中古マンションを買うのは“転職”と同じ……と言う、ホームインスペクターの辻さん。
辻「転職するとき、相手の会社の経営状況や、会社の様子や場所も重要な要素になりますよね。時には中で働いている人にヒアリングすることもある。マンションも同じなんです」
ココが大事
*今まで、どうやって、どんなこと(トラブル)を乗り越えてきたか
*将来的なビジョン(長期修繕計画)があるかどうか
*借金(修繕積立金の滞納や借入金)はないかどうか
辻「これらを、議事録などで確認して、問題がないようなら買い。もし、なんだかんだ言って購入前に議事録を見せることを渋られるときは、なにかネガティブな理由があるのかも、と疑ってみるべきです」
本当に転職と同じだ。そう思えばぐっと身近に感じられるような……
M「専門家から見て、ほかにチェックすべき、マンションのソフト面はありますか?」
長「ここから先は少し専門的になりますが、東京のような狭くて価値の高い地域だと、土地の再開発にひっかからないかどうか、気になりますね」
高「再開発にひっかかる、ひっかからないって、我々のような素人がどこを見て判断すればいいんでしょう」
長「法務局に行って、土地の公図を見せてもらえばいい。土地と道路の関係性を見るとわかることが多いです。例えば、小さいアパートなど借家が多いところは再開発の可能性がある。持ち家だと、土地の買い上げが大変だから、可能性は低いのですが」
なるほど、目の前にいかにもな駐車場があれば、将来的に周辺も地上げにあって高層マンションが建つ可能性もあるのだ。
長「あとは、崖地に立つマンションは要注意です。これから人口がどんどん減って住宅余りになるのに、あえてリスクの高い崖地のマンションは選ぶ必要はありません。横浜などすでに崖地にマンションを建ててはいけない条例ができている自治体もあります。そういう場所では、今立っているマンションも建て替えはできないと見ていい」
つまり、中古のマンションがやけに安いなと思ったら、再建築不可の可能性があるということだ。将来的に再建築は可能なのかも、事前にチェックしておくにこしたことはない。

半日ご一緒させていただいただけでも、素人には目からうろこがぼろぼろ。細かくチェックが入るプロの仕事に、途中から私もM村も、「もう、素人はホームインスペクターさんを雇えばいいのではないか」。という、安易かつ安全な結論に達していた。
高「だって、数万円でハード面からソフト面まで全部チェックしてくれるわけでしょ? やっぱ餅は餅屋、専門家にまかせるのが一番では」
辻「実際米国では、取引全体の70~90%の割合でホームインスペクションが行われています。州によって差があるものの、すでに常識です」
高&M「常識……」
アメリカでは常識なのに、今回初めてその名を聞いたレベルの我々。
M「ホームインスペクションは、現在日本ではどんな状況なのですか?」
辻「2018年4月から、ようやく中古住宅取引の際にホームインスペクション(住宅診断)の説明が義務化されました」
高「えっ、今年!? じゃあ今年まで法化されてなかったってこと??」
M「アメリカでは常識なのに……、日本のほうが地震国なのに……」
それでも日本でも今年から説明が義務化されたというので、ひと安心かと思いきや……。
辻「いやいや、それが、そうでもないんですよね。義務化はされましたが、それは説明の義務であって、診断士をいれる義務ではないんです」
高&M「ど、どういうこと……」
つまり不動産屋サイドが「ホームインスペクション入れますか?」とさえ聞いておけばOKということ。たいていのお客さんは聞くだろう。「それって別途お金がかかるの?」。その時、不動産会社が「かかる」と言えば、あえて診断は必要ないというお客も少なくはなさそうだ。
高「だって、今まで不動産屋さんって、そのへんの資格とかフツーに持ってると思ってたもん」
M「私もです。まさか、1級建築士ですら診断士の資格を持っていないとは」
つまり、診断士の資格を持った人がいないリフォーム会社は、もともとのマンションの状態を正確に把握しないまま、リフォームしているということに!?
長嶋さんによると、不動産会社の人が全員建築関係や宅建の資格を持っているわけではなく、圧倒的に持っていない人のほうが多いという。もちろん資格がすべてではない。経験も大事で、資格を持っているからこの人から買って100%安全というわけではない。最終的になにを信じるか、どう判断するかはあくまで自分自身である。
高「日本はただでさえ地震国だから、目に見えない部分のマンションの状態は気になるよねえ。特に築年数のたった中古マンションならなおさら」
M「でも、都心に近いお手頃な中古マンションなら、手が届きそうな気がします……」
というわけで、我々はなるべく都心に近い、お手頃な中古物件について、さらに調査を進めることにした。
監修:風呂内亜矢/協力:さくら事務所 長嶋修、辻優子
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