出産や授乳の機会が減って、日本の女性の生涯の「生理(月経)」回数が、かつては50回程度だったのが450回ほどに増えたとも言われています。この生理、すべての女性にかかわるものではあるのですが、実はその考え方やとらえ方は国や文化圏によって、大きく異なります。今回は、生理用品のCMや、進化する生理用品にスポットを当てながら、生理にまつわる「あんなことやこんなこと」について紹介します。
どれを使う? 進化する生理用品
日本の店頭で見かける生理用品といえば、ほぼナプキンですが、欧米ではかなり前からタンポンが主流です。そのため、ドイツではナプキンよりもタンポンの方が「進化」しています。一方、ナプキンの種類や品質について、私の経験では、日本の方が良い印象です。
では、ヨーロッパにどういった種類のタンポンがあるのかというと、吸収力がアップした「羽根つきのタンポン」のほか、量が少ない日用のもの、水泳を含むスポーツ用の商品など。タンポンに関しては本当にバリエーション豊かです。
でも、生理用品はさらに進化中で、ヨーロッパでは2年ほど前から「月経カップ」を使う女性が増えました。医療用シリコンでできた柔らかくカラフルなカップで、膣にいれて使います。たとえば、ヨーロッパで使われているこちらは、1回入れると、量にもよりますが最大12時間程度まで使え、使用後はカップを取り出して、中身を捨てて洗って、また使います。生理が終わって殺菌しておけば、同じカップを15年ほど使えるという非常にエコなものです。私の知人でスイス在住の産婦人科医はこのカップを絶賛しておりました。

「使いやすさ」ももちろんですが、ヨーロッパでは日本よりも体の線を見せるファッションが市民権を得ていて、Tバックを好んではく女性も多いので、そういった「ファッション的なもの」も月経カップの使用を後押ししているといえそうです。日本でも通販などで入手可能ですが、まだお店ではあまり見かけません。
生理用品のCM、ドイツと日本の違い
生理用品のCMを見ると、その国や社会の生理に対するとらえ方や考え方が伝わるので面白いです。
日本のCMは「仕事中も安心」「朝まで安心」というような「日常生活の安心感」を伝えるものが主流です。起用されるのも、どちらかというとほんわか癒し系のタレントさんが多い印象です。
一方、ドイツのCMからは「非日常的なシチュエーションでも安心」「こんなにアクティブなことをしても大丈夫!」というメッセージが伝わってきます。生理用品のCMで起用されているのは、短パンで踊っているDJや女子サッカー選手のゴールキーパー。
これらのCMでは、快活でアクティブな女性像を発信していることが多いのです。
タンポンが教室に飛び交っても……
そういえば私が通っていたドイツの学校では、離れた席に座る友達にタンポンを渡すために、投げたタンポンが教室の空中を舞う、なんてことがしばしばありました。共学だったのですが、目の前をタンポンが通過した男の子は「あー、そうか。そうだよな」と特に驚く様子はありませんでした。
こうやって見てみると、ドイツのほうが生理に対してオープンな印象を受けますが、一方で、ドイツ社会には「生理に関する女性の悩み」に対して非常にドライな面があるのでした。
合理主義であるためか、「女性は生理があってつらい」というような女性同士の愚痴や悩み相談には、同性からも容赦なく「月経カップを使えば? 痛みがあるなら、医者に行ってピルをもらえば?」と回答が返ってくることも。そこには「同じ痛みや悩みを分かち合おう、共感し合おう」という感覚はあまり見られません。なんというか「生理というものがある女の性」のようなものを前面に出すことを嫌がる傾向があります。
欧米では「生理があるから女性はつらい」という悩みをオープンにしてしまうと、「弱み」を自ら発信してしまうと受け取られ、女性の活躍の際に不利だという意見が主流です。そのため「生理の不便さ」は、あまり強調されないのです。そういった背景からCMに関しても、生理中の女性がいかにアクティブで快適に過ごせるかということが強調されているようです。
ドイツにはない「生理休暇」
日本では実際に生理休暇を取る女性は少ないものの、制度上は「生理休暇」があります。しかし、ドイツでは生理休暇は存在しません。
それを不満に思う女性も一部におり、以前あるドイツ人女性は「もし『男性』に生理があったなら、月に一度は国をあげて祝日にしたかもしれないのにね」(女性の苦しみにはお構いなしだ、という意味)と冗談を言っていました。
実際に、ドイツを含むヨーロッパには、「生理だから休む」という感覚はないため、日本や中国の「生理休暇」の制度は「女性に優しい制度」ということで時に良い意味で驚かれます。ただ日本で実際のところ、この制度はあまり使われていないと話すと、「制度があるのになぜ?」と不思議に映るようです。
生理についてどちらのほうが女性のニーズに理解があるのか、どちらのほうがオープンなのか、というのは本当に「とらえ方次第」なのかもしれない、なんて思いました。