世界が不思議に思う「離婚しない」ニッポンの夫婦

サンドラがみる女の生き方

 きょう11月22日は「いい夫婦の日」です。その言葉通り、夫婦となった二人が互いに相手を思いやり、努力をしながら良い関係を築ければ一番いいのですが、様々な理由からそうもいかない夫婦の現実もあったりします。今回は、日本と海外を比べながら、夫婦関係のシビアな部分にスポットを当ててみたいと思います。

「旦那デスノート」は日本特有?

 以前、妻が夫への不満を吐き出す投稿サイト「旦那デスノート」というサイトが話題になりました。世の中には、夫婦関係を維持しながらも、夫に対する不満がマックスに達している女性も多いよう。タイトル通り、内容は過激で「モラハラ旦那、事故って即死すればいいのに」「浮気野郎、死ね死ね死ね」という直接的な表現のものもあれば、淡々と「きのうはあいつの歯ブラシで排水溝掃除。ボディタオルで風呂掃除。(中略)さて今日はどこを掃除しようかな♪♪」といったブラックなものまで登場します。

 これらは極端ではありますが、ニッポンでは意外にも「公の場で夫の悪口を言う」ことは市民権を得ている印象を受けます。昼下がりのファミレスには、夫の悪口や愚痴を言い合っている女性グループがいたりします。

 この手の不満は、自分の中で「ため込む」よりは「吐き出す」ほうが健全かもしれません。でも、それと同時に「そういえば、ドイツにはあまり旦那さんの悪口を言う女性はいないな」ということにも気付かされました。

 欧州人は普段あれだけ批判好きなのに不思議です。でもこれ、実は理由は簡単で、ドイツを含むヨーロッパの場合は、配偶者のことが嫌になったら、離婚を選ぶからなのです。よって、離婚直後に元配偶者の悪口を言っている人はよくいますし、離婚調停中に愚痴をこぼす人もいますが、「結婚生活を維持する気が100%あるにもかかわらず、夫の悪口を頻繁に言う女性」というのはあまり見かけません。

結婚生活は必ず維持しなければいけないもの?

 欧米人から見て不思議なのは、日本には実際に離婚をする夫婦もいる一方で、夫の悪口を言いつつも「離婚をするつもりは一切ない」女性が一定数いることです。夫の悪口を言うことでガス抜きはしても、それはあくまでも結婚生活の維持を前提にしたものであることも多いのです。「夫婦でいること」や「結婚しているという状態の維持」に全力を注いでいる印象です。「結婚していること」が女性にとって精神的な支えになっている場合もありますが、女性たちの話を聞くと、「金銭」や「子供」のことを考えて離婚を選ばないこともまた多いようです。

結婚後も「本能のままに恋をする」ヨーロッパの人々

 語弊があるかもしれませんが、ヨーロッパでは「本能のままに恋をする」女性が多いです。結婚前の恋愛をする時点から、日本よりも「条件」(男性の雇用形態や家族構成)なるものを取っ払った上で恋愛をしている女性が多くいます。相手の年収などの条件的なことよりも、「その男性個人と相性が良いかどうか」「男と女として互いにしっくりくるか」というようなものが日本よりも重要視されています。

 そして、「本能を大事にする」のは結婚後も変わりません。結婚後も夫婦が男と女として仲が良ければ、ラブラブですし、逆に愛がなくなれば、早い段階で離婚の方向に進む決断をして、新たな恋を見つける人が多いです。離婚のきっかけは日本と似たようなもので、浮気だったり、育児に関する食い違いだったりしますが、うまくいかなくなった際の切り替えは、欧州人のほうが早いかもしれません。

ヨーロッパには愛のない夫婦はいない?!

 ポジティブな見方をすると、離婚を恐れないということは、愛のない夫婦はいないということでもあります。なぜなら、愛がない男女は極論をいうと、すでに離婚済み、もしくは離婚調停中だからです。欧州人の一般的な感覚として、カップルにしても夫婦にしても「そこに愛がなければ関係性を維持する意味がない」というのが共通のコンセンサスです。

本能のまま生きるには経済的自立が必要

 先ほど、「うまくいかなくなった際の切り替えは、欧州人のほうが早いかもしれません」と書きましたが、たとえ子供がいてもそれが離婚を思いとどまる理由にならないのは、ヨーロッパの多くの国々では、離婚後も共同親権が当たり前であるという点も大きいです。離婚をしても、子供は父親と母親の両方と定期的に会えることから、「離婚=子供から父親を奪う」という発想にはならないのです。

 子供がいても本能のままに恋をする……というのはニッポンでは時に叩かれがちですが、ヨーロッパでは、何歳になっても、どういった立場であってもみんな堂々と恋をしています。「本能のまま恋をする」というと、「流されている」というような感覚を受けるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。経済的に自立している女性が多いため、「本能のまま恋をする」ことが可能なのかもしれません。もちろん、「本能のまま恋をする」が極端な方向にいってしまって、いわゆる「だめんず」に引っかかってしまう女性がいないわけではありませんが‥‥。

子供を産まなければ、結婚をする意味がない?!

 そんなこんなで、夫婦関係がうまくいかない場合は、欧州人のほうが離婚を躊躇ちゅうちょしないことが多いのは確かです。その一方で、ニッポンの夫婦が離婚を選ぶ理由に驚かされることもあります。

 掲示板サイト「発言小町」の過去のトピックを読むと、「結婚後に妻側の不妊がわかった」「結婚後に旦那側の不妊がわかった」という相談に対して、「子供がほしいのに、相手が原因で子供ができないのはつらいので、離婚したほうがよい」といったアドバイスがついたりもします。「子供」よりも「パートナー」(つまり、既婚女性の場合は夫)との関係を優先的に考える欧州的な考えからすると、「相手が不妊だから離婚を検討」はビックリ仰天な発想です。

 日本では無意識のうちに「家」を背負っている人が多いのかもしれません。そのため、子供が持てない可能性があるとわかったら、離婚という発想になるのだと想像します。

 50代や60代のカップルが結婚をしようとすると、日本では周りが「その年齢なら結婚ではなく、事実婚でもいいのでは?」とアドバイスすることがあります。そのアドバイスの背景にも、「子供を持てる年齢ではないのだから、結婚をする必要はない」という考えがあるように思います。

 年代を問わず、事実婚が多いヨーロッパですが、意外にも「子が持てないのなら事実婚」という考え方はないのでした。

離婚をしない夫婦は、不倫の温床?!

 近年、ニッポンではたびたび著名人の不倫が騒がれています。ひとつ思うのは、夫婦仲が悪いにもかかわらず、夫婦というものを続けていると、不倫の温床になるのではないかということです。それは「夫婦関係を清算して新しい恋」とはならずに、「夫婦関係を維持しながら恋をする」から不倫になってしまう、という点がひとつ。そして、ヨーロッパだと、別離や離婚で30代以上の人も定期的に恋愛市場や婚活市場に舞い戻ってくるのですが、日本の場合は、多くの人が離婚に踏み切らないため、30代以上の独身の人が自然な形で恋愛をしようとしても、周りは既婚者ばかり、という問題もまたあるのでした。

 「いい夫婦」でいるために、互いのことを思いやりながら良い関係を築いていくことが大事なのはいうまでもありません。でも、相手の意思が別のところにあると確認できたとき、その関係をスパッと解消をするのも、自分のため、相手のため、そして大げさなようですが「社会のため」なのかもしれません。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/