読売新聞夕刊でこの春、ひとりを考えるページ「シングルスタイル」が始まりました。ひとりで暮らす人を念頭に置いた企画ですが、インタビューで登場してもらったライターの朝井麻由美さん(32)は、行動様式としての「ぼっち」を追究する人。ひとりバーベキューやひとりスイカ割りなど、ちょっとシュールな「ぼっち活動」で朝井さんが見いだした視点がスゴイ。ひとりってそういうことなのか、と思わず納得する、朝井さんの言葉を紹介します。(読売新聞編集委員・森川暁子)
小さな競争から解放される「ぼっち」の効用
中学、高校ぐらいのとき、集団行動が苦手でした。修学旅行が班行動だったり、授業の発表がグループワークだったり、何らかの形でひとかたまりで動くっていうことを強いられる環境に疑問を持ちながらも、反発する勇気もなくて息苦しいなっていう感じでした。

知り合いの編集者さんから声がかかって、「ソロ活の達人に聞く!」っていうサイトでぼっち活動的コラムを書くようになってから、自分自身についても掘り下げて考えました。
発見はいろいろありました。「ひとり梨狩り」では、人のペースを気にしたり、取った梨を比べたりという小さな競争から解放された。そういうことから自由になるために自分はひとりでいたいんだと気付きました。
ボウリングに行くとよくガーターを出すんですけど、「ひとりボウリング」では3連続ストライクを初めて決めました。ひとりで行動するのは、そのこととかその場所にすごく集中することなんだなと発見しました。
「ひとりには、スキルが必要」
「ひとりバーベキュー」では、どうしても自分で火をおこすことができず、迷った末に別のグループの人の助けを借りました。人といると自分が持っていないスキルを借りることができるけれど、ひとりでやるにはそれ相応のスキルとかが必要なんだと身に染みました。
「ひとり人力車」は、恥ずかしいんじゃないかと思いながら乗ったのに、だれもこっちを見ていなかった。ひとりでどこかに行くことが恥ずかしいのって、ほとんど、自分の中での問題なんじゃないかと思いました。
反響をくれた人はさまざまです。教室になじむのが難しい高校生ぐらいの方とか、結婚をしなければならないという風潮に疲れたアラフォーぐらいの人、結婚しているけどひとりの時間が欲しいという人もけっこういました。

ライフスタイルに対して、もっと自由な雰囲気になればいいなと思います。みんなが「ぼっち」になればいいとは思っていなくて、集団でいる楽しさがあることはわかっている。でも、うまくいかない思いをしている人はいっぱいいて、そういう人が生きやすくなればいいのにとは思います。
「幸せは、自分にしか決められない」
結局、自分はこの生き方でいいっていうふうに、自分自身で認めるしかないんじゃないかと思います。
「ひとりクリスマス」のときにも書いたんですけど、ひとりでクリスマスを過ごすのがさみしいと感じるのは期待をするからです。クリスマス商戦のために家族でフライドチキンを食べるCMとかが流れ、そういうものが刷り込まれ、無意識のうちに期待してしまう。でも、自分が幸せかどうかは自分しか決められなくて、幸せの尺度を外に求めると不幸になるだけだと思いました。
★読売新聞夕刊(毎月第1、3、5土曜日)で、独身・ひとり暮らしのページ「シングルスタイル」を特集しています。