電車内での化粧はアリ?なし?海外では

サンドラがみる女の生き方

 日本では、電車の中で化粧をする女性のマナーがしばしば話題になります。掲示板サイト「発言小町」にも「最強!電車内メイク猛者」というトピックがあり、電車内で器用に二重まぶたを作っている女性の様子が書かれています。このトピの女性のように、ハサミやつけまつげ、ビューラーなど様々な化粧グッズを用いて電車移動中に大変身を遂げる人がいます。面白いのは、移動時間が長ければ長いほど、変身の過程というか、顔を作りこむ過程が詳細に見られることです。

電車内での化粧は手先が器用な証拠?!

 私も電車が空いている時間帯に長めの移動をする際に、上記のような光景を見かけることがあります。しかし、私自身は電車内でメイクをしたことはありません。手先があまり器用ではないため、揺れる電車の中で化粧ポーチを膝の上に置いて、ポーチから化粧品を取り出す自分を想像するだけで、変な汗が出てきます。というのは、電車が揺れた拍子にポーチ内の化粧品が床に散乱してしまうという大惨事を想像してしまうからです。

 そんなこともあり、電車内で化粧をしている女性に関しては「器用だなあ」という印象しかありません。でも世間では、電車内での化粧は大変評判が悪く、「電車内での化粧はマナー違反」という声が多いようです。現に、私もよく「ニッポンの電車内での化粧について、どう思いますか?」と聞かれます。「外国の視点から見て、どうですか?」とも。

化粧が義務だから電車で化粧?

 私自身も興味があり、ドイツ人の女友達に「ニッポンの電車内での化粧について、どう思うか」と聞いてみたところ、「そこまでやるの?」という声が多かったです。「そこまでやるの?」とは、「電車の中に大量の化粧品を持ち込んで、それらを広げてまで、化粧ってやらないといけないものなの?」「別にノーメイクでいいのでは?」という意味です。面白かったのは、「日本は通勤時間が長いから、移動の時間を有効活用したいのも分かる」という意見があったこと。ある意味、ドイツ的というか合理的な考え方かもしれません。ニッポンの電車内での化粧については、マナー違反というよりも、ただ単純に「なぜ、そこまでして化粧をしなければならないのか」を疑問に思っている様子でした。

 前回の「化粧はマナー!? ヨーロッパ人女性が化粧をしない理由」で書いたように、ニッポンでは欧州と違い、化粧がいわば女性の義務のようにとらえられることもあると考えると、電車内で化粧をする人が出てきても、それは自然な流れなのかもしれません。現に、女性は化粧をしなければいけないというプレッシャーがないドイツでは、電車内で化粧をする姿は見かけません。

日本にかわいい化粧ポーチがたくさんある理由

 さて、朝、出勤する前に「家」で化粧をする場合、早めに起きなければいけないわけですが、日本では毎朝の化粧が10分程度の人もいれば、化粧のために毎日1時間早く起きている人もいるようです。前述のドイツ人女性にその話をしたら「1時間早く起きるのなら、化粧をするのではなく、毎朝1時間ぐらい散歩をしたほうが気持ちいい」とのことでした。

 家でメイクをしても、一日中、外に出ている場合は、途中で化粧直しをするため、ある程度の化粧品を毎日持ち運ばなくてはなりません。そこで、日本の多くの女性が化粧品をポーチなどに入れ、さらにそれをバッグに入れて毎日持ち歩いています。そのため、日本の雑貨屋やデパートには様々なタイプのかわいい「化粧ポーチ」が売られています。逆にドイツのデパートに行くと、洗面用具などを入れる旅行用の大きいサイズのポーチはよく見かけますが、日本で売られているような小さいタイプのものはあまり見かけません。そもそもヨーロッパの女性は、ポーチはもとより、化粧品を持ち歩く習慣はあまりありません。

ヨーロッパでモテるのは、フットワークが軽い女性

 ドイツの街を歩いていると、「手ぶら」の女性が多いです。サイフや鍵、リップクリームなど最小限のものを、服やジャケットのポケットに入れ、あえてバッグは持たないのです。特に、遊びに行く時はこの傾向が強いかもしれません。

 たとえば、ドイツのミュンヘンで毎年開催されているビールの祭典「オクトーバーフェスト」では、ビールが飲めるテントのほかに、ジェットコースターなど遊園地にあるような乗り物も多数あります。こういった場で「乗り物に乗ろう」となった時に、バッグを持っていなければ、パッと乗れるわけです。ビアホールで盛り上がると、みんなでベンチの上に立って肩を組んで踊ったりもしますが、そんな時もバッグがないほうが楽しめます。まあ、オクトーバーフェストはあくまでも一つの例ですけど、要は女性も余計な荷物はないほうが身軽だということなのです。

 もしかしたら、「ドイツでは、フットワークが軽い女性がモテる」ということも関係しているのかもしれません。外出時に限らず、「化粧に時間がかかる女性」は、ヨーロッパではあまり男性に喜ばれません。もちろん、だからといって男性に合わせる必要はありませんが、発言小町に男性側から「3回目のデートで『すっぴん』はありですか?」というようなトピが立てられる日本とは、かなり状況が違うといえるでしょう。

 電車内での化粧に話を戻すと……ビューラーなども使う場合、揺れる電車内での化粧は「危ない」という声もありますが、批判の対象となっているのは、どちらかといえば「危険性」というよりも、「人前での化粧は、女としてどうかと思う」ということだと思います。そこには「女たるもの、きれいになる過程を他人に見せるべきではない」「みっともない」という感覚があるのだと思います。「他人からどう見られているか」を気にする日本人だからこそ、「みっともない」ことは「マナー違反」であるという感覚につながっているのではないでしょうか。

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Profile プロフィル

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/