仏像の絵 なぞって安らぎ

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「仏画講授会」で黙々と仏像を描く女性たち(東京都新宿区で)

ペン1本で気軽 ありがたみも

 仏像の絵をペンや筆でなぞって写す「写仏」が女性たちの注目を集めている。描き方を教える本が相次いで出版され、教室も人気だ。仏教の修行としてではなく、気持ちを落ち着けるリラクゼーションとして挑戦する人が増えているようだ。

 東京都新宿区で仏画師の木島昌利さんが開く「仏画講授会」を訪ねると、静まりかえった和室で10人前後の女性が黙々と半紙に向かって筆を走らせていた。

 手本の仏画に半紙を載せ、その上から筆でなぞる。穏やかな表情の仏像を描いていた女性は「美しいお顔に向き合っていると、いろいろな気持ちが湧いてくる。何ものにも代え難い時間です」。この春から通い始めた女性は「無心になれるのがいい。心が落ち着きます」と話す。

 仏像を写し描く「写仏」は、仏教の修行として行う印象があるが、木島さんによると、最近は、癒やしや安らぎを得られる趣味として始める人が増えたという。「仏像の優しく慈しみのある表情を無心になぞるうちに、心が穏やかになる。現代人が忘れかけていた感覚が呼び覚まされるのかもしれません」と話す。

 手芸本などを出版する「日本ヴォーグ社」は、木島さんの仏画を使った「こころを満たす仏像うつし描き 菩薩ぼさつ編」を4月に出版した。編集担当者は、「ストレスの多い現代社会で、心を整える趣味として受け入れられていくのでは」と話す。読者は、熟年層の女性が多いという。

 写仏ブームのきっかけの一つが、通信販売会社「フェリシモ」が2014年に発売した「プチ写仏プログラム」だ。仏像の絵と半紙、筆ペンなどのセットで、手軽さが人気となった。2015年には月間約1万人が利用したという。

 

ポップな絵 30~40代女性に人気

 15年に「池田書店」が出版した「心やすらぐ仏像なぞり描き」は、これまでにシリーズ累計で17万7000部を発行。イラストレーターの田中ひろみさんが描くポップな仏の絵が30~40代の女性たちにも人気で、自分で描いた写仏をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に載せる人も多いという。

出版された仏像の写し描きやなぞり描きの本。仏像のある寺を案内するなど観光ガイドを兼ねているものも

 池田書店によると、写仏人気の背景には、ブームになった「大人の塗り絵」同様に、絵に自信がなくても挑戦できる点があるという。また、御朱印や仏像などの仏教カルチャーに関心を持つ人が増えていることも追い風になった。ペン1本で始められる気軽さと、ありがたみがありそうなところが、女性たちの心をつかんでいるようだ。

 著者の田中さんは「なぞり描きをすると仏像がより身近に感じられて、細部まで分かるようになる。実際にお寺で仏像を見た時、それまで見えなかったところまで目が届くようになります」と話す。「無心になって日頃の疲れを癒やすためだけではなく、仏像をより深く知るためにも活用してみては」と勧めている。

(読売新聞生活部 宮木優美)