不思議!『パパ』『ママ』と呼び合うニッポンの夫婦

サンドラが見る女の生き方

 ニッポンと海外の国を比べてみると、男女のあり方や恋愛の仕方、そして家庭のあり方などに様々な違いがあります。今月11月22日には「いい夫婦の日」もあるので、今月は、ニッポンと海外の夫婦関係にスポットを当ててみたいと思います。

結婚イコール子供を持つのは当たり前?

 最近は変わりつつあるものの、日本では「結婚すると、子供を持つ」ことが当たり前だと考えられているところがあり、子供を授かることへのプレッシャーが強いように感じます。たとえば、結婚式でも親戚が「二人の赤ちゃんを楽しみにしています!」と、当たり前のようにスピーチしていたりします。

 まあ、歴史的に見ると、世界の多くの国で「結婚=家庭を作り、子供を持つ」という流れはいわば当たり前だったので、無理もないかもしれませんが、この種の発言が今の時代にそぐわないのもまた確かです。

 冒頭の結婚式のように、口に出して「子供を持つように」と言われる場合もあれば、遠回しに子供を持つことを期待され、プレッシャーを感じている女性も多いようです。そして、いざ子供が生まれると、欧米のカップルよりも、ニッポンのカップルのほうが素早くパッと「男と女の感覚」から「子供を中心としたパパとママの感覚」に切り替える傾向があるように感じます。

配偶者を「ママ」「パパ」と呼ぶ不思議

 子供が生まれた後も、自分の妻または夫をファーストネームやニックネームで呼び続けることもありますが、子供が生まれてからは呼び方が「ママ」「パパ」に変わってしまうことが日本では多いようです。以前、あるバーベキューパーティーに参加したら、そこで「ママ!」と誰かを呼ぶ成人男性の姿があり、一瞬驚いたのですが、すぐに妻らしき女性が来たので、「ああ、なるほど」と思ったことがあります。

 その一方で「旦那が私のことを『ママー』って呼ぶんだけど、私はあんたのママじゃないから!」という怒りの声もよく聞きます。子供がお母さんのことを「ママ」と呼んでいるので、ついつられて妻のことをファーストネームではなく「ママ」と呼んでしまう‥‥というふうに取れなくもないですが、ここはもっと深い理由があるのではないかとも思うのです。

 というのは、ドイツを含むヨーロッパでは、父親が子供に対して「これは、ママがこう言ってたよ」などと、子供の前で「ママ」と言うのは普通ですが、子どもがその場にいなくても妻のことを「ママ」と呼ぶのは、今の時代、あまり一般的ではありません。やはり相手を呼ぶ時は、お付き合いしていた頃と同じ呼び方(つまり子供ができる前からの呼び方)のままであることが多いのです。それはファーストネームだったり、ニックネームだったりしますが、「ママ」「パパ」と言うのはまれです。

「ママ」という呼び方の背景にあるもの

 ニッポンで夫婦が「ママ」「パパ」と呼び合う背景には、一種の「照れ」があると感じることがあります。意識的なのか無意識的なのかはわかりませんが、「いい年した大人が、子供もいるのに、ファーストネームで呼び合うのはなんだか……」という照れのようにも感じるのです。

 どこまでが冗談で、どこからが本音なのかはわかりませんが、前に男性がテレビで「家庭とセックスは別」だとか「僕は家庭に恋愛を持ち込まない」と語っているのを見たことがあります。一部の男性は、この手の考え方がかっこいいという、いわば一昔前の男性の感覚を引きずっているのかもしれません。

 そして、こういった男性が妻を「ママ」と呼ぶのは、妙に納得してしまいます。妻を「ママ」と呼ぶ男性はどこか妻のことを、「個人」や「一人の女性」というよりも、完全に「お母さん役」に当てはめようとしているのかもしれません。

画像はイメージです。

 同時に自分も妻に甘えて、子供がお母さんにしてもらうように「色々いろいろとやってもらいたい」という願望も見てとれますが、これなどまさに、前述のような「旦那が私のことを『ママー』って呼ぶんだけど、私はあんたのママじゃないから!」と妻の怒りを買ってしまう場合もあります。

いつまでも「男と女」のヨーロッパの夫婦

 ドイツを含むヨーロッパでは、良くも悪くもカップルが子供を持った後も、「男と女でい続けること」が普通のことだとされています。ですので、妻または夫のことを「ママ」「パパ」と呼ぶ人は……「いない」と言いたいところですが、実は昔はいました。ただし、現在の就労世代(20代~50代)ではあまり見かけません。

 先日、ドイツに行った時、友達と一緒にある高齢のご夫婦のお宅を訪れたのですが、このご夫婦の子供はもう何十年も前に家を出て自立しているにもかかわらず、旦那さんが妻のことを「ママー」と呼んでいたので、友達と顔を見合わせて、失礼ながら笑ってしまいました。このように、ドイツにもこういった呼び方がないわけではありませんが、定着しているのは、どちらかというと高齢夫婦といった印象です。

 この高齢のドイツ人夫婦は夫婦仲が良いですし、子供が既に自立しているにもかかわらず、お互いのことを「パパ」「ママ」と呼び合っているのを聞いた時には、ほのぼのしたのも事実です。けれど、ドイツのもっと若い世代の夫婦は、子供がいてもパートナーのことは互いにファーストネームで呼びますし、もちろん寝室も夫婦一緒ですし、時には子供をベビーシッターに預けてデートするなどして、二人の時間を楽しみます。

 この一連のことが良いか悪いかは別として、ドイツを含むヨーロッパでは、男女はいつまでも「男と女でい続ける」または「男と女でい続けようとする」傾向があるため、「ママ」「パパ」という呼び方にはならないのでした。

 何はともあれ、日本では成人男性が発する「ママ」をよく耳にします。公共の電波で妻の松本伊代さんのことを「ママ」と呼んでいるヒロミさんは「テレビ上の、そういうキャラ」だからいったんおいておくとして……一般の男性は特にマネしなくてもよいかと思います。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/