表参道に児童相談所建設計画…反対の声に思うこと

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

写真はイメージ

 東京都港区南青山(最寄り駅で言うと、東京メトロ・表参道駅です)に児童相談所を含む複合施設を建設する計画が持ち上がり、一部の住民が「街の雰囲気を壊す」「資産価値が下がるのでは」などと反対の声を上げているそうです。

 「南青山」「表参道」と言えば、都心の一等地であるだけでなく、女性に人気の高級ブランド店などが立ち並ぶ、都内有数のおしゃれスポットです。「その場所に、なぜ児童相談所が……」という疑問の声が起こったそうですが、私の第一印象は「地下鉄3路線使えるアクセス抜群の場所! なるほどなぁ」でした。こんな第一印象を持ったのは、私が弁護士として児童相談所には何度か行っていて、具体的なイメージを持っているからなのかもしれません(また今後も行くことがあるでしょう)。しかし、世間ではどれだけの人が児童相談所について知っているでしょうか…。

警察署も裁判所も“怖くない”

 児童相談所は、18歳未満の子どもが抱える様々な問題について、家庭や学校などからの相談に応じる児童福祉の専門機関です。子どもが抱える問題とは、たびたびニュースとして報じられる親からの虐待をはじめ、障害、非行、不登校など多岐にわたります。これらの問題について、児童福祉司や児童心理司など専門知識を持った職員が中心となって相談にのり、問題解決に向けて対応します。虐待であれば、子どもを一時的に保護したり、里親に委託したりといった措置を取ります。

 親の虐待などで児童相談所に一時保護された子どもには、必要があれば「子どもの手続代理人」として弁護士がつく場合があります。「子どもの手続代理人」は、家庭裁判所の調停・審判に参加する子どもが意見表明するのを援助し、子どもの最善の利益を実現する活動をする者です。私が児童相談所を訪れたのも、担当している子どもとの面談などのためでした。

 南青山で計画されている複合施設には、児童相談所のほか、生活が困窮したり、家庭内暴力を受けたりした母子が暮らす「母子生活支援施設」などが入り、14歳未満で法に違反した子ども(触法少年)が入所する可能性もあるといいます。そのため、一部の住民からは、治安の悪化を懸念する声も聞かれたそうです。

 しかし、このような施設が作られたところで、何か怖いこと、危険なことが起こるものでしょうか? 私は職業柄、警察署や検察庁、裁判所など、“何か起こりそうなところ”をたびたび訪れていますが、実際に怖い思いをしたことは今のところありません(そのため、先日、容疑者が弁護士接見後に面会室のアクリル板を破って警察署から逃走したという事件には大変驚きました。あの事件は例外中の例外…のはずです)。

 何が言いたいかというと、危険なことが起こる可能性のある場所は、むしろセキュリティーがしっかりしているから、実際にはそんなに怖いところではない、ということなのです。警察署も検察庁も裁判所も、もちろん児童相談所も、見た目の怖い人がうろうろしているなんてことは、ほとんどありません(裁判所は時々あります)。

 南青山・表参道が一等地なのは確かですが、京都での弁護士業務が長かった私に言わせると、京都地裁も京都家裁も最高に良い場所にありますよ。もちろん、治安が悪いなんてことはありません。だから、南青山のケースでも「治安が悪くなる」とか「街の雰囲気が壊れる」といった心配は当たっていないと考えます。

親の保護受けられない子どもは社会が守る

 近年、児童相談所の必要性は増す一方です。児童虐待に関する相談対応件数は、1990年度には全国で1101件だったのが、2017年度は13万3778件(速報値)と、爆発的に増えているのです。

 児童虐待は家庭という“密室”で行われるケースが多いため、発覚しにくいものです。相談件数が激増したのは、虐待する親が以前より増えたからではなく、地域住民や学校などの児童虐待に対する意識が高まり、虐待を疑った学校や近隣住民などが児童相談所に通報するケースが増加したからだとされています。こうした傾向は、親を選べない、親に逆らえない子どもたちにとっては吉報ではないでしょうか。

 そう。子どもは親を選べません。だから、親の保護を受けられない子どもたちは、社会が保護し、育てなければなりません。そのために、児童相談所が必要なのです。社会にとってこれほど重要な施設なのですから、「他人ごと」ではなく、自分のこととして捉えてみませんか。

 児童相談所設置に対する批判は、その背景、実態を知らないことから来るのではないでしょうか。知らないことは判断できません。まずは知りましょう。そしてそれから是非を考えましょう。

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三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。