保護猫の「飼い主」になる、商業施設の譲渡会をのぞいてみた

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「飼い主」との出会い増やす

 保護された捨て猫や野良猫の新たな飼い主を探す譲渡会を、大型商業施設や中心市街地など、人出の多い場所で開く例が増えています。これまでは、自治体の保護施設や地域の公共施設で行っていましたが、保護猫との出会いの機会を増やし、多くの人に関心を持ってもらうのが目的です。

 東京都江戸川区のホームセンター「島忠ホームズ葛西店」の店舗前で先頃、保護猫約30匹の譲渡会が行われました。猫が入った特注の移動車は、ストレスがかからないよう、中が仕切られて、外からの音は聞こえにくく、冷暖房も完備。多くの買い物客が足を止め、中をのぞき込んでいました。猫の飼育を検討中という男性(32)は「保護猫を迎えるのも選択肢の一つ。気軽に来られる場所なので、見学に来た」と話していました。

特注の移動車を使った保護猫の譲渡会。多くの買い物客が足を止めていた(東京都江戸川区の「島忠ホームズ葛西店」で)

 この移動譲渡会は、NPO法人「東京キャットガーディアン」(東京)が昨秋から、都内や埼玉県内のホームセンターや住宅展示場などで開催。約80匹に新たな飼い主が見つかりました。代表の山本葉子さんは「保護している場所に足を運んでくれるのは、愛猫家などに限られます。人出の多い場所であれば、保護猫のことを知らなかった人にも関心を持ってもらえます。猫たちに一つでも多くの出会いを与えたい」と説明します。

保護猫約7万2000匹、殺処分されないのは35%

 環境省によると、2016年度に全国の自治体に保護された猫7万2624匹のうち、新たな飼い主が見つかった割合は35%程度。譲渡会を、自治体の動物愛護センターが実施したり、動物愛護団体が地域の公共施設で開いたりして、新しい飼い主に譲渡される数は年々増えていますが、飼い主が見つからずに殺処分されるケースは依然として多いのです。このため、人出の多い場所で開き、新たな飼い主を探す工夫が始まりました。

 神戸市のコーヒー店「ネスカフェ三宮」前では4月、特注のバスを使った移動譲渡会が初めて開かれました。「ネスレ日本」(神戸市)が、保護猫カフェの運営などを行う「ネコリパブリック」(岐阜市)と連携し、約15匹が譲渡の対象となりました。

 NPO法人「ねこけん」(東京)は今春、東京都多摩市の京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンターで初めて、約200匹の譲渡会を開きました。

企業側にもメリット

 譲渡会は、場所を貸し出す企業にとってもメリットがあるようです。通信販売会社「フェリシモ」は2012年から、神戸市の中心街にある本社オフィスを譲渡会の会場として提供しています。40回ほど開催され、350匹以上の譲渡先が決まりました。広報担当者は「会場で愛猫家の人たちと話ができ、愛猫家向けの新たな商品のヒントを得ることもあります」と話しています。

譲渡会は中心市街地の会社オフィスでも行われている(神戸市の「フェリシモ」で)

 ただ、商業施設など身近な場所であるだけに、十分な検討をせず衝動的に保護猫の飼育を引き受けないよう、注意が必要です。動物愛護活動に詳しいヤマザキ動物看護大学(東京)の准教授、本田三緒子さんは「毎年、協力金などを請求してくる団体もある。譲渡の条件などをよく確認することが大切だ」と話しています。(読売新聞生活部・山村翠)