小西美穂さんの「どん底から抜け出す方法」

インタビュー

 夕方の報道番組「news every.」(日本テレビ系)のキャスター兼解説委員・小西美穂さんが著書「小西美穂の七転び八起き」(日経BP社)を出版しました。仕事がうまくいかない、彼氏に振られた……。何もかもがうまくいかず、悩み苦しんだことのある女性は少なくないはず。ニュースキャスターという一見華やかな仕事の小西さんにも、そんな経験が何度もあったといいます。小西さんはどうやって失敗や挫折を乗り越えたのでしょうか。話を聞きました。

不安や孤独で後ろ向きに

――小西さんは1992年に読売テレビに入社。報道記者として活躍した後、2006年に日本テレビに移り、報道キャスターに。13年からBS日テレ「深層NEWS」のメインキャスターを務め、現在は「news every.」に出演されています。

 経歴だけ見ると、キラキラしていて順風満帆、思い通りの道を歩んでいると思うかもしれません。でも、30代から40代前半の頃は悩みを抱えていました。本にも書きましたが、家に帰りたくなくて、デパートをフラフラ歩き回ったり、本屋で自己啓発本を買いあさったりしていた、どん底の時期があったんです。

 サブキャスターを務めていた番組が終了し、気づけば41歳独身。不安や孤独に襲われ、後ろ向きなスパイラルに陥っていました

――大手小町読者の世代も、会社では部下もできて、責任のある仕事を任されるようになります。プレッシャーがかかることも少なくありません。

 20代はいいんですよね。「わかんないです」と言って、どんどん周りに聞きながらやっていける。でも、30代中盤くらいから状況が変わって、素直になれなくなるんです。そして、自分ができないのを上司や環境のせいにしてしまいがち

 「あの人のせいでうまくいかない。私が実力を発揮できないのは、この部署にいるせい」とか。私自身もそうでした。

学ぶことで前向きに

――長くて暗いトンネルを、小西さんはどうやって抜け出したのでしょうか。

 ある日、周りや環境のせいにするのは「時間の無駄だ」と気づいたんです。それで、なんでもいいから学ぼうと思って、いろんな所に行きました。学生に交じって「日テレ学院」でアナウンス技術を一から勉強したり、市民講座に出かけたり、本を読んだり、ラジオを聞いたり。なんでもやろうと思いました。自分にとってプラスになること、学びになることは全部。

 それがすぐ仕事に直結するわけではありません。でも、何かを学んでいることは、自分の自信につながります。仕事で怒られても、「前進しているから大丈夫」と思える。耐える力、「耐力」がつくんです。仕事とは全然違う分野の友達に会いに行くのもいい。悩んでいる人には、世界はいろんなところで広がっていると、気づいてほしいんです。

――頭では分かっていても、なかなか一歩を踏み出すのが難しかったりします。

 あらゆることをやっておけば、うまくいかなくても、あきらめがつきます。私は、16年末に「深層NEWS」のキャスターを降板しましたが、できることは全部やり切ったつもりだったから、スッキリしていました。

 「何をやればよかったのかな?」と後悔する人は、まだやり切っていないと思うんです。本当にやりたいことがあるなら、それに向けて行動していくことが大切です。

できることを数えてみる

――大手小町読者にはワーキングマザーもいます。残業もなかなかできず、責任のある仕事を任せてもらえないと悩む声も聞かれます。

 ワーママだと、「残業ができない」「休日出勤ができない」と、できないことを数えがちです。まずは、自分は何ができるのか、どんなことでチームに貢献できるのか。できることを数えてみることから始めてみるといいかもしれません。

――30代の女性は、仕事、結婚、出産などで人生のステージが変わり、友達付き合いが以前のようにできなくなります。

 その時、その時で付き合う友達が変わるのは仕方のないこと。無理に相手に合わせてストレスを感じなくていいんです。私も30代後半で仕事を頑張っていた時、女友達の多くが母親になっていて会話が合わず、彼女たちの幸せそうな様子に羨望や嫉妬の気持ちを抱くことがありました。でも、彼女たちの子供が大きくなると、関係はまた変わってきます。

 生涯残る友達は、自然とずっとつながっているから、心配しなくて大丈夫。もっといい関係になっていきますよ。

婚活は友人のアドバイスを素直に実践

――「七転び八起き」では、恋愛や婚活についても書かれています。仕事に生きてきた小西さんが、恋愛をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

 がむしゃらに働いて、いつの間にか恋愛から距離ができて、気づけばひとりぼっち。「結婚したくないわけじゃないけど、結婚ができない」。その状況をしっかり見つめることから始めました。最初は、友人のアドバイスに従いながら、メイクや服装を変えていきましたね。

 「自分にはこれが似合う」と頑固にならずに、言われたことは素直に実践していました。自分磨きのキャンペーン、名付けて「ジブン大会」です。

――そして、11歳年下の男性と出会い、43歳の時に結婚されました。

 初対面でゴルフの話になって、「じゃあ、今度行きましょう」となったんです。その時、私が心がけていたのは、土日の予定を頭に入れておくこと。男性が女性をデートに誘う時って、勇気を出してくれていると思うんです。恥ずかしさを感じる方もいらっしゃると思います。頑張って誘ってくれたのに「予定を確認して空いていたら」と返したら、もっと恥ずかしい思いをさせてしまう。だから、大体の予定を頭に入れておいて、いいなと思っていた人に誘われた時は、すぐ返事ができるようにしていました。

 夫は私と同じ関西人。この本を執筆した時、「美穂ちゃん、もっと失敗していること書いてもええんちゃうの?」と言っていました。サービス精神が旺盛なんです(笑)

無理のない範囲で親孝行を

――小西さんご自身の家族のことも書かれています。大手小町の読者世代は、仕事が忙しくて、なかなか実家に帰れなかったり、両親に電話をしても用件だけですませたりしがちです。本書にある「大切な人を大切にすること。ありがとうと伝えること」の言葉にハッとさせられました。

 まだご両親が元気な方は、「親がいて当たり前」と思うでしょう。仕事も忙しいし、ご両親もそんな我が子を見守っているんだと思います。でも、仕事がようやく落ち着いて、親孝行しようと思ったのにできないこともあります。無理のない範囲で、旅行や食事に行けたらいいですよね。

 私の父は、私が35歳の時、テレビで第2次小泉改造内閣の会見を見て「美穂はここで取材しているのかな」と言った後、帰らぬ人になりました。母は、私が44歳の時に悪性リンパ腫で亡くなりました。こればっかりは誰にもわかりません。

――仕事のこと、プライベートのこと、家族のこと。本書の最初から最後まで、飾らない小西さんの姿が伝わってきました。

 ええカッコしてもしょうがないと思って、ありのままに書いたつもりです。本当につらい時って、ずっとそれが続くんだと思いがち。自分がそうだったから、身をもって知っています。でも、私も長くて暗いトンネルをなんとか抜けることができました。

 「こんなふうにやって、なんとかなった」ということを、若い人たちに知ってもらい、少しでも支えになれたらと思っています。

取材・文/山口千尋、写真/高梨義之

Profile プロフィル

小西 美穂(こにし・みほ)

日本テレビ解説委員・キャスター。1969年、兵庫県生まれ。関西学院大学卒業。1992年、読売テレビ入社、報道記者として阪神・淡路大震災などの取材や、ベストセラー「だから、あなたも生きぬいて」(講談社)のきっかけになった大平光代弁護士の密着ドキュメンタリー番組などを制作。2001年から3年間、ロンドン特派員。帰国後、政治部記者を経て、06年日本テレビ入社。報道キャスターに。最新の活動はこちら