「年の差婚」結婚できる相手とできない相手

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

 少子高齢化が進み、バイタリティーのある中高年が増えていることもあってか、年齢の離れた男女が結婚する、いわゆる「年の差婚」が珍しくなくなりました。芸能界でも今年3月、タレントの清水国明さんが、25歳年下の女性と結婚したことを明らかにして話題になりましたよね。清水さんは現在67歳。11月にはお子さんが生まれる予定なのだとか。

  25歳も年が離れているとなれば、「父と娘」と言っていいぐらいの年の差です。もちろん、父親ぐらいの年齢の男性と結婚しても、法律上は何ら問題ありません。ところが、もしも離婚した元夫の父親と結婚しようとしたら……。実は、義理の父親だった男性とは法律上、結婚できないことをご存じでしょうか。

 民法の定める「結婚できない事情」

  法律用語には「婚姻障害事由」という言葉があります。分かりやすく言えば、「結婚できないとされる事情」でしょう。

  前回のコラムで「婚姻適齢」について説明しました。結婚できる年齢が、現行の民法では「男性18歳以上、女性16歳以上」と定められている(2022年4月からは男女とも18歳以上」に)というもので、つまり、「男性が18歳に達していない」「女性が16歳に達していない」ことが婚姻障害事由に当たります。

  日本では当たり前ですが、「他の誰かと結婚している」ことも婚姻障害事由です。民法732条で重婚が禁止されているからです。

  「相手が近親者である」ことも婚姻障害事由になります。民法734条では、「直系の血族及び3親等内の傍系血族間の婚姻」を禁じています。「直系の血族」とは、具体的には、父母、祖父母、子、孫などを指します。「3親等内の傍系血族」とは、きょうだい(2親等)、おじ・おば(3親等)、おい・めい(同)のことです。ちなみに、いとこは4親等なので結婚が可能です。この辺はご存じの方も多いのではないでしょうか。

  さらに、「直系姻族である」ことも婚姻障害事由に当たります。直系姻族とは、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。姻族とは「結婚によって生じた親族」のことで、配偶者の父母や祖父母などが直系姻族になります。

  民法735条では、「直系姻族間の婚姻」も禁止されているのです。配偶者と離婚すれば姻族関係は終わりますし(民法728条1項)、配偶者が亡くなった後に姻族関係を終了させる意思表示をすれば、姻族関係は終了します(民法728条2項)。それなのに、直系姻族の関係が一度生じてしまうと、その人とは決して結婚できないと民法は定めているのです。

  たとえば、ある女性が夫と離婚したとしましょう。そこで、仮に元夫の父親と相思相愛の仲になったとしても、法律上、再婚はできないのです。一方、元夫の兄弟は「傍系姻族」なので、再婚が可能です。

  同じ「元夫の親族」であっても、父親とは再婚できず、兄弟とは再婚できる。つまり「親」か「きょうだい」かで結論が異なるというわけですが、これって「当たり前」のことでしょうか。

「直系姻族」との結婚は倫理的に許されない?

  「そんなの当たり前」と思われる人は、いわゆる「長幼の序」という観念が染みついているのだと思います。というのも、法律が「元義理の親子」の結婚を禁じているのは、「家族内の身分階層制を厳格に維持する」という倫理観によるとされているからです。その昔、民法を作った人たちは「息子の嫁だった女性を父親がめとったりしたら、家族間でもめ事が起こるのは避けられないし、倫理的にも許されない」と考えたのでしょう。

  しかし、現代における家族関係の変化や個人の自由の尊重という観点からすると、この民法の規定は、「婚姻の自由」を著しく制限しているのではないかと思うのです。「法律が倫理観を強制するのってなんだかな……」と思うのは私だけでしょうか? もしも、あなたが離婚した後、元配偶者のお父さん(あるいはお母さん)と再婚したって、私は構わないと思うんです! 

  私たちが市民生活を送るうえでの様々な決まりごとを定めた民法は、明治時代に制定されて以来、社会の変化に合わせて幾度となく改正されてきました。2年前、女性の再婚禁止期間を6か月とする民法の規定が、禁止期間100日に改正されたことは、記憶に新しいのではないでしょうか(ちなみに、前の結婚を解消または取り消した時に妊娠していなかった場合にはすぐにでも再婚可能です)。とは言え、「直系姻族間の婚姻の禁止」のように、旧来の倫理観や慣習に基づく決まりごとがまだまだ残されているのも事実です。夫婦が同じ姓を名乗らなければならない民法の規定を変えて、夫婦別姓の制度を導入するための議論も続けられています。民法が変わると私たちの暮らしにどんな影響があるのか、ぜひ関心を持ってほしいと思います。

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三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。