こんなに違う!世界の「専業主婦事情」

サンドラがみる女の生き方

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 結婚した女性の人生には、「専業主婦」または「働き続ける女性」としての生き方があります。両者は対立軸として語られたりもしますが、今回は「専業主婦」そして「働き続ける女性」の二つの生き方を「善し」とする前提で、海外の状況についてご紹介したいと思います。

世界のカリスマ専業主婦

 外で働き続ける女性が増えている一方で、育児や家事の分野で能力を発揮して、「カリスマ主婦」となる女性がいます。アメリカでいえば、少し前だとマーサ・スチュワートを思い浮かべる人が多いかもしれません。

 では、ヨーロッパにも有名なカリスマ主婦はいるのかというと、ドイツに関してはイヴォンヌ・ヴィリックス(Yvonne Willicks)さんがいます。

 イヴォンヌさんは、テレビにも頻繁に出演するカリスマ主婦で、実際の家事能力はもちろん、その論理的な解説にも定評があります。彼女は「掃除のプロ」としてよくメディアに登場しますが、イヴォンヌさんの紹介する「汚れ落とし」のポイントに「科学・力学・温度・時間」というものがあります。この四つを合わせて「100%」ととらえ、四つのうちのどれかのパーセンテージを増やすと、ほかのものは少なくても済む、という考えです。

 例を挙げると、鍋などの焦げ付きは熱湯(温度)を使い、洗剤で化学反応を強め(科学)、2時間つけおきすれば(時間)、労力(力学)は少なくて済む」といった具合です。彼女は「イヴォンヌブレンド」なる洗剤を作っています。まず、炭酸ナトリウムまたは重曹30グラムを水250ミリ・リットルに入れ、沸騰させます。次に、大さじ8杯のお酢を加え、さらにキッチン用中性洗剤50グラムを加えて、水で薄めれば「イヴォンヌブレンド」の出来上がりです。この特製洗剤は大理石以外ならどこにでも使えるという優れものです。

家事の最優先は「掃除」のドイツ

 ドイツには「家事マイスター」という国家資格があり、これはいわば公的に認められた「家事のプロ」なのですが、イヴォンヌさんも家政学科出身の家事マイスターです。断捨離にも力を入れていて、カオス状態の他人の家に出没して片付けをする番組も人気を得ました。

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 ところで、ドイツでは家事の優先順位というと、掃除、アイロンがけ、洗濯、料理、の順を挙げる人が多いです。特に昔から「窓ふき」は重要視されており、「良い主婦」イコール「窓ガラスがピカピカな家」という構図が出来上がっているほど。日本だと、家事の優先順位は、どう考えても料理が1位になりそうですが、ドイツの場合、家事というと「料理」よりも先に「掃除」がくるのが、感覚の違いが見えて面白いです。

ヨーロッパでは近年見られない「専業主婦願望」

 さて、ドイツのカリスマ主婦について書きましたが、近年、ドイツを含むヨーロッパでは「専業主婦になりたい」という女性は実はあまりいないのでした。その理由は多岐にわたるため、全てを挙げると1冊の本が書けてしまいそうですが、理由の一つとしてドイツでは「学業を仕事に直結させる」ことが徹底して行われている、という点が挙げられます。

 性別は関係なく、専門学校や大学で勉強して就いた職業を定年まで続ける、という考え方です。そして、その際の条件は「実際に食べていける金額を必ず得られる仕事をする」ことです。このあたりの感覚は日本よりシビアです。

 例えば、小学校低学年ぐらいの女の子が「将来はお花屋さんになりたい」と言うと、日本の大人は、店員さんとして働くイメージを抱いて、子どもを応援するような雰囲気になったりもします。ところが、ドイツの場合だと、「一生食べていくことを考えて、花屋さんを経営する側になりなさい。そのためには将来、大学で経営学を学んで……」などと子どもを諭しがちです。

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仕事と勉強がリンクしない日本

 ところで日本では、例えば大学で法学部を出ても、その後必ずしも弁護士になるとは限らず、また必ずしも法律関係の仕事に就くとも限らず、一般企業に勤める人も多かったりします。

