ロールモデルは「もういらない」 働く女性の本音

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 政府が2020年までに女性管理職を3割まで増やすことを目標に掲げる中、社内で活躍する女性役員や管理職を「ロールモデル」にして、女性社員にお手本にしてもらおうとする企業も多いのではないでしょうか。しかし、会社が提示するロールモデルに違和感を覚えたり、管理職になることに後ろ向きだったりする女性社員が少なくないようです。元地方紙記者で約10年にわたってワーキングマザーの取材を続けるフリーランス記者・宮本さおりさんが、国を挙げて取り組んでいる「女性活躍推進」に対する女性たちの本音を取材しました。

社内に目指す姿がない

 フィットネス関連の会社で総合職として働いている山本良子さん(仮名・大阪府・30代)は現在、育児休業中。山本さんの会社は女性比率が高く、管理職にも執行役員にも女性がいます。

 しかし、こうした人たちは、未婚または結婚しても子どもがいない人がほとんど。子どもがいても、「子育ては親かベビーシッターにお任せしている人」ばかりだそうです。両親が近くに住んでいない山本さんにとって、子どもをベビーシッターに預けてキャリアを積み上げるやり方は「ちょっと違う」と感じるそうです。

 山本さんの会社では、女性のキャリア継続を支援するため、転勤をしなくても済む制度が作られました。しかしその場合は、総合職から一般職に変更しなければならず、昇進も係長止まり。「家族との生活を考えて、『転勤なし』にしたいですが、総合職から“降りる”形になるのでモヤモヤしています」と悩んでいます。

管理職になりたくない

 家族との時間を考えて管理職への道を断念する人がいる一方、管理職になることに自信が持てない人も多いようです。

 今月、都内で大手企業19社の営業職の女性が集まって開かれたイベントで、参加者120人にアンケートが採られました。

 それによると、「営業で管理職になりたいですか?」の問いに対し、「もちろん目指していきたい」と回答したのは、21人。「できるならやってみたいが、自分ができるかどうか今は分からない」(54人)、「そもそも自分ができるとは、どうしても思えない」(30人)「もしできる実力があったとしても自分はやりたくない」(16人)と、管理職昇進に控えめな姿勢が目立ちました。

 医薬系の会社に勤める女性(30代前半)は「女性管理職に話を聞く社内研修が開かれることもあるが、自分が同じようにできるとは思えなかった。時短で管理職になった人がいればいいのですが」と話していました。

自分のキャリアは自分で決める

 こうした働く女性たちの戸惑いについて、慶応義塾大学SFC研究所の上席所員で、キャリアコンサルタントの永石尚子さんは「社内だけでロールモデルを見つけるのは無理がある」と指摘し、「様々な視点から自分のキャリアを選択していくことが必要な時代。準備されたロールモデルに乗っかるのではなく、主体的に自分のキャリアを考えていく必要がある」としています。 

 企業に対しても、永石さんは「特に若い世代は、 社内をまとめる力、いわゆる『社内政治力』 や役職自体でキャリアを評価せず、自分が獲得した能力を発揮できる環境に魅力を感じる傾向にあります。『こうなってほしい』と望む“ロールモデル像”から脱却しなければ、優秀な人材に選ばれなくなってしまう」と話しています。

 「ライフ」と「キャリア」の価値観は人により様々。組織が提示するロールモデルをなぞるのではなく、自らが働き方をデザインする。そんな時代に入っているのかもしれません。

Profile プロフィル

宮本さおり(みやもと・さおり)
フリーライター

 1977年。元地方紙記者。結婚により退社、主婦歴15年。5年間の専業主婦生活を経てフリーランスのライター・記者に。夫の転勤帯同で地方、海外を含めて6回の転居を経験、その間、2人の子どもを授かる。「子育ても仕事もダブルに楽しむ」をモットーに、ワーキングマザーについて取材、執筆活動を続けている。