そもそも、ホームインスペクション(住宅診断)というのは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場からまた専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行うこと。
『さくら事務所』の会長・長嶋修さんと、ホームインスペクターの辻優子さんに、住宅診断について聞いてみた。
高「東京は埋め立て地も多いし、河川も多いと思うんです。素人でもできるエリアチェックの方法を教えてください」
臆面もなくプロにすがる我々。いや、ほんとうに餅は餅屋っていう言葉は正しいと思う。
長嶋「まずは、自治体のHPでハザードマップを確認することですね」
長嶋さん曰く、例えば、洪水など水害ハザードマップは大いに利用できるという。大雨によって河川等が増水し、水があふれた場合の浸水予想区域図(平成15年7月東京都作成)に基づいて、浸水する範囲とその程度がわかる。浸水の程度によって色分け(白、黄色、緑、青)されているので、浸水のリスクが高い場所は避ける。圧倒的に白い場所の方が多いので、あえてリスクの高い場所を選ぶ必要はない。
実際ハザードマップ自体は、長嶋さんのタブレットで検索するだけで簡単にチェックすることができた。

高「ちょっと道を隔てただけでも危険度が違う場所がある。気になるマンションや家を見つけたら、こういうのを細かく見てみないとダメなんだね」
M「ハザードマップをチェックするほかに、気を付けたほうがいいポイントはありますか?」
長「高台にあるマンションでも、地下を掘って半1階に部屋があるような物件は避けることです。マンションでは、水はけのために、地下からがポンプで水を汲み上げています。それらが水に全部埋まると、浸水しますよね」
実際のところ、3階建てくらいの小規模マンションで、このような被害は多いという。
長「建物の高さを10メートル以内に収めるために、地下を掘りさげるからなんですね」
高「じゃあ、いくら安いっていっても、ちゃんと理由を調べないと、水害の危険がある場所である可能性があるってことでしょうか」
長「いや、それが、現在、ハザードマップは価格に反映されていないんですよ」
高&M「えーっ!!」
つまり、以前水害があった場所であっても、利便性がよければそちらを反映した値段になっているということらしい。
長「今後、反映される可能性が高いので、反映されたら、金融機関の担保評価も変わる可能性があります。災害リスクが低い場所を今のうちに買った方がお得かもしれません」
高「そういう情報って、買う時に不動産屋さんは当然教えてくれるんですよね?」
長「いやいや、ハザードマップについて、不動産屋側が積極的に教えることはないですね。もちろんお客さんに聞かれれば、答える義務がありますが」
高「えっ、教えてくれないんですか? そこが危険であるかどうかも??」
M「自分から商売の芽を摘むことはしないってことなんでしょうか……」
ここで本日3回目の「えーっ」な事実が判明。
辻「残念ながら、住宅診断士の資格を持っている不動産屋さんは、めったにいないのが現状です」
高&M「……マジですか……」

まさに残念なお知らせ。さっきから我々の顔は、0三つで作る絵文字の表情のままである。
高「じゃあ中古マンションを売るとき、いちいちプロ目線で診断しないと?」
辻「しないですね。実は内装の状態というのも、マンションの価格にほとんど反映されないんですよ」
高&M「ハザードマップだけでなくー!?」
つまり、家というのはほぼ、利便性と築年数と環境だけで値段が付けられているということだ。そして、値段をつけているほうは、住宅そのものの状態をいちいち診断はしない。
M「家の価値って、いったいなんなんでしょうか……」
高「もう、何を信用していいかわからなくなってきた」
こうなったらハザードうんぬんだけじゃなく、中古マンションの見分け方について、プロの診断士に張り付いて、とことん聞くしかない! と我々は決心したのである。
高「実際に、辻さんたちと一緒に売り出してる中古マンションに行って、ホームインスペクターの仕事をこの目で見る! それしかない!」
ホームインスペクターはどんなところをチェックするのか。覚えておけば、今後中古マンションを買うときに大いに役に立つ、かもしれない。……というわけで、直撃、中古マンション診断ルポ!
監修:風呂内亜矢/協力:さくら事務所 長嶋修、辻優子
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