広がる「グローサラント」 できたてを味わい、買う楽しみ

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スーパーの食材を使ったメニューを味わう女性たち(東京都調布市の成城石井トリエ京王調布店で)

 スーパーで販売する食材を使い、併設した直営の飲食店などで、できたての食事を提供する「グローサラント」(grocerant)が増えている。米国発祥で、食料品(grocery)とレストラン(restaurant)を合わせ、こう呼ばれる。おいしいと思えば、食材を買って家庭でも作れるとあって人気だ。

米国発祥、スーパーの隣で食事

 スーパーの成城石井トリエ京王調布店(東京)に併設されたグローサラントには、昼時になると主婦やスーツ姿の会社員らが次々と来店する。メニューは黒毛和牛のステーキやパスタ、カレー、ハンバーガーなど。食材の9割はスーパーで売られているものを使い、メニューは旬に合わせ、定期的に変わる。

 スーパーと仕入れを共通化し、スーパーの総菜作りの担当者がグローサラントの調理の一部を行うなどしてコストを抑えているため、他の飲食店で食べるより、料金は低め。エビ10匹とムール貝がのったカレーは990円(税別)だ。

 スーパーで食材を買って自宅でも作れるよう、レシピを書いたチラシも置かれている。よく利用するという60代後半の男性は「有料の試食のような感覚で使っている」と話す。

成城石井は2017年から、ルクア大阪にも

 成城石井は昨年9月、同店で初めてグローサラントを導入。同社コーポレートコミュニケーション室長の五十嵐隆さんは「グローサラントで味わってもらうことで、スーパーで扱う食材の良さを知って購入してもらいたい」と話す。実際、ハンバーガーのパンはスーパーでヒット商品となっている。他店でのグローサラントの導入も検討している。

 JR大阪駅ビルの商業施設「ルクア大阪」(大阪市北区)では今月1日、グローサラントと、イートインコーナーが融合した「ルクアフードホール」がオープンした。

購入した野菜や肉は、バーベキューコーナーで調理できる。イートインコーナーで総菜などを楽しむ人も多い(大阪市北区のルクア大阪で)

 約2800平方メートルのフロアに、肉や魚、野菜といった生鮮食品、オードブルや空揚げなどの総菜、ワインや生ハム、ケーキなど様々な売り場が並ぶ。

 精肉売り場にはバーベキューコーナーがあり、肉はもちろん、魚の切り身やカット野菜、デザートなどを買い集めて、自分好みの「コース料理」を作れる点が好評だ。

 フロア中央には約100席のイートインコーナーもあり、客は各売り場で購入した総菜や飲み物を楽しめる。オープン後の売り上げは、予想より10%以上多いという。家族連れや学生、会社員など客層は幅広いが、担当者は「年配の男性客が多く、けん引役になっている」と話す。

コンビニのイートインに対抗

 単身世帯が増える中、家事の手間を省いて調理済みの総菜などを買って食べる「中食」の需要増に対応しようと、スーパーはこれまでイートインスペースの設置に力を入れてきた。ただ、コンビニにもイートインが設置され、客を奪われる形になったことから、差別化を図ろうと、グローサラントを取り入れるスーパーもある。

 イオンは、「イオンスタイルumie」(神戸市)や「イオンスタイル新浦安MONA」(千葉県)で導入。イオンスタイルumieのグローサラントでは、ステーキやパスタ、海鮮丼、サラダなどを食べられる。同社の担当者は「できたての食事を食べられるサービスを今後も強化してほしいという利用者からの声が増えている」と話す。4月下旬には、広島市内の店舗にもオープンした。

 フードコンサルタントの池田恵里さんは「高齢者の一人暮らしも多くなる。調理するのが面倒になったり、外で食べた方が経済的だったりするため、身近なスーパーにグローサラントが増えれば、こうした高齢者の生活を支えることにもつながる」としている。