「人生の質」も良くなる!? 眠りの質を上げる六つのポイント

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 健康や美を保つのに必須の「快眠」。でも、なかなか寝付けなかったり、スマホで動画を見てしまったりして、睡眠不足に陥りがちな人も多いのでは? 太陽光線が強くなる時期には、睡眠の質が落ちやすい要因もあるようです。人工知能(AI)研究者で脳科学に詳しい黒川伊保子さんが、快眠のコツについて語ってくれました。

眠っている間に脳が進化

 私たちの脳は、眠っている間に進化します。起きている間の出来事を脳内で何度も再生し、過去の記憶と照らし合わせて精査し、知恵やセンスを作り出すとともに、新しい記憶として定着させていく。脳はそうした作業を眠っている間に行っています。

 よく眠ることで脳はより進化し、記憶力、知識力、発想力を高めます。また、新陳代謝ホルモン(成長ホルモン)や生殖ホルモンも、眠りのホルモン(メラトニン)と連動して分泌されます。このため、上質の眠りを心がけることは、健康で美しい身体や、恋愛力を高めるためにも大切なのです。よく眠る、つまり「眠りの質」を良くすることは、「人生の質」を良くすることだと言っても過言ではありません。

(1)夜は早めに就寝し、メラトニン分泌を活性化させる

 人類は何万年もの間、夜の暗がりの中で眠りに就き、夜明けとともに目を覚ます。そんな生活を送り、脳を進化させてきました。このため、脳は網膜に当たる光の強弱に反応して、よりよく動くように設計されています。

 もちろん、現代人だって、昼夜のリズムで寝起きするのが一番。暗がりの中でしか出てこないホルモンや、朝日の刺激でしか出てこないホルモンがあって、それらが脳を潤滑に動かしているからです。

 夜になって暗くなると、眠りを作り出す「メラトニン」という脳内ホルモンが分泌されます。メラトニンの分泌量は、午後10時ごろから午前2時ごろまで眠っている間に加速度的に増えて、午前2時の分泌量が朝6時ごろまで続くとされています。

 メラトニンは意識領域の信号を落とし、脳の持ち主を心地よい眠りにいざなうとともに、脳を「知識工場」に変えます。メラトニンがしっかり出ていることで、知力・能力・センスが向上し、記憶が定着しやすくなるのです。さらに、眠りは新陳代謝を推進して、疲れも取ります。メラトニンがしっかり分泌されることが、睡眠の質を良くするのには不可欠です。午前2時以降に寝る人は、メラトニンの分泌が最高値に達しないまま朝を迎えてしまうため、よい眠りは得られないということになります。

 本来なら午後10時に就寝するのが理想ですが、それが無理だという人も、10時を過ぎたら網膜を著しく刺激する携帯端末の凝視などは極力避けて、読書や瞑想、無理のないストレッチなどをして心穏やかな状態にし、午前0時には眠りに就くよう心掛けてください。

 ちなみに携帯端末は、メラトニン分泌の最大の敵。目を刺激するとして話題のブルーライト(青色光)だけではなく、手のひらに載るような小さな面積に何十万画素という光の粒がひしめき合っていて、彩度の高い色彩を放ち、高速でスクロールされています。人類はこれだけの光の刺激にまだ慣れていないため、メラトニンのみならず、成長ホルモンや生殖ホルモンも分泌しにくい事態に。真夜中の携帯端末は、極力避けることをお勧めします。

真夜中は携帯端末の使用を極力避けること(写真はイメージ)

(2)早起きをしてセロトニン分泌を活発化させる

 目が暗さを感じたら分泌するのがメラトニンですが、逆に、目が朝の自然光を感じると分泌されるホルモンもあります。脳を活性化するセロトニンです。

 セロトニンは、脳全体に電気信号をいきわたらせ、すっきりとした寝覚めをもたらします。一日中、情緒を安定させる働きがあり、意欲を下支えしてくれるので、「落ち込みにくく、穏やかな達成感を感じやすい」一日を過ごせます。別名「幸福ホルモン」とも呼ばれます。

 このセロトニンが寝覚めから一定時間たつと、メラトニンに変化することで、メラトニン分泌の加速を助けます。このため、早起きをして、しっかり活動を始めた人ほど、夜になれば自然に眠くなり、ぐっすり眠れるという仕組みなのです。

 というわけで、夜ぐっすり眠るためには、その朝に早起きをすることが重要です。「今夜からしっかり眠ろう」と心に決めたら、その日の朝に早起きすることから始める必要があります。「早寝・早起き」という言葉がありますが、快眠のためには「早起き・早寝」の順番が正しいと言えます。

(3)ビタミンBが豊富な卵を食べる

 セロトニン、メラトニンといった脳内ホルモンを作るには、必須アミノ酸のトリプトファンやビタミンB群などが必要になります。ビタミンB群は、牛肉、豚肉、魚類、野菜類など多くの食品に含まれていますが、なかでもオススメなのは卵(鶏卵)です。卵には、ビタミンB群のほか、レシチン、葉酸やコレステロールといった脳の働きに必要な成分が豊富に含まれています。夜、なかなか寝付けないという人は、卵スープを飲んでみるといいでしょう。

