「サウナ」多様に…イメージ一新で女性客増加

News&Column

写真はイメージ

愛好家「サウナー」で熱気

 100度近い蒸し暑い部屋で我慢比べするオジサンたち――そんなイメージの強いサウナが変わりつつある。低温の施設や仕事のできるスペースを併設したものなど多様化。若者や女性の間にも「サウナー」と呼ばれる愛好家が増えてきた。熱気あふれる現場をのぞいた。

 東京都内の大学に勤務する斉藤みかさんは、自他共に認める「サウナー」だ。仕事から帰宅した後、近所に数か所ある銭湯にほぼ毎日出向く。サウナ室で体を温めてから水風呂に入るのを数回繰り返し、1時間ほど楽しむ。「体がスッキリするだけでなく、頭も切り替えられます」

 斉藤さんは3年ほど前からツイッターでサウナにまつわる投稿を続けている。「最近は女性サウナーの口コミ投稿が増えてきた。休日に一緒に出かけることもあります」と人気の広がりを感じている。

 日本でサウナ施設が誕生したのは1950~60年代。64年の東京五輪で選手村にサウナが設けられて話題になり、その後、一気に増えたという。ただ、一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所(日本サウナ総研)の原山壮太さんは、「カプセルホテルに併設されるなど男性専用の施設が多く、中高年男性向けのイメージが強まった」と話す。

 だが最近は、ジェットバスなど様々な風呂を備えた「スーパー銭湯」が家族の外出先として注目され、そこでサウナを利用する女性が目立ってきた。70~80度と低めのサウナも増え、高熱の焼け石に水をかけて蒸気を発生させ、発汗を促す「ロウリュ」、タオルで熱風を浴びせる「アウフグース」などのサービスも登場。人気が高まっている。

グループ会社内に同好会結成

 企業にも「サウナー」はいる。コクヨではグループ会社内でサウナ部が結成され、37人のメンバーが各自行きつけの施設を互いに紹介して巡るなどしている。サウナ部長でコクヨエンジニアリング&テクノロジー(東京)の川田直樹さんは、「役職や所属に関係なく新しいつながりができる」と話す。

 インターネットメディアのTABI―LABO(タビラボ、東京)は昨年8月から、サウナを利用する社員に料金の一部を助成しており、社員の約8割が利用する。「オン・オフの切り替えができ、コミュニケーションも活発になった。仕事にも良い影響がある」という。

サウナ室を模したコワーキングスペースの会議室。館内着のまま会議もできる(スカイスパYOKOHAMA提供)

仕事スペース併設

 ビジネス利用を当て込むのは、横浜駅近くのビルにあるサウナ「スカイスパYOKOHAMA」。11月、レストランの一角を改装し、仕事ができる「コワーキングスペース」を開設した。サウナ室を模したミニ会議室やパソコン画面を投影できるスクリーンもあり、「サウナ、時々仕事」という働き方が可能になった。

 もっとも、老朽化などからサウナの施設数は減少傾向にある。利用者の裾野拡大につなげようと、若者に人気の東京・下北沢で2016年12月、屋外でのサウナイベントが開かれた。サウナのできるテントとプールを設置し、音楽も合わせて新しい楽しみ方を提案して、若い世代にアピールした。

 イベントをプロデュースしたのは、サウナ好きのためのファッションブランド「TTNE PRO SAUNNER」を手がける秋山大輔さん。「イメージを一新して、ブームを盛り上げたい」と意気込む。

2016年12月に開かれたイベントでは、ドーム型のテントサウナが登場した(東京・下北沢で)(秋山さん提供)

 日本サウナ総研の原山さんは「日本には蒸気浴の歴史もあり、文化としても、もっとアピールしていきたい」と話している。

体調に注意して楽しむ

 サウナを楽しむ際は、体調に気をつけるとともに、マナーにも注意したい。

 胸が締め付けられるように感じる、熱があるなど調子が悪いときは、当然ながら利用はご法度だ。温泉入浴指導員の資格を持つ国際医療福祉大学教授の一石英一郎さんは、「飲酒後や食事の直後、長旅の後も利用を控えてほしい」と注意を促す。

 先に体を洗ってから利用する。休憩も取るようにし、利用中に頭痛やめまい、立ちくらみがしたり、手足のしびれや息苦しさを感じたりしたら、無理せずサウナ室から出よう。

 美容サイトでサウナをテーマにした連載を持つ笹野美紀恵さんは、「利用前後に水分を十分とりましょう。炭酸水を持って行くのもお勧め。飲んでもいいし、温まった後に室外に出て、頭からかけてもすっきりします」と話す。

 サウナ室では、おしゃべりを楽しみたい人も、一人の時間を過ごしたい人もいる。公益社団法人日本サウナ・スパ協会常務理事の金憲碩きんけんせきさんは、利用時のマナーとして、▽座る場所は譲り合うなど、他人への配慮を心がける▽水風呂に入る前は汗を流す――などを呼びかけている。

 こうした点に気をつければ、後は自分なりに楽しんでいい。サウナ発祥の国、フィンランド大使館参事官のマルクス・コッコさんは「サウナに何分入る、それを何回繰り返すなど、決まった入り方はありません。体の声に耳を傾け、心地よい時間を過ごしてほしい」と話す。

水風呂試そうか

【取材を終えて】 地方支局に赴任中、仕事帰りなどにスーパー銭湯や日帰り温泉に立ち寄り、時にサウナも利用していた。「でも、水風呂に入ったことはありません」と今回の取材先に話すと、みな口をそろえて「もったいない!」。メインディッシュを食べていないのと同じだという。サウナの楽しみ方は人それぞれだけど、これほど言われると気になってきた。年末年始の休みに家族でスーパー銭湯にでも出掛けて、「主菜」も試してみようかな。

(読売新聞生活部 内田淑子)