授乳室、おしゃれに使いやすく 完全個室・華やぐ空間

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パステル調の色合いがかわいい授乳コーナー(東京都新宿区のルミネエスト店で)

 外出先で赤ちゃんの世話をする授乳室が、おしゃれに使いやすく進化している。父親も入りやすいよう配慮した個室や、滞在を楽しめる明るいインテリアなど、苦労が多い乳幼児を連れたお出かけのストレス軽減になると歓迎されている。

可動式で完全個室 公共施設や店に

 横浜市のベンチャー企業「トリム」は、箱形の可動式ナーシングルーム「ママロ」を開発。昨年から、公共施設やショッピングセンターなどで設置を始めている。内鍵付きの完全個室で、安心して授乳できる。広さは畳1畳分ほど。引き戸を開けると、大人1人が余裕を持って座れるソファとオットマン(足置き)がある。地域の情報や企業PRなどを放映するモニターも備わっている。木の風合いを生かしたシンプルな内装で、男性も抵抗感なく入れるようにした。

左上の哺乳瓶マークが点灯していると使用中と分かる完全個室型の「ママロ」

 キャスター付きで六つに分解して運べるなど、設置側の負担が軽減されているのも特徴だ。神奈川県海老名市では、今年7月に海老名運動公園総合体育館の1階に設置。それまでは申し出を受けたら医務室に案内していたが、現在は月約40件の利用があり、好評だ。トリム代表の長谷川裕介さんは「泣きやまない子どもを落ち着かせたいと利用した男性もいる。子どもも保護者も一息つける空間になれば」と期待する。

 子連れの外出に不安を感じる人は多い。1歳3か月の長男と3か月の長女がいる東京都品川区の女性会社員(35)は、長蛇の列で授乳室の利用をあきらめた経験がある。「授乳室探しに苦労すると思うと外出がおっくうになる」とこぼす。内閣府の「2014年度少子化社会対策の大綱に関するインターネット調査」では、末子が7歳未満の既婚者で外出時に不安を感じると答えた人(2253人)に、安心して外出できる支援・環境を聞いたところ、「妊婦や子連れに配慮した設備・サービス」が約62%で最多だった。

内装に工夫 コスメや時計も

 外出が楽しくなるようにと特色ある授乳室も登場した。

 東京都新宿区のファッションビル「ルミネエスト店」は16年に「ベビーラウンジ」を開設。パステル調のかわいらしい内装で、オムツ交換台や給湯機に加え、母親向けにオーガニックコスメの試供品も置いた。担当者は「育児の疲れを癒やして気持ちが華やぐスペース作りを心がけた」。

 スウェーデンの家具専門店「イケア」は自社商品を使って授乳室のインテリアを整える。イケア港北(横浜市)のインテリアデザイナーの米村渓さん(34)は「スウェーデンでは子ども部屋でも黒を使う。黒と淡いピンク、水色を基調に北欧らしさを表現した」と話す。育児中の社員の声を聞き、鏡や授乳時間を計る時計なども設置。「機能や清潔感はもちろん、イケアならではの雰囲気も楽しんでもらえたら」という。

自社商品を使ってコーディネートされた授乳スペース。おもちゃや絵本もある(横浜市のイケア港北で)

 子どもの成育環境に詳しい東洋大ライフデザイン学部准教授の仲綾子さん(建築学)は「殺風景だった授乳室が、母親のことを考えて工夫されるのは大きな進歩」と歓迎する。そのうえで「授乳室は育児の工夫や悩みを共有できる場にもなる。授乳中の母親同士が話しやすく、男性も気兼ねなく利用できるよう、おむつ交換、授乳、休憩など各スペースの動線を考えた授乳室もあれば」と提案する。

(読売新聞生活部 野倉早奈恵)