経験値を積み重ね、もう、新築も中古マンションも、不動産屋も怖くはない!……はずの我々だが、ここにきて、肝心かなめの中古物件が少なくなってきているという。そのあたりを、リノベーションを重点的にとり扱っている『株式会社ワッフル』の伊藤洸さんに聞いてみた。
M村「最近、業者が中古マンションを買ってリノベーションしてしまうので、古いままの中古物件が市場から減ってきているのは、本当なんですか?」
伊藤「まさにそのとおりです。いま、中古市場全体が上がっているのは、リノベーション会社が、先にたくさん買い占めていることに一因があります」
まさかのマンション買い占め!!
伊「中古マンションの取引は、一般の方から仲介業者を挟んで、一般の方が購入する場合と、売り主業者(会社)が一般の方から安く買って、仲介を通して、また一般の方に売る場合があります。業者が先に買い取った場合は、内装をきれいにしてから、一般向けに販売します。この、業者による買い取り方が過熱していて、中古市場が上がってきているわけです。いま、東京の不動産は買い取りプチバブルになっている感じですね」
高「そうすると、条件の良さそうな物件なら、世に出る前に業者にさくっと買われてしまいますよね。我々のような素人が、業者に勝てるはずがないのでは?」
伊「そうなんですよ。我々もそうなんですが、業者はプロ。一般人がプロと競り合ってもなかなか勝てないのは当然です。でも、そこであきらめる必要はなくて、大事なのはまず良いリノベーションをする会社を見つけてください、ということなんです」
伊藤さんが言うには、ワッフルのように大手ではない会社がこの業界で生き残っていくための戦術こそ、良いリノベーションを“売り”にすることだという。
伊「いくつか見てもらえば、リフォームやリノベーションのグレードはわかってきます。中には、賃貸のリフォーム並みのリノベーションを売りに出す業者もいます。お客さんたちには、なるべく、そういう業者からは買わないようにしていただきたいんです。そうすれば、いい加減な会社は淘汰されていくはず。ちなみに、弊社のリノベーションは、新築マンションのモデルルームから“オプション部分”を引いたグレードです」
伊藤さんが「見ていただければわかる」と繰り返すとおり、案内された部屋はどこを見てもぴっかぴかだった。もともとが築20年と、そこまで古くないので、サッシの安っぽさもなく、キッチンは対面式で、ホームセンターに置いてあるような量産品ではない。新築と言われれば信じてしまいそうだ。

高「つまり、中古マンションをオトクに、そして質の良いリノベーションをして住むためには、ワッフルさんのように良いリノベーションをして売ることをマストにしている会社を選び、そこのスタッフといっしょに物件を探せばいいっていうことですよね?」
伊「そのとおりです。その上で、一般の人が業者より早く、中古を手に入れるタイミングは2通りあります。一つは、売り主に余裕があって『売り急いでいない物件』。もう一つは、売り主ができるだけ高く売りたいから、高めの価格設定をしていて、『売れなかったら安くしようと思っている物件』です。そういう物件を攻略する方法は、自分の予算より少し高めの物件でも、あきらめずに見に行くことです。そして、気に入ったら金額交渉をしてみる」
なるほど、売り主が売り急いでいなければ、業者に安く買いたたかれることはない。高めに設定している場合は、リフォーム業者があまり上乗せできないということだ(相場観から外れるため)。
M「例えば、予算は3500万円だけど、販売価格は3800万円。なんとか300万円値引いてください、なんてお願いすることは可能なんですか?」
突然、M村が具体的な数字を出してさぐりに入った。どおりでさっきから黙って念入りにチェックしていると思った。目がマジである。
伊「可能です。その場合は、仲介を通して売り主さんと交渉できます。取りあえず、気に入ったらダメ元で交渉しましょう。売り主さんの状況は図面だけではわかりません。でも、タイミングが合えば、お得に購入できると思います」
M「これからリフォームをしたいから、その分を引いてください……というような交渉が可能なわけですね!」
おお、M村よ、今回はグイグイいくな。距離を取りながら黙って見守る私。
伊「そうです。坪単価で比べると、売りに出ている坪単価は実際売れた価格の0.5~1割ぐらい高いことが多いんです。販売するときに、いろいろ交渉して徐々に下げていったりするものなんですよ。だから、まず交渉を持ちかけるべきです」
M「具体的にはどんなふうに?」
伊「本気度を相手に伝えるために、まずは不動産屋に出す『申込書』に希望の価格を明記して提出してみましょう」
M「そんなことでいいんですか? 1割引きとか、いきなり持ちかけて、不快に思われたりしないでしょうか?」
伊「大丈夫ですよ。実は売り主業者って、物件を最大7割程度の価格で買うんですから。その代わり、瑕疵担保免除やローン解約、一般の方では購入が難しいものも扱います」
高&M「7割!!」
まさかの3割引き。ということは、3000万円で売りに出されているリノベーション物件があったとして、元値は2100万円ということになる。
高「リノベーション分のプラスがあるとはいえ、がっつりマイナス900万円は大きい!」
伊「もし、一般の方が『8割で買いたい』と言えば、売り主は1割高く売れますから、その方がいいんです。だから交渉してみるべきなんですよ」
M「もし、ワッフルさんのような業者さんの売りに出されているマンションが気に入ったけど、ちょっと、いやだいぶ予算より高い場合は、どうすれば……」
だいぶ具体的に迫るM村。「こいつ、買う気なのか……」と思わず手に汗を握る私。
伊「売り主業者さんから購入する場合でも、決算時期なら、大幅な値引きが期待できるかも、です」
高「なるほど、そうか、決算!」
業界的には3月と9月決算の会社が多いんだとか。この時期が近ければ、業者のほうも売り切りたいはずだから、ねらい目。まずは交渉だ。
監修:風呂内亜矢/協力:株式会社ワッフル 伊藤洸
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