夜、なかなか寝付けない人には卵スープがオススメ(写真はイメージ)

(4)毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる

 良質な睡眠を得るには、規則正しい生活を送ることも良い手です。

 「明日起きる時間」を思って寝ると、神経系の中にある体内時計を使って、脳は「その時間までに、最も効率のいい睡眠をする」ように、あらかじめプログラミングして、それを遂行するかたちで睡眠をします。このため起床時間を念じて寝ると、睡眠全体の質が上がるのです。

 さらに、毎日、同じ時間に寝て、同じ時間に起きれば、この睡眠プログラムの質が上がると言われています。規則正しい生活は、同じ睡眠時間でもより良い睡眠をすることになり、得策と言えます。

 もっとも、「休日の朝ぐらい、ゆっくり寝ていたい」という人も多いでしょう。脳は意外に器用で、「平日パターン」「休日パターン」といったように、複数の睡眠プログラムを持つことが可能です。例えば、仕事で日勤と夜勤がある人は、交代勤務を繰り返すことで、脳に「日勤パターン」と「夜勤パターン」の睡眠プログラムが確立されていくことに。

 いずれにしても、「いつも、なんとなくばらばら」では、脳はパターン化できないので、もったいないのです。

(5)夜は入浴で心身をリラックスさせる

 眠りの質を上げるには、夜、お風呂に入ることも大切です。バスタブに浸かる、という意味です。夜、お風呂に入ると、午前1時半から2時のメラトニンの分泌加速が何倍にもなるというデータも。「朝シャワー派」と「夜お風呂派」では、眠りの質が大きく違うということがわかっています。

眠りの質を上げるには入浴も大切(写真はイメージ)

 そのアドバンテージを生み出すのは、なんと「湯冷め」効果。バスタブに浸かると、体表面の温度が一気に41~42度になります。この温度が内臓や脳の中心にまで届いてしまうと、酵素や細胞を壊してしまいます。そのため体表面の温度が上がると、脳は体内深部温度や脳内深部温度を下げて、熱から臓器を守ろうとするのです。いわゆる湯冷めですね。この体内温度分布が、眠りのきっかけになるのです。

 体内深部温度、脳内深部温度が下がると、自然に自律神経が、体の動きを活発化させる交感神経系から、鎮静化させる副交感神経系にスイッチング。その効果で、脳が「気持ちが落ち着いてリラックスする」睡眠モードに変わります。

 お風呂に入らなくても、ぐっすり眠れて、記憶力がいいという方はいいけれど、眠りや記憶力に今ひとつ満足していない方は、ぜひ、試してみてください。

 ちなみに、何時に何度のお風呂に入るべきかは、かなり個人差があり、ご自分で正解を見つけてください。ただ、「床に入る1時間半ほど前に、少し熱めに感じるお湯で入浴」すると効果があると答える方が多いので、そこから始めてみるといいかもしれません。

 また、「体内深部温度が低く、手足の温度が高い」という、睡眠に適した体温分布を邪魔しない、適度な通気性と保温性を兼ね備えた寝具で寝ることも大事です。背中に熱がたまる寝具は、一度見直してみるといいかもしれません。

(6)仕事の合間に20分昼寝をする

 今の季節は、夏至に向かって日が長くなり、太陽光線も強さを増していきます。強い太陽光は、脳にとっては大きなストレス。脳の中心部につながっている視神経が太陽光を受けることによって緊張し、脳を刺激するからです。日が長くなればなるほど、脳はストレスをためこんで疲弊していき、夜の眠りの質も悪くなってしまいます。

20分間ほどの昼寝で脳をリフレッシュ(写真はイメージ)

 そこで日中、仕事の合間、昼休みの時間などに20分間ほど睡眠を取ることをオススメします。脳が一時的に太陽光の刺激から遮断されてリフレッシュされる効果があります。睡眠ほど、脳をストレスから解放する方法はないのです。

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黒川伊保子
黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)
感性アナリスト

 株式会社感性リサーチ代表取締役、人工知能研究者/脳科学コメンテーター、感性アナリスト、随筆家。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリで、AI(人工知能)の研究開発に従事。2003年、感性リサーチ社を設立。人工知能研究、脳科学の見地から「脳の気分」を読み解く感性アナリスト。また、 「市場の気分」を読み解く感性マーケティングの実践者であり、「男女脳の気分」を読み解く男女脳論の専門家、「ことばが脳にもたらす気分」を読み解く語感分析の専門家でもある。近著に「英雄の書」(ポプラ新書)、「前向きに生きるなんてばかばかしい」(マガジンハウス)、「恋愛脳」「夫婦脳」「成熟脳 ~脳の本番は56歳から始まる」(新潮文庫)、「母脳」(ポプラ社)、「女の機嫌の直し方」(インターナショナル新書)など。