リアルに交流できる スナックは「婚活」の場に

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「縁結びママ」としてカップルを温かく見守る浦田さん(東京・新橋の「aeru」で)

 路地裏や雑居ビルにひっそりとたたずむ。そんなスナックが今、見直されているらしい。インターネット時代だからこそ、ちょっと懐かしいリアルな交流が人を引きつけ、進化しているという。扉の向こうをのぞいてみた。

ママが縁結び カウンターはマッチング席

 東京・新橋のビル2階にあるスナック「aeru(アエル)」。10人も入ればいっぱいの店で、カウンターの2席に公務員の男性(33)と幼稚園教諭の女性(30)が並んで話していた。「クリスマスはどうする?」

 2012年に開店したここは「婚活スナック」。ママの浦田みかさん(48)は「カウンターはマッチング席。結婚相手を探す方に、気になる人を紹介します」と話す。

 通常営業もしているが、オプションで会費(1万800円)を払うと、会員登録ができる。個人名を明かさずに、趣味や出身地など会員の自己紹介を書いたファイルが店にあり、好みの人がいれば、先方の意向を確認して、浦田さんが双方を店で引き合わせる。この日のカップルも知人の紹介などで来店して知り合った。

 飲食店経営や結婚紹介所勤務の経験がある浦田さんは、「結婚したいのに相手が見つからない」「結婚相談所に頼むのはハードルが高い」と悩みを打ち明けられる機会が多かったという。そこで婚活スナックを思い付いた。今まで1800人が登録、50組以上が結婚したそうだ。「ママがいれば、初対面でも安心できる。お酒とカラオケでうち解けて人柄も出やすい。ママの恋愛指南もお付けしますよ」

「スナガール」「スナ女」からの転身

 年配の男性が集うイメージの強いスナックだが、最近は若い女性も通う。彼女らを「スナガール」や「スナ女」と呼ぶ言葉もあるほどだ。

 東京都内で働く太田幸枝さん(28)は、5年前、取引先の人に連れられてスナックデビュー。知らない人とも気軽に会話を交わせる雰囲気に魅了された。昼は仕事でパソコンに向かうことが多いため、夜は人との会話が恋しくなるのだとか。「『ただいま』って感じでスナックに足を運び、素の自分に戻る。後は家に帰って寝るだけです」

ビールは1杯300円。「泡にこだわって注いでいます」と西田さん(東京都品川区の「アヤノヤ」で)=今野絵里撮影

 スナック好きが高じて店を開いた女性も。東京都の西田彩乃さん(30)は、起業して16年に東京都品川区で「宅飲み酒場アヤノヤ」を開いた。資金はインターネットで募る「クラウドファンディング」を使った。チャージを取らず、「みんなのリビングのように毎日気軽に来てほしい。スナックから他人同士でコミュニティーが育っていくのが楽しい」とほほ笑む。 

本当の姿でつきあえる「リアルSNS」として

 なぜ若い世代がスナックに通うのだろう。

 15年に結成した「スナック研究会」代表で、首都大学東京教授の谷口功一さんは「スナックは収入や社会的立場にかかわらずつきあえる。フラットな関係を志向する若者にとって親近感がある」と分析する。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)になじむ若い世代に「リアルSNSの世界としてスナックが再発見された」。

 谷口さんたちも、そんなスナックの効用を見直そうと提言。法学や文学、思想史の研究者らが集まって、夜な夜な議論した成果を17年に「スナック研究序説 日本の夜の公共圏」(白水社)にまとめた。

 人をつなぐスナックは、SNSの最先端なのかもしれない。

スナックの定義とは

 スナックは、食品衛生法では飲食店、風俗営業法では深夜営業すれば広義の風俗店にあたるなど明確な定義はない。

 スナック研究会では「経営者である『ママ』がカウンター越しに接客して酒と会話を提供する店」としている。店にはだいたいカラオケがあり、キープしたボトルを飲んで、料金は3000円程度が標準のようだ。

 研究会が電話帳で「スナック」を自称する全国の飲食店を計算したところ、2013年は10万軒だったが、17年には7万軒に減った。雑誌で特集されるなど注目度は高まっているが、軒数は減少傾向にあるという。

(読売新聞生活部 斉藤保)