プロにしかわからない、中古マンション注目ポイントは石膏ボードの厚み?!

35歳、働き女子よ城を持て!(8)

 外観チェックが終わり、いよいよ内部の診断を開始。ホームインスペクターの辻優子さん、おもむろに診断士七つ道具を取り出しました。

これが、ホームインスペクターの七つ道具だ! 上から、手袋と靴下、打診棒(タイルやモルタルの浮きを調べる)、ドライバー(左)、水平器(中/床や壁の傾き・歪みを確認)、懐中電灯(右)、メジャー、クラックスケール(ひび割れのサイズを計測)

 まずは、テレビでもよくビー玉を転がして調べている、床の傾きについて。

 辻「オートレーザーという器具を使って確認します。許容範囲については「1000分の3から6未満」(国土交通省告示)、10メートルの距離で6センチメートル未満まで。1メートルにつき6ミリくらいの傾きまでなら大丈夫です」
 高殿「床が傾いているのは、どんな原因があるんですか?」
 辻「中古ですから、どうしても床材そのものの劣化が考えられます。そういう場合は張り直しでリカバーすれば十分ですし、歩いて気持ち悪くなければそのままでもOK」
 M村「よくテレビで地盤沈下で建物全体が傾いているのを特集していたりしますが……」
 辻「それはだいぶ深刻ですね。建物が悪いのか、もともと地盤が傾斜しているのか、建築後に傾斜したのかも調べたいところですが、個人単位ではできないので、管理組合の対応状況を質問するといいですね」

床の傾きはレーザータイプの機械で計測することも

 次に辻さんが注目したのは、室内の給排水管だった。

 辻「この時期(1998年ごろ)に建ったマンションは、給排水管は金属と樹脂管が混在しているんです。金属の場合、劣化すると錆びて腐食してしまうので、将来的には耐久性に優れた樹脂管への更新が望ましい。最初から樹脂管ならラッキーです」

 辻さんが、「ここはいいマンションですね!」と判断したのは、サヤ管ヘッダーと呼ばれるシステムだった。

 辻「給水給湯管を分配するサヤ管ヘッダーが組み込まれていると、管が枝分かれする場所がまとまっていて、メンテナンスがしやすい。風呂と台所など、複数同時使用による流量変化が少なくて暮らしやすいのも利点です」

 気になる中古マンションに、サヤ管ヘッダーシステムが組み込まれていたら、その建物はいい仕様の部類になるという。

これが、サヤ管ヘッダーだ!(左)。漏水センサーも装備

 高「へー、なるほど。ブランド名より、こういうところを見て判断するのも大事だってことですね」
 辻「このマンションも大手のシリーズですが、すべてのシリーズで同じシステムがとられているわけではないと思います。築年数が違うと仕様も変わってきます。やはり、ひとつひとつ丁寧にチェックするのが大事だと思います」

 次に辻さん、洗面所の床下を開けると、漏水センサーが見えた。こういう仕様もいいマンションの証しだという。漏水センサーはすべてのマンションについているわけではないからだ。

 辻「洗面所や風呂の天井裏は特に重要なチェックポイントです」

 辻さんは脚立に上って懐中電灯で中を照らしながら確認した。

 辻「シミがないか、換気ダクト(銀色の蛇腹のダクト)にヒビがないかなどを見ます。ここに問題があるとカビだらけになって、大掛かりな改修工事が必要になるからです」

換気ダクトもしっかりチェック

 音のチェックもかかせない。床の足音だけではなく、トイレの水音も細かく確認する。トイレの排水縦管に吸音材(鉛が入ったシート)やグラスウール(ガラス繊維の遮音・断熱材)が巻かれているかどうかが重要になる。

 辻「ここは壁を壊さないと施工できないところなんです。もし、古い物件をリノベーションやリフォームする場合は、壁をふさぐ前に設置したいですね! あっ、このマンションはいいですね。石膏ボードの厚さが12.5ミリあります。9.5ミリのところも多いから、こういうところが手厚いマンションにあたると、ウキウキしちゃうんですよ」

 すかさず石膏ボードの厚みまでチェックする辻さん、猛者という雰囲気十分である。ほかにも設備のチェック。換気扇をつけて、テッシュペーパーを吸わせてみる。落ちなければ、きちんと作動している。こういった不具合・欠陥を見つけたりすることで、購入したあとに修繕する箇所、費用がわかることが、売買の判断材料になる。中古住宅取引のリスクを軽減することができるのだ。

 診断時間は2時間ほどで、診断料は4万円弱から。何千万円という買い物をするのに、この3万円を高いと思うか、安いと思うかはあなた次第だ。

 辻「これだけで終わりじゃないんです。ホームインスペクションは、家のハード面だけじゃなく、ソフト面まできちんと診断します」
 高「ソフト面!? 家のソフト面ってどういうこと?」

 いやー、不動産って知れば知るほど奥深い沼です……。

 監修:風呂内亜矢/協力:さくら事務所 長嶋修、辻優子

 ●さくら事務所

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高殿円(たかどの・まどか)
作家

 兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。著作に、「トッカン」シリーズ、「上流階級 富久丸百貨店外商部」シリーズ、『メサイア 警備局特別公安五係』『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』、「カーリー」シリーズ、『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』『主君 井伊の赤鬼・直政伝』『政略結婚』など、話題作を続々と発表している。13年『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。漫画原作も多数。

風呂内亜矢(ふろうち・あや)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

 26歳(独身)のとき、貯金80万円で自宅用マンションを衝動買いしたものの、物件価格以外にも費用がかかることを知り、 あわてて貯金とお金の勉強を始める。現在は自宅を含め夫婦で4つの物件を保有し、賃料収入を得ている。 マンション購入をきっかけに転職したマンション販売会社では年間売上1位の実績を上げ、 2013年からはファイナンシャルプランナーとして独立。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。 著書に『その節約はキケンです』(祥伝社)、『デキる女は「抜け目」ない』(あさ出版)、『図解でわかる!確定拠出年金』(秀和システム)、『最新版 届け出だけでもらえるお金 戻ってくるお金』(宝島社)などがある。最新刊は『ほったらかしでもなぜか貯まる!』(主婦の友社)。ツイッター:@furouchiaya、LINE@:@furouchi  

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