宿は古都の「町家」貸し切りで上質な旅

News & Colum・・・

日没とともに明かりがともった「京の温所 釜座二条」の玄関(京都市中京区で)

 古都に残る「町家」を過ごしやすく改修して、旅行客にまるごと貸す宿が登場している。「一棟貸し」と呼ばれ、台所などを自由に使って、暮らすように滞在できるのが魅力。上質な日本の空間でくつろぐ旅に出てみたい。

京都の街並み保全にも一役

 今月1日、京都市中京区にオープンした「京の温所おんどころ 釜座二条かまんざにじょう」。世界文化遺産の二条城に近く、夕暮れ時には、あんどんがともり、引き戸から優しいあかりがにじむ。

手入れのされた中庭に面したライブラリーに200冊の本が並ぶ。ゆったりと読書をする愉楽
コウヤマキを使った卵形の浴槽。すがすがしい香りが立ち上る
寝室から眺める樹齢100年のイヌマキは額に縁取られた絵のよう(「京の温所 釜座二条」で)

 築150年で直近まで飲食店だった建物を、同市に本社がある下着メーカー「ワコール」が、宿として改修した。発案者で同社町家営業部長の楠木章弘さんは「京都の町家は『京町家』と呼ばれ、歴史的価値のある建築物だが、近年は老朽化や空き家が問題となっている。『上質な宿』として生まれ変わらせることで、京都の街並みを含めた保全につながると考えた」と話す。

 同社は、今年4月から宿泊事業に乗り出し、ここが2軒目。木の浴槽から立ち上るすがすがしい香り、情緒のある中庭など日本家屋の良さを残しつつ、台所には最新式のコンロや食器などを備えた。寝室は和洋一つずつある。設計は建築家の中村好文さん、全体構想はデザイナーの皆川明さん。同社は、町家の宿を2022年度までに50軒ほど増やす方針だ。

洗練されたキッチンとダイニング。家族やグループで料理を楽しめる(京都市中京区の「京の温所 釜座二条」で)

 1棟1泊の料金は6万~10万円(税別)で、最大4人まで宿泊可能。旅館業法上は、簡易宿所営業の扱いで、特別なサービスを頼まなければ、宿泊客だけでくつろげる。

 旅行情報サービス「じゃらん」統括編集長の大橋菜央さんによると、地元食材で自炊ができるなど、旅先で暮らすように過ごす町家が注目されているという。「ホテルや旅館のようなサービスはなくとも、地元との距離が近く『非日常感』も体験できる。空調や水回りは快適に整備され、抵抗感なく滞在できるのも人気のポイント」と指摘する。

茶道や華道 「和」の体験も

「菊乃や」の客間は待合茶屋の雰囲気を今に伝える(「町屋金沢」提供)

 古都ならではの体験ができる宿もある。金沢市主計町の「菊乃や」は、築120年の待合茶屋を改修した。07年開業で、町家活用の先駆的な宿だ。茶道や華道、書道の簡単なお稽古体験プログラム(要予約、講師料や実費が別途必要)もあり、女性や海外客に人気という。定員2~5人で朝食付き1泊4万2000円(税込み)から。

 町家の宿は、日本の良さを再発見するきっかけにもなっているようだ。JTB総合研究所(東京)の調査では、日本人の旅行先の選び方に、国内回帰の傾向がみられるという。

 企画調査部主任研究員の三ツ橋明子さんは、「宿泊施設の多様化が進む中で、町家や古民家など日本ならではの宿が外国人旅行者に人気になっている。その様子を見て改めて日本の魅力に気付き、国内旅行に行く人が増えているようだ」と語っている。(生活部 宮沢輝夫、写真も)