺が、俺が」と必要以上にでしゃばらない、真面目な仕事ぶり、互いを尊重する、親近感や穏やかさを感じる――。そんな5人と、社会の空気感が合致したのではないでしょうか。

 また、嵐が駆け抜けた平成という時代は、災害が多発し、景気は低迷、社会に閉塞感が漂うなど、どちらかと言うと、ネガティブな総括が目立ちます。

 そんな中、嵐5人の癒やしや「緩さ」を、疲れた日本人が必要としたのでしょう。また、嵐のシングル曲もシリアスというより、「Happiness」「サクラ咲ケ」「GUTS!」などチアフルで明るいものが多く、幅広い世代を元気づけてきました。

 シングルで「We can make it!」という曲があります。その中で、櫻井さんが「僕はただただ黙々とDREAMと書いて『目標』と読む」と歌っています。私自身、何度彼らの曲に助けられてきたことでしょう。

 また、11年に東日本大震災を受けたチャリティーイベントを初開催し、15年には宮城県で復興支援コンサートを行うなど、嵐の5人は自分たちの置かれた立場を常に理解し、行動してきたように思います。こうした人々に寄り添う姿勢が、彼らの人気を不動のものにしました。

ジャニーズ、世代交代への「荒療治」

 嵐という大きな屋台骨を失うジャニーズ事務所にとっても、重要なターニングポイントを迎えるのは言うまでもありません。

 09年に行われた嵐のデビュー10周年コンサート。その時、嵐は既に大勢に支持されるモンスターグループでした。そして、デビュー20周年を迎えた今も、日本のトップ男性アイドル=嵐という構図は変わっていません。

 5人の存在があまりにも大きく、「NEXT嵐」になり得るジャニーズの若手タレントがなかなか見当たらないことも事実です。嵐ほど安定感やバランス感覚に優れ、老若男女に支持される男性アイドルは二度と現れないのではとさえ思います。世代交代、新陳代謝を図るという側面では、嵐が活動休止するという「荒療治」しかないのかもしれません。

 嵐の次を担うのは既にデビューしている若手グループなのか、裏方に転じた滝沢さんが「育成に力を入れる」としているジャニーズJr.の誰かになるのか。それとも、ジャニーズ事務所自体の勢いが失速するのか。それはまだ分かりませんが、ジャニーズの若手タレントたちには「事務所の看板は自分たちが担う」というガッツを持ち、今まで以上に貪欲に活動に取り組んでほしいと願います。

 今回の報道を受け、04年に出演した24時間テレビで相葉雅紀さんがメンバーに宛てた手紙を読むシーンを見返しました。「俺らがいつも口をそろえて言ってる トップになりたいっていう夢 絶対かなえようね」

 この手紙が披露された時は、人気絶頂期での幕引きを誰が想像したでしょうか。一昔前のアイドルはもっと短命で、人気が下降線をたどった時などに歩みを止めるケースがほとんどでした。解散または活動休止の理由も、どこかフワッとしていたことも少なくありません。しかし、第一線で活躍する中で活動休止を発表し、なおかつその理由を明確に説明した嵐は、引き際の新しい形をみせてくれました。

 嵐という日常の一部がなくなることの悲しさ、「お疲れさまでした、ありがとう」とねぎらいたい気持ち。アラシック(嵐ファンを意味する造語)の皆さんは、いろいろな気持ちが入り交じっていることと察します。

 意味深なフレーズをちりばめ、嵐の飛躍を予言する「COOL&SOUL」というラップ曲があります。いつか復活したら、櫻井さんは「あぁ、(活動休止した)〇年前に話は遡るんだけどさ」なんてラップをあらたに書いてくれるでしょうか(〇にどんな数字が入るかは、まだ分かりませんが……)。

 復活を期待しつつ、「アイドルははかない。いつか突然消えてしまうから、今、目の前にいるアイドルを全力で応援する」。そんなことを思いました。

【合わせて読みたい】
長瀬智也さん 大企業と戦う2代目社長を熱演
SMAPも…迎えた「人生の転機」潔い転職は是か非か?
堂本光一さん、井上芳雄さん シェイクスピア劇で“夢の共演”

【発言小町のトピックス】 嵐の記者会見をみて
嵐の活動休止に関して
ライブ応募について嵐ファンの方や皆様にご意見お伺いしたいです