家事「手抜き」のススメ、現代の主婦像って?

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 家事の「手抜き」が注目されています。共働き家庭が増える一方で、料理や掃除を納得できるまで出来ないことに罪悪感を感じる女性が多いことが背景にあるようです。家事を上手に手抜きする工夫を取材しました。

本や雑誌を参考に

 「時短テク」や「シンプル家事」など、料理や掃除をムダなく効率的に行う方法を紹介した本や雑誌が人気です。中を見ると、女性の家事負担を減らすために「手抜き」を勧めているものが多くあります。

 例えば、週末に料理を作り置きするレシピをまとめた本「つくおき」。2015年に出版されシリーズ累計100万部を突破しました。最新作の「じみべん」は、作り置きを詰める弁当のレシピ本。少し前にもてはやされた手間をかけて見映えよくする「キャラ弁」や「デコ弁」とは一線を画しているようです。

 著者で1児の母の森のぞみさんは、システムエンジニアとして働きながら考案したという。「私のレシピを見て、そんなに頑張らなくてもいいんだと思ってもらえればうれしい」と話していました。

老舗雑誌も刷新

 創刊30年の主婦向け雑誌「レタスクラブ」は昨年春、誌面内容を刷新。1食4品を作るといった良妻賢母的な特集から、「2品くらいでもいいんじゃない」という路線に変更しました。刷新号は完売するなど売り上げが伸びています。

なぜ手抜き?

 なぜいま、手抜きが注目されているのでしょうか。生活史研究家の阿古真理さんは「戦後の高度成長期に一般化した主婦像が、今の時代にそぐわなくなってきているから」と指摘します。3人の子どもを育てる東京都内の会社員女性(35)は、家事がきちんとできないことで、自らを責めてしまうことがあるといいます。

帰宅後、1歳の長女を抱きながら、急いで子どもたちの夕食を用意する会社員女性(東京都内で)

 午後6時頃に帰宅すると、おなかをすかせて泣き出す長女(1)を抱いてあやしながら、夕食の準備に取りかかる。その間にも長男(7)の宿題をみたり、兄にちょっかいを出す次男(4)を叱りつけたりと大忙し。冷凍食品に頼ることも多く、掃除は週末に後回しになってしまうことも。「専業主婦だった母親のように家事をこなせず、イライラしてしまう」と話します。

家事の外注に抵抗

 阿古さんによると、家事に悩む女性の多くは、就労の有無を問わず、家事の基準が専業主婦だった母親のやり方であることが多いといいます。毎日手の込んだ料理を作り、家をいつも清潔に保ち、子どもと夫をかいがいしく世話する主婦像。そのため、家事を減らしたり、外注したりすることに抵抗を感じているようです。

日本の主婦は孤軍奮闘

 内閣府の16年の調査では、18歳以上の女性の4割近くが「妻は家庭を守るべきだ」という考えに賛成でした。ガス機器メーカーのリンナイが昨年、既婚で共働きの男女を対象に行った調査では、米国では85%が家事代行サービスを利用したことがある一方で、日本は12%。「私がやらなくては」と孤軍奮闘している姿が浮かび上がります。

半世紀前の主婦像への反動?

 一方で、共働き世帯の数は、1990年代後半に専業主婦世帯を上回り、現在は2倍近くになりました。家事負担を減らす機器やサービスも広がっています。手抜きへの関心の高さは、時代に合わなくなってきた半世紀前の主婦像への反動にも見えます。

理想像を疑う

 家事の時短を研究する本間朝子さんは、仕事と家事の両立で苦労した経験から、効率的な家事を提案する。例えば、ハンガーで干した洗濯物は畳まず、そのままクローゼットへ。「適度な手抜きは、だらしないことではなく、家族や自分の時間を増やす工夫です」

 家事に負担を感じていたら、「できない」と悩むのではなく、その理想像を疑ってみることも必要です。

家事=愛情ではない

 家事を頑張りすぎて、無理していないだろうか。「『家事のしすぎ』が日本を滅ぼす」の著書があり、働きながら3人の子どもを育ててきた翻訳家の佐光紀子さん(56)に、上手に「手抜き」をするための心の持ち方を聞いた。

 佐光さんは外資系金融機関で働いていたことがある。外国人の友人と交流する中で、「家事=愛情」という捉え方が、日本独特のものであることに気付いたという。

 日本で朝ご飯といえば、母が早起きして手作りする温かいご飯とみそ汁の一汁三菜が理想とされている。一方、欧米ではカフェオレとクロワッサン、シリアルと牛乳など、シンプルに済ませるのが一般的。東南アジアでは、屋台で済ませる人も多い。

丁寧な家事が正しいとは限らない

 「手作りできないから、愛情が足りないなどと気にする必要は全くありません」と佐光さん。自分が理想とする家事のやり方に固執しないことも大切だ。実母から教わった丁寧な家事が、必ずしも正しいとは限らないからだ。

 仕事が忙しくて家事に手が回らないときなどは、「仕事が忙しくて、できない」と遠慮せずに、きちんと家族に伝える。夫や子どもも家事を分担する。佐光さんは、長女が中学生の時、制服のアイロン掛けを断ったことがある。それを機に、長女は自分でアイロンを掛けるようになったという。

できないことは省略化

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 すべてを自分一人で完璧にやろうとしない。夫の健康管理は妻の役割などと構えず、夫に任せる。「夫も子どもも、自活できない人間になっては、将来困るはずです」。できないことや苦手なことは、家事代行に外注したり、便利な家電やシステムを使ったりして省力化する。

 佐光さんは「私たちが上の世代から刷り込まれてきた家事の呪縛に気づき、『やらなくていい』ことを手放していけば、きっと、子や孫の世代の女性たちが楽になるはずです」と話している。

代行サービス利用

◎取材を終えて 水回りの掃除が嫌いなので家事代行を定期的に利用している。せっかくの休日に、やりたくないことをやってイライラしたくないからだ。

 罪悪感が全くなかったわけではない。ただ、プロの掃除の技は素晴らしい。家の中が以前よりきれいになったうえに、笑顔で子どもに向き合う時間が増えたので満足している。

 しかし、それを人に話すと、「えーっ」と眉をひそめられることが、男女問わず多い。そんな顔をされない社会になれば、女性たちがもっと生きやすくなるのだが。(宮木優美)