「成人年齢18歳に引き下げ」で考える「自立した大人」とは

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

 2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられます。成人式の様子も様変わりしそうですね。先月、国会で民法の一部が改正されることが決まりました。日本で成人年齢が変更されるのは、実に146年ぶりなのだとか。これにより、18歳になれば、親の同意がなくとも携帯電話やローンなどの契約ができるようになります。もっとも、これまでと同様に「20歳まではダメ!」というものもあります。たとえば、飲酒や喫煙、公営ギャンブルなどについては、若者の心身の保護を理由に「20歳未満禁止」が維持されることになりました。

 また、結婚できる年齢についても、現行の「男性18歳以上、女性16歳以上」が「男女とも18歳以上」になります。1947年に定められた婚姻年齢に関する規定で、男女に2歳の開きがあったのは、女性の方が心身の成熟が早いからだとか、結婚するにはある程度の経済力が必要になるので男性の婚姻年齢を引き上げた、などとも言われているようですが、いずれにせよ、社会状況の変化を考えると妥当な改正といえるでしょう。

若者の自己決定権広がる

 成人年齢の引き下げについては、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が2007年に成立し、国民投票の投票権が与えられる年齢を「18歳以上」と定めたことで議論が活発になったとされています。15年には、選挙権年齢を「18歳以上」とする改正公職選挙法も成立しました。

 18歳から選挙で投票できるようになり、さらに「成人」と見なされることで、若者が政治や社会のことに関心を持つモチベーションが高まると考えられます。また、公認会計士や医師、司法書士などの資格・免許も、法律上は18歳で取得することができるようになりました。成人年齢の引き下げによって、若者の自己決定権が広がりますから、良い面はたくさんありそうです。

 一方、悪い面にも目を向ける必要があります。

 成人年齢引き下げに向けた関係府省庁の担当者による連絡会議の資料に目を通すと、政府が若者の消費者被害が拡大することや社会経験の少ない若者の労働力が搾取されることを懸念していることがわかります。

 18歳で成人となれば、親権者の同意がなくとも、金額の大きな契約を交わすことができてしまいます。そうすると、未熟な若者をターゲットとした消費者被害が拡大する恐れがあるのです。例えば、若い女性が、無料チケットをもらってエステティックサロンに行ったところ、高額の契約を結ばされたり、インターネット通販でサプリメントを“お試し”で注文したら、いつの間にか定期購入することになっていたり。あるいは、英会話などの勉強系のスクールの契約を結ばされる例も聞きます。実際、そういった消費者被害は後を絶たないのです。18歳と言えば、まさに美容や、学校での勉強以外の学習への興味が芽生える年ごろです。「きれいになりたい」とか「世の中で役立ちそうな勉強をしたい」という思いにつけ込む悪徳業者にだまされてしまうケースが増えるのではないか。そんな懸念が拭えません。

毅然とした対応で被害を防止

 若者を消費者被害から守るにはどうすればいいのか。私は、子供の頃から「いやなことはいやと言う」「自己主張をはっきりする」という自己決定のための基本中の基本、つまり「自分を持って、自分を大切にする」ことを教育に組み込まなければならないのではないかと考えています。現状のような「先生のいうことを聞く子が良い子」というような教育からの脱却を目指すべきなのでは?と思っています。そして、「先生のいうことを聞かずにいやなことをいやと言う子」を異分子として排除するのではなく、「そんな人もいるよね」と受け入れられるような寛容な学校こそ目指すべきではないのか、と思っています。

 悪徳業者の甘い言葉に乗らず、契約をする前、お金を払う前に、もう一度冷静に考えてみる。そして、おかしいと思ったら「しかるべき人に相談してから回答します」とか「今は契約しません」とはっきり返事のできる人を目指しませんか。そのような毅然とした対応で被害を未然に防げる人こそが、年齢にかかわらず「大人」と言えるのではないでしょうか。もちろん、なんでも一人で決断・回答するというわけではなく、時と場合によってはしかるべき人に相談することも大切です。実はこれ、若者に限った話ではありませんよね(「いい年をした大人」でも悪徳業者にコロリとだまされる人は大勢います)。

 成人年齢引き下げのニュースをきっかけに、「大人の自立とは何か」について、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

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三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。