 しかし、ドイツではこれはあまり見られない現象です。ドイツでは、専門学校や大学で習った分野を、仕事に生かすという考え方が徹底しています。法学部であれば、将来は法律の仕事をして当たり前、と捉えられています。これは何を意味するかというと、もしも「専業主婦になりたい」人がいたとすると即、「せっかく学校で勉強をしたのにもったいない」と言われてしまうということなのです。

 このあたりの感覚は日本とはだいぶ違います。いろんな制度が整っているからこそ可能であるとはいえ、「女性が働くのが当たり前」という風潮がヨーロッパでは非常に強いです。そのため、ドイツ人男性と結婚した日本人女性がドイツに住んで専業主婦をしていると、周囲からの「なんで働かないの?」という質問に参ってしまうという話もよく聞きます。何が正しいというわけではありませんが、このあたりは本当に「感覚の違い」というしかないのかもしれません。

「家計を妻が握っている」のは日本だけ?

 近年は家庭によっても様々だと思いますが、日本ではかねてより「旦那さんが外で仕事をして稼いだお金を、専業主婦である妻が管理する」というスタイルも多く見られました。このことに、びっくりするヨーロッパ人は多く、女性に関しては、「そういう日本みたいなスタイルなら専業主婦も悪くないかも」という話も出たりします。

 実際には、ドイツでも70年代までは専業主婦のいる家庭もありました。しかし今、就業できる年代では「専業主婦のいる家庭」は少ないのです。ドイツに限らず、世界の先進国の女性たちは「専業主婦という生き方」からは遠ざかっているようです。一概には言えないものの、そこには「女性の社会的地位」を考えれば、専業主婦だと「不利な部分が出てくる」という考え方が今の欧米諸国では主流だからです。

 私は女性が働き続けることも、専業主婦になることも、それが女性自身の選択であり、当人が満足しているならそれでよいと考えています。その一方で、日本の社会に見られる多くの風潮、例えば、平日の日中に行われるPTA活動に母親の参加が期待されることや、「朝の何時までにゴミを出さなければいけない」というシステムなど、日本の至るところで「家には一人、専業主婦がいる」という前提で成り立っている仕組みが多いなと感じます。

ドイツでは、平日は男も女も仕事で忙しいという社会のコンセンサスがありますので、親が平日に学校の用事で呼び出されることはまずありません。

「女性としての生き方」と「母親への思い」の狭間で

 さて、正直に書いてしまうと、私の得意分野が家事にないのは明白なので、私自身は専業主婦になろうかな、と考えたことはなく、今までずっと仕事や趣味に生きてきました。ドイツで育った影響もあり、そもそも専業主婦になる、という選択肢が自分の中に最初からなかった、というのも正直なところです。

 そんなこんなで自分の「女性としての生き方」の柱となるのは「働き続けること」なのですが、そうはいっても、実は私自身が専業主婦の恩恵を受けてきたという自覚もあります。というのは、自分が今、日本語が話せるのは、母が専業主婦だった点が大きいのです。

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 私はドイツで育ったのですが、平日は他のドイツの子どもと同様にドイツの現地校に通っていたため、日本語に触れる機会は限られていました。日本語学習のため、両親の判断で土曜日は日本語補習校に通い、週に1度は日本人の先生のいる塾にも通い、国語(つまり日本語)を勉強していました。

 しかし実際のところ、日本語に触れる時間が一番長かったのが、「日常での母との会話」でした。そして、それが私の日本語習得のベースとなりました。母は、私が日本語の勉強がしやすい雰囲気を家庭の中で作ってくれたりもしました。今の私の「女性としての生き方」と矛盾するようですが、もしも母が働いていたら、私が日本語を習得することは難しかったと思うのです。

 そして、もしかしたら私は無意識のうちに、母がしてくれたことに満足はしているのだけど、「自分自身は女として同じような生き方はできない」というはっきりとした意思があるため「子どもは持たない」という思考回路になったのかもしれない、と最近思うようになりました。

 女性の生き方を考える時に、そこには世代による違いや、女性個人の考え方の違いなど、いろんな要素が絡んできますので、一概に言えないのですが、私のように母親とは違う生き方を選びながらも、専業主婦であった母親に感謝をしている場合もありますし、その逆のケースもあります。「女性の生き方」は、一口では語れないのかもしれません。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト。

 ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
 「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/