誤った「指導」から子を守る、体罰と懲戒の境界線は?

弁護士三輪記子の「女もつらいよ!」

 日大アメフト部の危険なタックル問題が話題ですが、教育現場での「指導」の危うさについて考えさせられるニュースを目にしました。

 毎年300人前後の体育教員を輩出する日本体育大学(東京)の調査で、「体罰」を容認する学生が約1割に減ったという内容です。調査は、日体大が2013年度以降に入学した全学生を対象に実施。13年度に入学した学生が2年生の時は、体罰を「容認」「どちらかと言えば容認」と回答した学生が23%いたのに、彼らが4年生になった時に容認派は11%に減ったというのです。

区別が難しい「体罰」と「懲戒」

 言うまでもなく、体罰は法律で禁止されているのに、将来の教員の卵に容認派がいると知ってとても驚きました。

 学校教育法11条では、校長及び教員は児童・生徒の指導に当たって、いかなる場合も体罰を行ってはならないと、体罰を禁止しています。でも、同じ条文で、校長及び教員が教育上必要と認めた時は、問題を起こした児童・生徒に「懲戒(制裁を与えてこらしめること)」を加えることができるとも書いています。つまり、「体罰」なのか「懲戒」なのか、区別が難しいケースが少なくないのです。

 とりわけ、部活動の「熱血指導」の中に、その線引きが危ういケースが潜む気がします。

 最近も、東海地方の公立高校で女子ハンドボール部のコーチをしていた男性講師が、「練習で手を抜いた」ことを理由に、複数の部員の顔を殴ったり、髪の毛をつかんで振り回したりといった体罰を繰り返していたと報じられました。また、同じく東海地方の公立高校のサッカー部では、学業の成績が悪い部員の頭髪を丸刈りにするルールを作っていたそうです。丸刈りの強要は「体罰」に当たる可能性があるでしょう。髪を切るということは「身体に対する侵害」と捉えられるからです。

 その行為が体罰に当たるかどうかは,児童・生徒の年齢や健康状態、心身の発達状況、懲戒の態様などを総合的に考えて判断する必要があります。また、教員や児童・生徒、その保護者の主観に頼って判断するのではなく、客観的な判断が求められます。

昔も今も体罰は間違った指導

 文部科学省は2013年3月、各都道府県の教育委員会などに、体罰禁止の徹底などを求める通知を出しています。この通知には、部活動について「指導と称し、部活動顧問の独善的な目的をもって、特定の生徒たちに対して、執拗しつようかつ過度に肉体的・精神的負荷を与える指導は教育的指導とはいえない」と記されています。この通知、現場の先生方に徹底されているのでしょうか? いまだに、「部活は厳しくて当たり前」「この子の成長のために」などという理屈(本当は理屈でもなんでもありません!!)のもとに、体罰が行われているのではないかと心配です。

 体罰に関するニュースが流れるたびに、「昔は体罰が当たり前だった。今の生徒は軟弱だ」という人がいますが、完全に間違っています。昔も今も体罰に伴う恐怖感では、人は成長しません。恐怖から逃れるために指導者に従う“ロボット”を作り出すだけです。自ら考えないロボットが指導者になったら、今度は自身が体罰をふるう側に回ってしまいかねません。

 いま教育現場に本当に必要なことは、ロボットではなく、「自ら考える人間」を育てること。私は、自分も我が子も、そして周りの人たちも、誤った指導の被害者にも加害者にもしたくありません。そして、「昔はこんなのは当たり前だった」という人に「NO」と言いましょう。

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三輪記子
三輪 記子(みわ・ふさこ)
弁護士

 三輪 記子(みわ・ふさこ) 弁護士。1976年生まれ、京都市出身。東京大学法学部卒、立命館大学法科大学院修了。2010年、弁護士登録。「白熱ライブ ビビット」(TBS系)、「キャスト」(朝日放送)などにレギュラー出演し、コメンテーターとしても活躍中。2017年に女性弁護士2名の事務所「東京ファミリア法律事務所」を開設。