広がる「フードシェアリング」が環境も家計も救う

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事前のオンライン決済で、店での商品の受け渡しもスムーズだ(東京都目黒区の「PAVILION」で)

 食べ残しや売れ残りなどで廃棄される食品ロスを減らす活動が広がっています。最近、注目されているのが「フードシェアリング」と呼ばれる取り組み。飲食店と消費者をネットでつなぎ、余りそうな食品の情報をシェア(共有)するサービスが今春、相次いで始まりました。

飲食店と消費者で「余りもの」情報共有

 東京都内の大学生、飯野智美さん(21)が、食事の前にスマートフォンでチェックするのが、4月から正式に始まった「TABETE(タベテ)」というサービスです。

 食品ロスの削減を目的にしたフードシェアリングで、食べ物を無駄にしたくない売り手と、お得に購入したい買い手をネットを介してマッチングさせる仕組み。

 サイトを開くと、弁当やパン、総菜などがお得な価格で販売されています。なぜ、安いのかというと、登録している飲食店が、その日に余りそうなものなどを出品しているからです。

 東京・中目黒のダイニングバー「PAVILION」は先月、A4ランクの山形牛入りカレー(800円)を、タベテに出品しました。店長の黒木久弥さん(34)は「店のメニューで提供できない肉の切り落としを有効活用したいと思い、カレーにして手頃な価格で出した」と話します。

 購入する場合は、オンライン決済して、店に取りに行く。飯野さんは「価格が安いだけでなく、食品ロス削減に貢献できてうれしい」と話していました。

 タベテには、主に都心部の約130の飲食店と約2万人の利用者が登録しています。出品する際、飲食店は「揚げ物の形がふぞろいで店で提供できなかった」などと理由を明記。消費者に安心して購入してもらうためです。運営会社社長の川越一磨さん(26)は「出品理由を知ってもらうことは、食品ロス削減への理解にもつながる」としています。

定額制でお得に持ち帰り

 4月に東京都内で始まった「Reduce GO(リデュースゴー)」は、定額制のサービスだ。月1980円(税抜き)を支払うと、登録している飲食店の料理などを1日2回まで持ち帰りできる。運営会社の上村宗輔さん(40)は「定額制だと、受け取りに行かないと損をすると思って利用が促進される」と説明します。

 フードシェアリングは調理品だけではありません。6月末に始まる「tabeloop(タベループ)」は、調理前の業務用食品の仲介をするサービス。売り手は食品メーカーや、採れすぎた野菜の処理に困る農家、市場で値が付かない魚を売りたい漁業関係者などを想定。買い手は外食チェーンや弁当店、学生寮などを予定し、食品は配送するそうです。運営会社の山本和真さん(40)は「大量に仕入れて売れ残りそうなものを、手頃な食材を求めるレストランや食堂などと結び付けたい」と話します。

日本の食品ロス、国連の飢餓救済援助の倍

 食品ロス問題は深刻です。環境省などの推計によると、2015年度の国内の食品ロスは646万トンに上ります。世界で飢餓に苦しむ人々への国連の食糧援助量(約320万トン)のほぼ2倍。

 食品ロス削減に関しては、法制化に向けた動きもあります。公明党は2月、議員立法の骨子案をまとめました。今国会での法案成立を目指しています。ただ、食品ロス削減に特効薬はなく、国民の意識改革と、一人ひとりの地道な取り組みが不可欠。ネットを介したフードシェアリングは、誰でも手軽に継続的に取り組めます。

 東京農業大教授の上岡美保さん(食料経済学)は「タベテなどの取り組みは、売り手は多少でも利益を得て廃棄費用を削減できる可能性があり、消費者も食品ロスについて考えるきっかけになる。活動が広まれば、世の中の意識の変化にもつながる」と話しています。

余った食材を「救済」する料理会

 家庭での食品ロス削減に向けて、アイデアをシェアする取り組みも広がっています。自宅で持て余す食材を持ち寄り、プロの料理人から調理法などを学ぶ「サルベージ・パーティ」というイベントです。

 「salvage(サルベージ)」とは英語で「救済」といった意味。イベントを主宰する「フードサルベージ」代表理事、平井さとしさん(38)は「台所に眠る食材を救おう」という意味を込めたといいます。

 東京・上野で5月に開かれた催しでは、ベトナムで買った乾麺や、塩漬けにして干したすきみタラなどを参加者が持ち寄りました。これらに、当日のテーマ食材である大葉を加えた献立を、シェフの高田大雅たいがさん(31)と考案。レトルトのサツマイモの甘煮はサラダに。ベトナムの麺は、ひき肉とキムチのもとを加えた煮込みへと変身し、この日一番の人気料理に選ばれました。

 平井さんらは、こうした自宅で余ったものをシェアし、食品ロス問題を学ぶ「サルベージ・パーティ」を企画する人材育成にも取り組んでいます。これまでに全国で30人を育成。東京都台東区は今年度、同様の催しを開催するほか、人材育成講座を行う予定です。

サルベージ・パーティの参加者が持ち寄った食材で即席料理を作る高田さん(右)

 富山県は昨年度、サルベージ・パーティを5回開きました。県環境政策課の担当者は、「食品ロス問題は堅苦しく思われがちだが、新しい体験で楽しかったと好評だった。自分たちでも開きたいと、参加者から要望が出た」と話します。

 家庭での食品ロス削減には、「無駄な買い物をしない」「食べ残しをしない」といった日々の心がけが大切。さらに、楽しいイベントを取り入れると、やる気もわき、息の長い取り組みになりそうです。

取材を終えて 

 我が家の冷蔵庫をのぞくと賞味期限切れのわさびチューブや、皮がしなびかかったリンゴがあった。リンゴは好物なのに野菜室の奥に眠っていた。

 食品ロス問題は、誰もが「自分のこと」として認識する必要がある。フードシェアリングのサービスは継続的かつ気軽に食品ロス削減に関われる取り組みの一つと言える。売り手と買い手の数が増え、サービス提供エリアが拡大すれば広がりが出るだろう。(読売新聞生活部・遠藤富美子)