「オーガニック」って何? 生き方・暮らし・音楽まで広がる理由

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健康 ナチュラル志向 丁寧な暮らし

 「有機の」を意味する「オーガニック」という言葉が、様々な場面で使われています。「オーガニック系」「オーガニックライフ」――。本来は農産物に使われる言葉が、なぜこうも広がっているのでしょう?

 東京都千代田区で4月下旬、「オーガニックライフTOKYO」というイベントが開かれました。会場に足を運ぶと、入り口には「ヨガ&ライフスタイルイベント」と大きく書かれたポスターが。来場者の大半は女性で、30~40代ぐらいの人が多いよう。

女性参加者らでにぎわう「オーガニックライフTOKYO」。「オーガニック」とヨガが一体化していた(東京都千代田区で)

 イベントでは、「代謝アップヨガ」「インナーシェイプヨガ」「産後のたるみ引き締めヨガ」など、細かな目的別のヨガ講座が目白押し。一方、物販のコーナーにも多くの店が並んでいました。

 「オーガニック水歯磨き粉」「オーガニックアボカドシャンプー」など。グルテンを含まないガレットを売っていた店の人は「ヨガのイベントには体に気を使う人がいっぱい来る。店のコンセプトに合う」と出店理由を話していました。衣料品を扱う店の人は「環境負荷が低い天然素材を用いたブランドを扱っている。ここに集まる人たちは、そうしたものに理解がある」といいます。

 イベント事務局長の守田敦子あつこさんは「私たちは、オーガニックを『有機の』だけでなく『本質的な』という意味で使っている。来場者が健康で本質的な豊かさに包まれるように、という思いで開いた」と話してくれました。イベント名の通り、オーガニックとは「生き方」ということのようです。

 伊勢丹新宿店の「ビューティアポセカリー」は「ナチュラル・オーガニック」を基本概念に、化粧品やヘアケア・ボディーケア商品、食品などを扱う人気の売り場です。

伊勢丹新宿店の「ビューティアポセカリー」。化粧品のほか茶葉なども取りそろえる(東京都新宿区で)

 「有機農業」の素朴なイメージとは異なる洗練された空間。ナチュラル志向を見通して売り場を設けたところ順調に支持が広がり、2012年に大幅に拡張したといいます。「女性を内と外から美しく健康にする」とのキャッチコピーの通り、オーガニックは「美」や「洗練」といった概念も含むのでしょうか。

 矢野経済研究所の調査によると、「自然派・オーガニック化粧品市場規模」は17年度に1298億円。毎年5%程度拡大していて、18年度もその傾向は続くと予測しています。

 女性誌「VERY」(光文社)には、「Mrs.オーガニックさんのおつかいモノ」というコーナーが。Mrs.オーガニックさんとは、素材や心地よさ、丁寧な暮らしを大切にするママのことを指すといいます。

 そうしたママたちが贈り物や手土産にしたくなる小物や、ヘアケア商品、食品などを紹介。同誌編集部は「結婚、出産を経て丁寧な暮らしを心掛けるようになった読者が増えた」と説明しています。

 このほか、生楽器の音が際立ち、落ち着いて聴ける「オーガニックミュージック」と呼ばれるジャンルも登場しています。

 こうした現象について、電通の杉村慶明よしあきさんは「消費者のニーズが『安全・安心』から『健康』へ移りつつある。そうしたニーズに応える商品やサービスが浸透してきたことで、今までになく、オーガニックはより深く、より広く生活に根ざしてきている」と分析しています。

消費スタイルに影響

 オーガニックには、似たような概念の言葉があります。エシカル、ロハス、ボタニカル……。

 ファッション文化論が専門で、ライフスタイルの変遷に詳しい甲南女子大准教授の米澤泉さんによると、これらの言葉は重なり合う概念を持ち、東日本大震災を契機に広がったといいます。「自然環境や、健康に配慮した暮らしをより大切にするようになった」と指摘しています。

 インテージリサーチ社が17年春、20~69歳の男女1万人に行った調査によると、買い物をする際にオーガニックやエシカルなどの用語を見聞きした場合、「買いたい方へ影響される」と答えた人は45%。「影響されない」は38%、「買いたくなくなる」は17%だった。

 「影響される」と答えた人の「購買意欲を刺激される関連用語」(複数回答)は、オーガニックが57%でトップ。エコ(53%)、ハンドメイド(41%)、フェアトレード(27%)、ロハス(21%)、エシカル(3%)などが続きました。

 米澤さんは「オーガニックは食べ物から化粧品に展開して、20~30歳代やアラフォー女性たちに支持を広げた点に特徴がある。他の言葉より『オシャレ』と関連づけやすい面があり、一種の流行になっている」と分析しています。

熱はらむ市場

 取材を終えて 商品を企画したり販売したりする際、いかにして付加価値を見いだし、価格を上げられるかに腐心する、というのはよく聞く話だ。オーガニックもしかり。環境や健康によいことは、現代において付加価値の切り札になる。オーガニックという言葉には優しいイメージが伴うが、商品の提供側は熱心だし、商品を買う側も健康に熱を上げている。優しさだけでなく、オーガニック市場は「熱」もはらんでいると感じた。(読売新聞 荒谷康平)