非常食、おいしく多彩に カフェで試食・歳暮などギフト用も

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災害時も温かいもの/スイーツ缶詰も

 災害などに備えた非常食が進化している。おいしくて味付けも多彩になり、スイーツも登場。避難生活が長期化しても、日常に近い食事を食べたいという要望が高まっていることが背景にあるようだ。

 災害時の拠点として、国と東京都が東京・有明に整備した東京臨海広域防災公園。園内の「そなえカフェ」では約100種類の非常食を販売。その場で食べることもできる。今月下旬、首都圏で社員食堂などを運営する会社の管理栄養士5人が、カフェで非常食を試食した。

 テーブルには、アルファ米のサケおにぎり、カルボナーラ風パスタ、ショウガ焼き、カップケーキなど。「パスタは思ったより柔らかい」「おにぎりのサケもいい香り」などと互いに感想を言い合った。初めて食べたという男性(36)は「想像以上においしい。普段と同じく温かいものを食べられるのがいい」と話した。

 富士経済の調査によると、非常食の国内市場規模は2016年に189億円。東日本大震災のあった11年の128億円から61億円増えた。防災への意識が高まり、国や自治体、企業が非常食の備蓄を進めたためとみられる。同社によると、被災時こそおいしいものや温かいもの、日常の食事に近いものが求められるようになってきたという。

 こうした声を受け、多彩な非常食の開発が進む。

 国分グループ(東京)が17年に発売した非常用缶詰セットには、トマトの玄米リゾット、かぼちゃの煮物、ごぼうとジャガイモの和風ポタージュに加え、ラム酒やブランデーをきかせたプリンが入っている。ポタージュは、付属の固形燃料で温められる。

 同社の担当者は「東日本大震災の被災者に聞いたところ、野菜や乳製品などを十分にとれなかったという声が多かった。セットの開発では、栄養の偏りがないよう考慮した」と話す。

 トーヨーフーズ(同)は15年、チーズケーキやガトーショコラなどスイーツの缶詰を発売。17年にはメープル、フルーツ、チョコレートの3種類のカップケーキも加えた。担当者は「おなかを満たすだけではなく、心の栄養という視点も必要」と強調する。

 デニッシュパンで有名なボローニャFC本社(同)は、07年に缶詰のデニッシュパンを開発。工場がある新潟県で04年に発生した新潟県中越地震で、非常食の重要性を認識。「災害時こそおいしいものを食べてほしいと考えた」と、担当者は開発の経緯を説明する。

 非常食の多様化は、一般家庭での備蓄を促そうという狙いもある。ミドリ安全(同)が、今年8月に行った調査では、全国の母親600人の53%が非常食を備えていなかった。「備えたいがつい忘れてしまう」という理由が29%と最多だった。

 東京聖栄大学教授の鈴木三枝さんは「ふだんの食事に非常食を取り入れる習慣をつけないと、購入に結びつかない」と指摘する。

 備蓄忘れへの対策として注目されているのが、非常食のギフトだ。防災用品の通販サイト「あんしんの殿堂防災館」を運営する相日防災(神奈川)によると、非常食セットを歳暮などで贈る人が増えているという。かつては縁起が悪いと思われていたが、最近は「思いやり」ととらえられるようになったという。担当者は「忙しく備蓄まで気が回らない時、非常食を贈られると、重要性に気づくことができます」と話す。

乾物などの伝統食も活用

 災害時の食事では、伝統的な保存食も活用できる。

 9月の北海道地震では道内のほぼ全域が停電。札幌市の主婦、高塚美智子さん(66)は、停電で冷蔵庫が使えない時、切り干し大根やちりめんじゃこをおかずにしたという。切り干し大根は水で戻してそばつゆをかけ、ちりめんじゃこは湯通しして臭みをとり大根おろしをかけて食べた。高塚さんは「保存食のありがたみがよく分かった」と振り返る。

 乾物の普及に取り組む一般社団法人ドライアンドピースはホームページで、乾物のレシピを紹介している。代表理事のサカイ優佳子さんと田平恵美さんは、「乾物はふだんの食事にも生かせる」とすすめる。

 今回、教えてもらったのが「切り干し大根とツナのあえ物」。加熱の必要はなく、水も包丁も使わずに作れる。

切り干し大根とツナのあえ物

 保存用ポリ袋に、切り干し大根15グラム、ツナ缶1個分(70グラム、ノンオイル、無塩)、塩昆布2グラム、種を除いた梅干し1個、ゴマ適量を入れ、よく混ぜる。ツナはノンオイルのほうが切り干し大根に水分が染みこむという。10~15分ほど置いたら食べごろ。シャキシャキとした食感で、ほどよい塩味。梅の酸味で箸が進む。塩気が少なければ、しょうゆを足すなどして味を調える。

 「避難が長引くと、なじみがない食べ物ばかりでは心が休まらない。いざという時のため、ふだんから乾物の使い方を知っておいて」とサカイさんは話している。

(読売新聞生活部 福島憲佑)