知っているとお得な「予約が取りづらい店」に行く方法

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 せっかく予約したのに、都合が悪くなってやむなくキャンセル――。こんな経験がある人は少なくないでしょう。そうしてできた空席や空室などを、別の利用者につなげるサービスが登場しました。予約の取りづらい店から、思いがけない空席情報が届く楽しみもあります。

利用者「予約取りづらい店に行ける」

 スマートフォンの画面に、コミュニケーションアプリ「LINE」の新着メッセージが表示されました。「キャンセル情報 店舗名【東京都】レフェルヴェソンス 人数2名様……」。予約がキャンセルされて空席ができ、利用できるようになったことを知らせる内容です。

キャンセル情報があるとLINEでメッセージが届く。「通知をオンにしておけば、新着情報をすぐにチェックできる」と好評だ

 このサービスは「ダイナースクラブ ごひいき予約」という名前で、「三井住友トラストクラブ」(東京)が昨年8月に始めたサービス。契約する店舗からキャンセル発生の連絡が入ると、LINEでサービス利用者にメッセージを発信します。ダイナースクラブのLINE公式アカウントを「友だち」に登録しておくだけで利用できる仕組みです。

 東京都港区のフランス料理店「レフェルヴェソンス」の青島壮介さんによると、「『同行予定者が体調不良』といった理由による直前のキャンセルが毎月10件ほどある」そうです。

 これまでキャンセルが出た場合は、席を埋められない、食材を廃棄しなければならない、といった問題がありました。このサービスを使ってから、青島さんは「メッセージ発信から早くて5分ほどで新たな予約が入ります。新規のお客様が多く、足を運んでもらうきっかけにもなっている」と手応えを感じています。

 割引などの特典はありませんが、利用者からは「どの店の空席が出るか、ゲーム感覚で待つのが楽しい」「予約の取りづらい有名店に行ける」などの声が上がっているそうです。

ホテルでも使える

 キャンセルを穴埋めする動きは、インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及とともに一気に広がってきました。飲食店のほか、ホテルやコンサートなどでも、同様のサービスが始まっています。

 ホテルの宿泊予約を転売するサイト「Cansell」は、キャンセル料を払わなければならない予約だけを売りに出せるのが特徴です。運営会社「キャンセル」代表の山下恭平さんは「キャンセル料が発生しないうちは、普通にキャンセルすればいい。予約した値段より安く譲り渡すことにはなりますが、いくらかでも回収したいという人の助けになれば」とサービスを始めました。同社がホテルに予約の有無を確認し、名義変更まで行うことで、安心して使ってもらえるようにしているといいます。

チケットは通常価格で

 コンサートなどのチケットは、熱いファン心理を逆手に取り、通常より高く転売することが社会問題化しています。そこで、「チケットぴあ」は、発券前の権利を譲る「リセール」というサービスを開始。発券後でも転売できるサイト「チケトレ」も、昨年6月から運営しています。いずれも通常の価格で売買する仕組みです。

 大和総研主任研究員の市川拓也さんは、「予約を活用したサービスも、利用しない時に車を貸したり、技術を売ったりする『シェアリングエコノミー』の一つ」と話していました。

 「同種のサービスは今後も多様化すると見られます。利用する際は、転売する場がきちんと運営されているか、トラブル回避の工夫がされているかなどを見極める必要があります」と、市川さんはアドバイスをしてくれました。

「連絡なし」で飲食店被害

 キャンセルで生じた「空席」を、有効活用するサービスが注目される背景には、飲食業界特有の「無断キャンセル問題」があります。

 「インターネット予約が簡単にできることで、無断キャンセルが増えた」と、大阪市北区で人気店「熊の 焼鳥やきとり 」を営む熊脇 稔康としやす さんは打ち明けます。

 同店では、ネット予約のうち、多い月には100件ほどがキャンセルされることもあったそう。「ネット予約では、キャンセルの99%が何の連絡もない。こちらから電話しても出ない」そうです。キャンセルの連絡がない限り、食事を用意しなければなりません。「仕込んだ鶏は、まかないで食べるか、焼く練習に使うしかない」

 無断キャンセルを何とか減らそうと、熊脇さんは昨年8月分から予約チケットを販売しました。利用が多い午後6~7時を除き、4時からと9時半からの予約を「チケットぴあ」で販売。チケット代として1人3000円を支払う必要がありますが、同額が当日の飲食代から差し引かれます。大阪市内を中心に10店以上で同じ取り組みが広がっているそうです。

コンサートなどのように事前にチケットを購入して予約する。4月は完売したという(大阪市の「熊の焼鳥」で)

 今年3月、東京簡裁は飲食店の貸し切り予約を連絡なしにキャンセルした女性に、損害賠償の支払いを命じる判決を出しました。訴えたのは東京都内の飲食店主で、代理人の弁護士、石崎冬貴さん(横浜パートナー法律事務所)は、「無断キャンセルの被害を訴え、損害賠償が認められた事例はおそらく初めて」と話していました。

 ホテルなどではキャンセル料が明文化されていますが、飲食店はそうした決まりがないことが多い。「飲食店は無断キャンセルされても泣き寝入りしてきた。キャンセル料を設定したり、予約確認を徹底したりしながら、利用者のモラル向上を呼びかけることが必要」と石崎さんは指摘しています。

急な空き情報「悪くないかも」

 取材を終えて 旅行に出かけるときなど、きっちりスケジュールを決めて回りたいと考える人と、行き当たりばったりな人がいます。記者はどちらかというと前者。

 インターネットとスマートフォンの普及した今日、最新の空席や空室の情報を、利用者が知ることができるようになりました。「きょう空きが出ました」――。思いがけないメッセージで、その日の予定を決めるのも悪くないかもしれません。(読売新聞生活部 内田淑子)