良い睡眠とれてますか? 仕事にも影響

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 働き方改革が注目される中、効率的に働くポイントとして、「眠り」への関心が高まっている。質の良い睡眠は単なる休息にとどまらず、仕事への意欲や創造性も向上させると認識されるようになった。社員の睡眠改善の取り組みを企業が支援する動きもある。

企業が質の改善支援 6時間以下で高リスク

 「朝に、頭がボーッとすることがなくなった。出勤してすぐ仕事に取りかかれるようになり、無駄が減りました」

 日清食品ホールディングス(東京)でデザイナーとして働く社員の大熊仁さんは、この半年間での変化を振り返る。昨年12月から、睡眠時間や眠りの深さを測定する腕時計型センサーを24時間装着。6時間ほどだった睡眠時間を7時間半に増やした。シャワーだけでなく湯船につかるなど、生活習慣を見直した結果、眠りの質も向上。起きると頭がスッキリして体も軽くなったという。「よく寝たほうが仕事の能率が上がる」と実感している。

腕時計型センサーを装着した大熊さん。社員向けサイトで紹介される快眠のコツも、まめにチェックしている(東京都内で)

 大熊さんが参加したのは、社員が睡眠時間の目標を達成したら、国内外の子どもたちの支援活動に同社が寄付する試み。参加は任意で、測定に基づく助言なども行わない。始めてから4か月後には「仕事の効率が高まった」と感じる参加者が半数を超えた。

 睡眠への関心が高まっている背景について、北里大学教授(産業精神保健学)の田中克俊さんは「多くの企業が、生産性向上の観点から、良い睡眠が与える影響に着目するようになった」と解説する。

 「睡眠負債」という言葉も最近、話題となった。米国の専門家が提唱した考え方で、日々の睡眠不足を借金にたとえ、たまると解消が難しくなることを指す。ただ、田中さんによると、米国では「睡眠不足が集中力低下を招き、社会に大きな損失を与える」という認識は1980年代からあったという。「職場で寝不足自慢をするような日本の風潮も、ようやく変わってきた」

 ただ、厚生労働省が発表した2016年の国民健康・栄養調査によると、「睡眠で休養が十分取れていない」という人は全体の20%。年代や性別で分けてみると、30代男性では28%を占めた。

スリープマスターが助言

 眠りの質向上を求める動きは様々に広がっている。寝具メーカー西川産業(東京)の店舗の来店者は、これまで女性が中心だったが、20~30代の男性が相談に訪れる姿も目立ってきた。昨年には需要に応えて「ねむりの相談所」というコーナーを開設。センサーで睡眠データを計測し、計測結果を基に同社の「スリープマスター」が助言する。有名スポーツ選手を広告に起用した、高機能の新型マットレスの売れ行きも好調だという。スリープマスターの速水美智子さんは「睡眠を翌日の競技への準備と捉え、質にこだわるスポーツ選手は多い。同様の考え方が働く人にも広がっているようです」と話す。

西川産業の速水さんが腰に装着したセンサー。後方のパソコンでデータを見ながら助言を受けられる(東京都内で)

 仕事の能率を高めるにはどれだけの睡眠が必要なのか。田中さんは「個人差はあるが、日々の睡眠時間が6時間以下になると、精神衛生上のリスクが高まります」と指摘。「仕事の能率を考える以前に、ぐっすり眠り、しっかり食べるという原点に立ち返り、人間としての健康を第一に考えましょう。元気な生活あってこそ、仕事の意欲や創造性が生まれるのです」

 

質の良い睡眠をとるポイント

 田中さん、速水さんによると、ポイントは以下の通り
・夕方以降はコーヒーなどカフェインを含んだ飲料は避ける。アルコールもほどほどに
・明るい居間から暗い寝室に移ってすぐ寝るのではなく、寝室で少し時間を過ごす。眠りに向けて体が準備する
・夏の室温は25度、冬は22度に設定。湿度は50%に保つと快適に眠れるが、エアコンの風を体に直接当てない
・「これから寝る」というタイミングでパジャマに着替えるなど、決まり事を習慣化する

(読売新聞生活部 福士由佳子)